二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ポケットの中の夏。

INDEX|15ページ/22ページ|

次のページ前のページ
 

「じゃあ、最初の企画に行きたいと、思います。題して、伊藤純奈&渡辺みり愛卒業スペシャル、特別企画、乃木坂46での八年を、振り返ろ~! だってさ~」

「へ~、あごめん。ちょっとうるさかったね」

「あーそテーマでやるんだね。えーさそんな、すぐいっていいのう?」

「いーよ。いくんだよどんどん」

「だってさー、いっぱいあるよ、今日」

「ううんだってえ、その後のーやつもー、別にー、いっぱいできるもん。私達なら大丈夫じゃん! 何で今日こんなに不安になってるの猫舌ショー・ルームだよ! 私達何回出てると思ってんの!」

「へっはっはっはっは、うるせーなー……」

 実に明るい雰囲気で、猫舌ショー・ルームは開始されていった。
「イナッチ、これっていつも通り、ていうんじゃないか?」夕は苦笑して稲見を一瞥した。
「そうだね」稲見は微笑む。「ラストまでこうかな……」
「楽しいのがいいじゃねえか」磯野は誰にでもなく言った。
「この二人には、大いに笑顔を貰ってきたでござる」あたるは涙ぐむ。
「ダーリン、フライングですよ。じっくり。じっくり行きましょう」駅前は巨大スクリーンに微笑んだ。
「みり愛ちゃん、甘いもの、苦手なんだね」稲見は感心する。「甘いものを食べる時は、いつもアイスコーヒーか……。アイスココアを出しちゃったな、あの時……」
「純奈ちゃんについて歩くみり愛ちゃんが、その二人がやけに可愛かった時期ってあったよな」夕は思い出しながら言った。
「今もじゃんよ」磯野はがさつに笑った。
「ミニコントですよね、この二人のトークは」駅前は微笑む。
「純奈殿がどんくさいの、ちょっとわかるでござるな」あたるははにかんだ。
「錆びたコンパスがバックサウンドでかかってるけどさ、二期生って本当に錆びたコンパスの歌詞に合うよな」夕は真剣な眼差しで画面を見つめながら言った。
「縁(えん)の下の力持ち、だね。二期生は」稲見は眼鏡の位置を修正しながら言った。
「乃木坂の古参(こさん)ってよぉ、一期生、一期生、て言ってるイメージが強いらしいけど、古参はぜってえ二期の苦難の道のりと、輝くステージを知ってるよな!」磯野は大きく微笑みながら言った。
「知ってるさ」夕は頷く。
「知らない奴は、古参じゃない気がするくらいに、みんな知ってる」稲見は言った。
「古参が偉いわけじゃあないでござるが、二期のそんな八年間を知らないのは、絶対に損をしてるでござる」あたるは微笑んで言った。
「アンダー、という曲がありますよね。その曲を知ると同時に、二期の不遇と言われた歴史も知れると思います。華やかな輝きも同時に知れるでしょう」駅前は、少しだけ、涙をためていた。
「そうだよな。二人とも中学生だったんだよな」夕は誰にでもなく囁いた。
「俺も中坊だったぜ」磯野は笑った。
「八年は、小学校生活が終わるぐらいの年数だからね」稲見は改めて、言葉を繋いだ。
「小生は十八、十九ぐらいでござったな……」あたるは儚げにそう呟いた。

