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ポケットの中の夏。

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 プールの中にいる乃木坂46達は大パニックである。今は皆、覗いても見えない暗い水の中にサメや化け物の姿を想像していた。
「いやああ!」
「怖い怖い!」
「何て事言いやがるんだてめえはっ! 波平!」夕は大慌てで皆に言う。「落ち着いて皆、さっきまでとおんなじ普通のプールだから! サメなんかいないから!」
「サメええ~!」
「電気つけてイーサン!」
 ふわり――と、照明がついた。プールは波立っている。
 半数のメンバーが既にプールから上がっていた。
「波平君、最っ低」史緒里はそう言った後で、苦笑した。「んもう……、想像しちゃったよ、でえっかい、サメを」
「暗闇で泳ぐサメをね」美波は薄目で磯野を睨んだ。「いい性格してるよ」
「あいや、俺はただ、こえーのをそのまんま言っただけで……」
「なんっで、今言うかなあ!」楓は珍しく声を荒げた。「怖かったよ」
「蓮加、逃げ遅れた……」蓮加は泣いている。「食べられた蓮加……」
「波平君!」葉月は磯野を睨む。「あーのシチュエーションで、サぁメはないでしょー」
「珠美も、食べられた……」珠美も泣いていた。
「あっはっはっはっは」
 笑い声を上げたのは、齋藤飛鳥であった。続いて、大園桃子も笑う。
 風秋夕は、二人の乗るゴムボートを押さえたままだった。
「暗闇で、ねえ? そういう事言っちゃダメだよう」日奈はプールサイドに上がりながら磯野に言った。「怖いでしょう?」
「わりい」磯野は土下座する。「そんなつもりじゃなかったんだ、ごめんな、皆……」
「最高だったのが、一瞬で悪夢に変わったね」飛鳥は可笑しそうに言う。「逃げ場ないし」
「そう、下にサメがいるから、逃げらんなくって」桃子は笑いながら、少しだけ真剣に言った。「もう、……パニック」
「お二人とも、無事ですか?」夕は溜息をついてから、笑顔で二人に言う。「放しませんでしたよ、最後まで」
「あー、放さなかったねえ」飛鳥は納得しながら言った。「凄いじゃん」
「放さないよ、ずっとね」夕は微笑む。
「ああー!」
 大園桃子が悲鳴に近い大声を上げた。
「どした桃ちゃん!」磯野は桃子に叫んだ。「どっか食われてたか!」
「イナッチがいない!」桃子はうろたえながら、キョロキョロとする。「イナッチ食べられちゃった!」
「イナッチなら」美波は横を見る。
 稲見瓶は、プールサイド・チェアで深い睡眠をとっていた。
「この騒動で、ぴくりともしないとは……」夕は口元を引き上げて、溜息をつく。「大物だな」
「映画とかだと、使えない奴なんじゃない?」飛鳥は苦笑して言った。
「しばらく、ここでのプラネタリウムは禁止だな」
風秋夕はそう言うと、プールサイドへと移動し、ゴムボートから齋藤飛鳥をプールサイドへと降ろした。
「蓮加、だいじょぶ?」美波は蓮加を心配する。「珠美も、大丈夫?」
「サメいないから」楓は笑顔で言った。
 風秋夕は、ゴムボートから大園桃子をプールサイドに降ろした。
「ありがと」桃子は夕に微笑んだ。
「さ、皆。今日は解散して、ゆっくり寝よう」
 そう言って、風秋夕もプールサイドに上がった。手で無造作に髪をかき上げて、テーブルにあった稲見瓶のタオルで髪を拭いた。
 ざわざわと会話しながら、タオルに包まれた乃木坂46のメンバー達が〈プール〉を後にしていく。
「あれ、イナッチは?」飛鳥は夕に言う。「起こさなくていいの?」
「乃木坂のピンチの時に起きない奴は、そのまま放っておくの刑だ」
「風邪ひいちゃわない?」桃子は稲見の方を一瞥して言った。「せめて、タオルかけてあげるとか……」
「タオルの代わりに、星空をプレゼントしてやろう」夕はにやけて、天井を見上げる。「イナッチ以外の俺達が全員〈プール〉から出たら、プラネタリウム、再開だ、イーサン」
 電脳執事のイーサンが応答した。
「かわいそうじゃない?」飛鳥は振り返って言った。
「姫のピンチを助けられる、王子様になれるまで」夕は微笑んだ。「ロマンティックな星空で修行だ」




