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ボクのポケットにあるから。

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「みなみちゃーん」磯野は悔しそうに苦笑する。「違うでしょー、そこはー」
「いや、俺達ファン同盟五人を引き合わせたのは夕だ」稲見は皆を一人一人一瞥しながら言った。「そういった意味では、ボスなのかもしれない」
「へー」
「彼が現れるまでは、私は一個人としての乃木坂のファンとして、主にSNSで乃木坂の情報や呟きなんかを取り扱っていましたね」駅前は澄ました表情で言った。「私に語り掛けてきた夕君は、高校生でした。それでも、その時にはもうあの大きな器の魅力に溢れた人でしたよ」
「へー」また一実は声を出して納得した。
「俺なんて生まれた時から夕と一緒だぜ?」磯野はつまらなそうに吐いて捨てる。「ケンカ仲間、つうの?」
「幼馴染(おさななじみ)、じゃない?」みなみは天使の様な微笑みで言った。
「俺は高校の時に、やっぱりSNSで知り合った。高校一年生の時だね」稲見は懐かしそうに微笑んで言う。「その時は、まさか、うちの父さんと会社を共同経営してる人物の息子だなんて、知りもしないからね。本当に夕には運命を感じてる」
「私も、夕君は不思議な人だと思います」駅前は凛々しく微笑んで言った。「知っていますか? 彼は高校生の時に、すでに一人で起業しているんです。それも年収何千万の会社をです。彼は、その収入の全てを、夢の為に使うと語っていました。たぶん、今のこの現在が、そうなんだと思います」
「まあ、まあまあだな」磯野は深く、頷いた。「その会社に俺を誘わねえのが、まずちっちぇえ」
「俺はその企業にすぐに誘われた」稲見は皆に言う。「答えはイエス。二人で更に会社を大きくして、今はファースト・コンタクトに技術を提供して、会社をしめたけどね」
「何の会社?」七瀬は顔を素の美しいものにして稲見にきいた。
「空間デザイン」稲見は七瀬に答える。それから皆の顔を見回しながら言う。「空間を切り取って、デザインするんだ。その案を売る仕事、かな。簡単に言えば」
「ファースト・コンタクトは何の会社なの?」一実は眉間(みけん)を顰(ひそ)めて稲見に言った。
「ファーコンは、標準化を成した大企業だよ」稲見は説明する。「イーサン、コーラを一つお願いします。みんな、何かおかわりを」
 一時、皆が各々のドリンクを電脳執事に注文した。
「標準化とはね、つまり、その製品を、世界中の人達が同じく使う、という事だね。つまり、買う、という意味だ」稲見は説明を再開させる。「九十%以上のシェアが確立すると、標準化になる。最も、もっと低いパーセンテージでも成り立つだろうけどね。ファーコンはそれをやってのけた企業なんだ」
「つまり、何屋さん、なの?」一実は険しい顔で稲見にきいた。
「簡単なものから、高度なものまで、コンピューターやその基盤となる心臓やなんか、なんだろう。例えば、冷蔵庫を組み立てるのに必要な心臓は、コンプレッサーだ。そのコンプレッサーの電子的な部分と、材料まで、全てファーコンが生産してる。企業がより良い製品に辿り着く為に、ファーコンのそういったものを買い付けるんだ。携帯電話もパソコンも、テレビも、電化製品全般。例えばね、部品一つとっても、ファーコンの製品は頑丈で、精密で、最小化されてるんだ」
「世界中の企業がファーコンの技術力を評価して買い付けます」駅前が説明を継いだ。「企業競争が起こっているんです。この標準化はあと百年は続くだろうと専門家たちが評価してくれていますね。あの、私もそのファーコンの正社員です」
「えっ!」一実はその顔を驚かせて駅前を見つめる。「木葉ちゃん、凄いじゃん凄い人じゃーん……」
「夕のお父さんのウパ氏はね、会社がまだ未熟だった頃に、NASAの研究者落ちした人材を集めて、会社の開発部を強化したんだそうだよ」稲見はそう言った後で、コーラを飲んだ。「今ではファースト・コンタクトの開発部は、実力者揃いの研究者たちで溢れてる。駅前さんもその一人なんだよ」
 関心の声が上がると、駅前木葉の顎がしゃくれた。
「けっ」磯野はしかめっ面で言う。「すげえなぁ親父達だろ、べっつにあいつがすげえわけではねえし」
「夕はそのお父さんにビジネスのセンスを見込まれた、立派な人材だよ」稲見は無表情で磯野に言った。「例えば、夕が入社してから、会社にはユビキタスコンピューティングという概念が生まれた。これはどこにでもコンピューターが存在して、いつ、どこでも、コンピューターを使えるという発想なんだけど、例えばね、例えばー……」
「例えば」駅前が説明を続ける。「エレベーターに乗っている障がい者が、停止したエレベーター内で発作を起こした時なんかに、その胸に在るバッジがユビキタスコンピューターだとして、緊急で救急車を呼ぶ事が可能になります」
「そういった概念を会社に植え付けたのが、夕だよ」稲見はうん、と頷いた。
「なんか、夕君やるね」一実は感心しながら、ドリンクを一口飲んだ。
「波平君は、何の仕事してるの?」七瀬は無垢な表情で磯野にきいた。
「俺?」磯野は片方の眉(まゆ)を上げて答える。「貿易(ぼうえき)関係の仕事。親父が社長なんだ、俺が次の社長だな、だから」
「波平っちもそんな仕事してんだ」飛鳥は珍しいものを見た様な顔で磯野を見つめた。「見えない……」
「うん、そう見えない」七瀬は呟いた。
「どう見えんだよ……」磯野は不安そうな表情で飛鳥と七瀬に言った。「俺が大学生に見えっかあ?」
「ううん」飛鳥は短く首を振った。苦笑する。「見えない」
「営業とか、やってそう」七瀬は真っ直ぐに磯野を見つめて言った。
「ぐふっ」磯野は七瀬に見つめられて一瞬ひるんだが、また持ち直して言う。「営業かあ。俺あんま口上手くねえからなあ。態度も良くねえらしいし」
「自分でわかってるの?」みなみはくすっと込み上げてきた笑いにのる。「そういうの、えわかってて、やってるの?」
「何がよ、みなみちゃん……」磯野は不安そうにみなみを見つめる。「なんか、悪口っぽい空気がしたんだけどよ、どういう意味よ、みなみちゃん。抱きしめちゃうぞ!」
「やだー」みなみは子供のようにころころと笑う。
「セクハラはやめようよ」一実は満面の笑みで言った。
「かずみん?」磯野は顔を不安そうにしかめて一実を見る。「セクハラって何よ? 俺がぁ?」
 稲見瓶が最初に高山一実の発言に拍手し、続いて駅前木葉も、高山一実の発言に拍手をした。
「なに拍手してんだやめろ!」
「さっきから思ってたんですけど、本当に皆さんって、いい香りがするんですね」駅前は深呼吸した。「は~……。素敵な香りがいっぱいです」
「私ね、今日はね、昔つけてたやつ、つけてきた。香水」一実はにこやかに駅前に言った。「あの、設楽さんとお揃いのやつなんだけど。もう販売してないの」
「飛鳥、凄いいい匂い」みなみは眼を見開いて飛鳥に言った。「なんの香水? シャンプー?」
「何だろ……でも」飛鳥は手首の辺りを香ってみる。「香水、かなあ……」
「何つけてんだ?」磯野は興味津々で皆に言った。「なぁちゃんの香り、がんっがんにいい匂いすんなー、くるぜここまで。何使ってんだよ。いいだろ、世間に発表するわけでもねえしよ」