 巨大スクリーンの向こう側で、伊藤純奈と渡辺みり愛は乃木坂46の『アウト・オブ・ザ・ブルー』を踊っている。二人には笑顔が絶えない。

「乃木坂も、二期にしてみれば、もう後輩だらけか……」夕は呟いた。
「乃木坂も大きくなったんだよね。深い一言だったなぁ、今のは……」稲見はしみじみと言った。
「セーラームーンのミュージカル、確かに二人ともやってんなあ」磯野は懐かしそうに言った。
「舞台行った事ある奴、だれ?」夕は四人を見渡す。
「セラミュは行ってねえな」磯野は痛そうに言った。
「ダメな男だね、俺も行けなかった」稲見も暗く発言した。
「小生もDVDなんでござるよ、セーラームーン」あたるは顔をしかめて言った。
「私もDVDで拝見しました」駅前は申し訳なさそうに言った。
「ファン同盟組んでたよな?」夕は笑って言った。「活動しなきゃな、もっと……」
「三年前でござるから、乃木坂とはまだここで出会えていない頃でござるな」あたるは感慨深く言った。
「三年前か。セーラームーン……」夕は懐かしむように、微笑んだ。
「純奈ちゃんとみり愛ちゃんの好きなとこ、かあ……」磯野は言う。「顔、かなあ」
「お前は可愛けりゃ誰でもいいんだろ」夕は笑った。
「お馬鹿さん!」磯野は憤怒する。
「ごめん、聞こえないから、やめてくれ」稲見は無表情で淡々と言った。
「二人は、笑い声と、笑顔が好きです」駅前は微笑んで言った。
「面白いところ、でござるかな。厳選して言えば」あたるもにこやかに言った。
「後輩に、緊張するんだね」稲見は誰にでもなく呟いた。
「あ! この前よお、〈ブリーフィング・ルーム〉でライブで聴きたい曲、つってお題でやったろ? あれな、俺十三日の金曜日もな!」磯野は大声で言った。
 巨大スクリーンの向こう側から、バックサウンドで乃木坂46の『十三日の金曜日』が流れていた。
「後輩に敬語使うんだな、みり愛ちゃん」磯野は不思議そうに言った。
「伊藤衆人監督の話出たじゃんか?」磯野は皆に言う。「乃木坂からしゅうと、って呼び捨てされてんじゃん? これって相当仲良くねえと出来ない事だよなあ?」
「だって衆人監督のMV数えてみ、名作ばっかだぞ」夕は言った。「えっとぉ……アナスターシャだろぉ、のような存在、さ~ゆ~レディ? 図書室の君へ、空扉ぁ……」
稲見瓶が続ける。「ライブ神、トキトキメキメキ、意外ブレーク、白米様、ブランコ、失恋お掃除人。だね。本当に神作ばかりだ」

「そうこれ、意外とかっこいんだよね。意外とかっこいんだよ」

「さすが衆人~て。どこに売ってるのかなーって。どこに売ってるんだるね」

「どこに売ってるんだろうね?」

 巨大スクリーンには、伊藤衆人監督の手の平の上に載る、ドラゴンが剣に巻き付いたオブジェが映し出されている。

「懐かしいね……。なんか、あれ衆人の手だよね。衆人の手ちょっと、赤くて、なんか、赤い」

「いいだろ」

「血流がたまってる。気になる」

「いいじゃないの……」

「ずっとこのコンビでいてもらいたいな」夕は笑いながら言った。
「純奈ちゃんの突っ込み、好きなんだよ」磯野も笑いながら言った。
「みり愛ちゃんのボケも、秀逸だ」稲見は微笑んで言った。

「もはや娘なんだろーなーって、ほんとそうだね」

「なんか誰かが一番てさ、優先順位とかって生まれるけど、あそこまで平等に、メンバーを愛してくれる人はいないよねなかなか……。え何でこんなに誉めてんの私達……。やめよ? もう、この話。絶対やめよ? もうやめよ? 私達の猫舌だもん。だって、卒業企画だから。何で衆人の話になってんの。やめよ?」

「があ~っはっはっは!」磯野は豪快に笑った。
 四人も渡辺みりあ愛の発言に笑っている。
「純奈ちゃんがのんびりしてて、みり愛ちゃんがちょこちょこボケてて、純奈ちゃんが笑う、みたいな普段通りの流れ。これってファンのみんな知ってんのかな?」夕は疑問形で言った。
「コアなファンはいるもんだよ」稲見は渋く呟いた。
「推しの個性ぐらい知ってて当たり前だろう?」磯野は鼻を鳴らして言った。
「それが好きだというファンも多いのでは?」あたるが言った。
作品名:ポケットの中の夏。 作家名:タンポポ