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ポケットの中の夏。

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「未成年に酒呑ますんじゃないぞ」夕は半分だけ真剣に波平に言った。
「うっさいわいボケ」磯野はそっぽを向く。
「こんばんば、あ、あめでとうございます!」
「おめでとうございます」
「おめでとうございます~」
「あは、ありがとう~。おめでとう~」麻衣は笑顔で返した。「新しい乃木坂、わっかんない」
「この子が、掛橋沙耶香ちゃん。こっちが、佐藤璃果ちゃん」真夏が片手でメンバーを紹介していく。「でこっちが、林瑠奈ちゃん」
「こんばんは~」
 また恐縮した馬鹿丁寧な挨拶が飛び交った。
「波平っち、シャンパンで美味しいのある?」飛鳥は波平に言った。
「まいったな、あるんだよそれが」磯野は顔をしかめて笑った。「グー・ド・ディアモン。テイスト・オブ・ダイアモンズ、つってな。ちょっと手に入りにくいシャンパンがちょうどあんだよ」
「それ、ちょうだい」飛鳥はきょとん、とした顔でシャンパン・グラスを磯野に差し出して言った。「聞いた事ないけどね」
「ドンペリの、レゼルヴ・ドゥ・ラベイもあるぜ?」磯野はにやけながら飛鳥に言う。「価格にすっと、ドンペリホワイトの約五倍」
「どっちがおススメなの?」飛鳥は少しだけ困った顔で言った。
「グー・ド・ディアモンにしなよ」夕は飛鳥に微笑んで言った。「飛鳥ちゃんに相応しいシャンパンだと思うよ。一本しかないから、吞んじゃお」
「私もシャンパンにしようっかなー」麻衣はんー、と迷い悩む。
「私も最初はシャンパンにしよう」真夏は笑顔で言った。
「波平、テイスト・オブ・ダイアモンズ、開けてさしあげて」夕は上品に波平に言った。
「おおよ」
磯野波平は、それを豪快に、しかし丁寧に素早く開封し、齋藤飛鳥のシャンパン・グラスに注いだ。続けて、白石麻衣用の新しいシャンパン・グラスにも注ぎ、秋元真夏の新しいシャンパン・グラスにもその液体を注いだ。
「俺達はドンペリで乾杯しよう」夕は波平に言った。
「だな」波平は新しいシャンパンを棚から用意する。「グー・ド・ディアモン以外は何本でもあっからなー。おかわり自由だぜ? グー・ド・ディアモンだけは一本だけなー。呑めんなー乃木坂だけだからよ」
「そういう事……」夕は飛鳥のシャンパン・グラスに自分のシャンパン・グラスを優しく当てた。「乾杯」
 その場に乾杯の声が響いた。
「桃ちゃんもグー・ド・ディアモンにしない?」夕は優しく桃子に言った。
「うん、じゃあそれ貰う」桃子はテーブルの新しいシャンパン・グラスを手に取った。「波平君、ちょうだい。へへ」
「桃ちゃんにも相応しいシャンパンだぜえ……」
 磯野波平はゆっくりと桃子の持つシャンパン・グラスに液体を注いだ。
「はあ!」
 その時叫んだのは、携帯電話を弄(いじ)っていた秋元真夏であった。
「ちょっとこのシャンパン!」真夏は慌てて言う。「ちょっとお!」
「なにい?」麻衣は携帯画面を覗き込んだ。「……え」
「どしたの?」飛鳥も、真夏の持つ携帯画面を覗き込んだ。「……は?」
 三人はほぼ同時に、風秋夕の方を振り返っていた。
 風秋夕は微笑んで言う。
「そのぐらいだよ、乃木坂の呑むシャンパンって」

