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Quantum 第二部

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「こら、それぐらいにしてやれ」

 くしゃくしゃと頭を撫でられて気を反らされる。
 まるで子供扱いだとシャカはムッとした表情でサガに顔を向けた。

「―――偶々通り掛かり、興味が沸いたから覗いた。そうしたらそこに今朝方、可愛がった連中が数名いた、というだけだ」

 ふいっと再びシャカが顔を訓練生たちに向ける。にやりと不敵な笑みを浮かべて見せればひぃっと小さな悲鳴が上がった。

「今朝方?ああ、なるほど。あの子らは訓練生だな……朝練に顔を出したのか、おまえが。それで私が起きた時にベッドにいなかったのだな」

 蒼褪める訓練生を睨み付けるように不遜な笑みを浮かべていたシャカに告げられたのは呆れつつ、どこか不満そうなサガの台詞。

「なっ!?」

 何気なくとんでもないことをさらりと云われ、思わず訓練生に向けていた視線をサガに向ける。勢い余ってずり落ち掛けるという失態を仕出かし、恥ずかしいことにサガに受け止められるというダブルパンチだ。

「どうした?大丈夫か」

 グッとサガは顔を近づける。近いっ!そしてサガの爽やかすぎる笑顔が怖い。

「だ、だ、だ、大丈夫だ!じゅ、授業??を……つ、続けたまえ、遠慮なく!」
「―――大丈夫とは云い難そうだが、まぁいい……そこにいなさい、シャカ」
「うっ」

 スッと身体から離れたサガに若干の警戒心を残し、窓枠から離れ早々に退散しようとしたが、すかさずサガに釘を刺される。そわそわと落ち着かないシャカを他所にサガは再び黒板前まで戻り、続きを再開すると、ざわついていた教室内も再びサガの声が響き渡った。
 
 ――― 一緒に十二宮へ戻ろう。

 そうサガに誘われたけれども。
 シャカは今ひとりだ。





 授業?を終えたサガは教えた内容をそこの職員に伝える必要があるらしく、それが終わったら十二宮へ戻ろうと微笑みながらサガは言ってくれた。だから、シャカも最初は中庭にある木を背もたれにして待っていたのだが。
 ぼんやりと待ち続け、ようやくサガの姿が学び舎から出てきた時だった。あっという間に子供たちにサガは囲まれた。そしてそんな子供たちに押されながら、一人の大人がサガの横に並んだ。

 緩やかに波を描く胡桃色の髪をした素朴な雰囲気の妙齢の女性。

 子供たちが何か囃し立てているのか、怒ったような、困ったような、それでいて照れているような表情で時折サガと視線を交わしている。サガも似たような反応でなんとも和やかな雰囲気を醸し出している。

学び舎とサガと女性に子供たち。
なんの違和感もない。
それどころか、とても似合っていて。

 サガは教皇などよりも子供たちを教え導く教師のほうがよっぽど合っている、と思うと同時にとても不快な気持ちになった。サガのそばにあるべきはおまえたちではないのだ、と。
 そんな風に思った自分自身がとても醜く思えて、シャカは逃げるように立ち去った。一刻も早く、その場から姿を消したかったら、瞬間移動の力を使ってインドまで一跳びした。
 そして、また場所を移動する。本来サガと会うはずだった場所に。
 カツン、とシオン教皇作の棍棒を地に突き刺し、「試しの者」の衣装を身に纏ったシャカは呪具によって歪む小宇宙を解き放った。

「さて。これに応えるはアイオロスかアイオリアか、それともサガか―――」

 誰でもいいから、今のとても惨めで鬱屈した気を晴らして欲しい……とシャカは苦しげに顔を歪めた。



作品名:Quantum 第二部 作家名:千珠