         3

 地下巨大建造物〈リリィ・アース〉の地下二階エントランスのメインフロア、その東側のラウンジにて、乃木坂46三期制の大園桃子と与田祐希と山下美月と吉田綾乃クリスティーと中村麗乃と伊藤理々杏の六名が集まっていた。乃木坂46ファン同盟からは姫野あたると駅前木葉の二人が加わっている。
 話題にあがっていたのは、VRゴーグルであった。
「これつけてみん」綾乃は面白がって桃子に言った。「全部、薄暗ぁく見えるの、景色が」
「いーやーです」桃子は拒否する。
「つけてみよっかなー」理々杏が言った。「他に変化はないの?」
「一人でつけたから、他に人が見えるのか、とかは知らない」綾乃は答えた。
「私もつけてみよ」美月は笑窪を作って笑った。「どうするの、かぶればいいの?」
「そうでござる」あたるが説明する。「まず、これは仮想現実を楽しむ為のゴーグルで、かぶると、景色はおんなじなんでござるが、薄暗く、見えずらく、不気味に見えるでござる。人を見た人には」
「きゃああ!」ゴーグルをかぶった美月が悲鳴を上げた。「麗乃が、なんかゾンビになってる! こわあ!」
「わっ! わっ! こっちも!」ゴーグルをつけた理々杏が叫んだ。「綾ティーがヤマンバに見える~!」
「ヤマンバ?」綾乃は苦笑する。
「ゾンビかよ」麗乃も苦笑した。
「それぞれ、人物は見たものに近いクリーチャーに見えるでござるよ」
「クリーチャーって何?」麗乃はあたるにきいた。
「ああ、クリーチャーとは、怪物の事でござる」あたるは説明する。「この広い〈リリィ・アース〉の中を、このゴーグルをつけて回れば、それはもう大冒険でござる。ゴーグルは全員分あるでござるよ?」
「やってみよう」祐希はゴーグルを装着した。「くらっ、え……見える、これ? 見えてるのきゃあああ! 誰! このナースのお化け!」
「私だよ。ふっ、美月」ゴーグルを装着している美月はにやけた。「与田はなんかキバが凄い動物だから、ふふ。与田あんま怖くないなー」
「やってみるか」麗乃はゴーグルを手に取って、装着してみた。「わくっら! 薄気味悪い、何これー。わあああ看護師のお化け!」
「私だっての」美月は笑った。「ゾンビが怖がるな」
「えー、どんな感じに見えてるんだろう。やろ」綾乃もゴーグルを装着した。「やあああでっかい小動物の化け物!」
「それ祐希だから」ゴーグルをしている祐希はくすくすと笑う。「ヤマンバ、ヤマンバ!」
「理々杏は殺人鬼のお人形だね」ゴーグルを装着している美月は理々杏を一瞥して言った。「あとぉ、ダーリンは狼男だ」
「そうなんでござる、どうしてか狼男なんでござるよ……」
「桃子もやんなよー」ゴーグルをしている美月は桃子に言った。「別にここに座ってやってる分には面白いだけだよ? 全然、怖くないし」
「やだ!」桃子は頑(がん)として譲(ゆず)らない。
「ちょっと、私のお茶どこ?」ゴーグルをしている理々杏が言った。「暗くて見えないんですけど!」
「そうやってうろうろされると気持ち悪い」ゴーグルをしている祐希は引きつった顔で言った。「やあやめて! こっち見ないで!」
「与田~、美味しそうだな~」ゴーグルをした綾乃はふざける。
作品名:ポケットの中の夏。 作家名:タンポポ