       8

「私、顔赤くない?」一実は七瀬に微笑んで言った。「ワイン強めの吞んじゃった」
「顔は赤くないけど、ワインは、うん。強め」七瀬は視線を俯け、ワイン・グラスを見つめて頷いた。「私のも強い……。ビールからいけばよかった」
 高山一実は、水色主体でピンクの帯リボンの特徴的なドレスを着ている。西野七瀬は緑色主体の、白の帯リボンが特徴的なドレスを着ていた。どちらもが、ティアラはしていなかった。
 地下巨大建造物〈リリィ・アース〉地下六階の〈無人レストラン〉二号店の神々しく美しい電飾の装飾の並ぶランプの下に、高山一実と西野七瀬はいた。
「写真撮ろうよ」一実はほろ酔いの様子で七瀬に微笑んだ。「最近一緒に撮ってないよね」
「ここって、写真撮っていいん?」七瀬は辺りを見回す。「あー、撮ってる子いるねえ……」
「撮りまくりだよみんな」一実は携帯電話を用意する。「はいなぁーちゃん笑ってー」
「ブイ! でござる」
「おお……」七瀬は一歩後退して、あたるの登場に驚いた。「ダーリン」
「ささ、なぁちゃん、撮るでござるよ」あたるは満面の笑みで言った。
「じゃあ撮るよう?」一実は高めのアングルに構える。「行くよ~!」
「待って~」
「ちょっと待ったー」
 そう言って写真のアングルに写り込んできたのは、若月佑美と桜井玲香であった。
「待って待ってー!」
 高山一実が携帯電話のカメラを構える中、更に和田まあやと松村沙友理が乱入してきた。
「はーいチーズ!」
 カシャ――。携帯電話のカメラは立て続けに二、三度シャッターを切った。
「間に合わなかったか」
そう言ったのは伊藤かりんであった。
「かりんちゃーん」一実は嬉しそうに言った。「ライブ以来だよねー」
「まちゅのね」かりんは微笑み返した。「おす、軍団長」
「おす!」沙友理はそう言ってから、可愛らしく笑う。「えへへへへ。えー若も玲香も、あれじゃない? 去年以来じゃない?」
「去年、いつだっけ?」佑美は考える。「え? あれ」
「クリスマスじゃない?」一実がにこやかに言った。
「そーだクリスマスだー」玲香は飛び跳ねて喜んだ。「もう半年経っちゃってるのって、怖くない? ある意味」
「まあやクリスマス呼ばれてないんだけどー」まあやは特徴的な視線で皆に訴える。
「まあやは寝てたんだよ、確か」一実は説明する。「もう開始したのが晩かったから、確かあれ、寝てた、んじゃなかったかなー確か……あれ」
「私も呼ばれてないけどね」かりんは笑いながら言った。
「あーそうだねー」一実は笑う。
「寝てたんだよー、とか言ってよちゃんとー」かりんはふざけて一実を叱った。
「小生はここに残ってたゆえ、なぜか参加しているでござるな……申し訳ない」
「みんな何呑んでるの?」まあやが言った。
「ワイン」七瀬が答える。「てきとーに、あっちにあったやつ」
「同じく」一実はにこやかに言った。
「カクテル。名前忘れちゃった」沙友理は微笑んだ。
「キール」佑美が言った。「ワインと、何かの割もの」
「カクテルカクテル」玲香は説明しようとする。「何かのカクテル。てきとーにメニューから選んで、〈レストラン・エレベーター〉で受け取ったよ」
「ビール」かりんはジョッキを持ち上げて言った。「今日は、何となく、ビールだったね」
「まあやも何かのカクテル」まあやはコリンズ・グラスを見つめながら言う。「何だっけな、ラム、ラムー……何たらとか」
「小生もワインでござる」あたるは薄いゴールドの液体を一瞥して言った。「魚料理を食べていたので、白でござる」
「玲香あれでしょ? 今、『逃げるは恥だが役に立つ』でしょう?」一実は顔を柔らかな真剣なものにして玲香に言った。「朗読劇だよねえ?」
「そうなのー」玲香は頷いた。「九月からはまた別の舞台があるの」
「おー忙しいー」佑美は茶化した。
「若月だってあれじゃん、『焼肉きんぐ』のCMじゃん。もう少しで放送でしょう?」玲香が佑美に言った。
作品名:ポケットの中の夏。 作家名:タンポポ