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ポケットの中の夏。

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「手に包丁持ってるの、それ本物?」ゴーグルをした祐希は少しだけ怯えた。「本物なわけないよねえ? ちょっとだけ、ぶれてる」
「桃ちゃん!」ゴーグルをつけている麗乃は両腕を不気味に突き出して桃子に言った。「桃ちゃ~ん、一口かじらせて~」
「やめて!」桃子は強く眼を瞑る。
「だから麗乃ちゃん、桃子にはゾンビに見えてないからさあ」ゴーグルをつけた美月は笑った。「馬鹿だなあ。さすが頭NO王」
「もうみんな変な人だよう、ん~や~め~て」桃子は顔を歪めて言った。
「私手に何もってんのこれ?」ゴーグルをつけた理々杏は誰にでもなくきいた。「ハサミ?」
「ハサミだね、りりあんのは」ゴーグルをつけた美月が言った。
「やまは何も持ってないの?」ゴーグルをつけている理々杏は美月を見た。「注射器か!ナースなだけに。与田は?」
「なんか、爪」ゴーグルをつけた祐希は笑った。「爪とキバ? らしい」
「何の動物だろう?」ゴーグルをつけた綾乃は祐希を見て言った。「与田は……リスのお化け? あれ私なんだっけ?」
「ヤマンバ」ゴーグルをつけた美月がにこやかに答えた。
「桃子は何に見えてるの?」桃子は恐る恐る皆にきいた。
「ドラキュラー」
 皆の声が重なって返ってきた。
「あのう、ちなみに私は何に見えているんでしょうか?」存在感を今まで消していた駅前が皆に言った。
 ゴーグルをつけた皆は、怪物の中から、まだ例えてない怪物を探している様子である。
「あっ! 怖っ!」ゴーグルをつけている祐希が思わず口走った。「なんか光ってる」
「あーたぶん、ポルターガイスト系の幽霊だと思いますよ」ゴーグルをつけている美月は笑った。「かなりえぐいですけど、ふふっ」
「やろうよ」ゴーグルをつけている綾乃は桃子を誘う。「ねえ、怖くないってば」
「いーやーだ!」桃子は断固拒否する。
「ヤマンバ、無理にはいいよ」ゴーグルをつけた理々杏が言った。
「あい!」ゴーグルをつけた綾乃が答えた。
「確かに、歩かないと怖くないねー」ゴーグルを外して、美月は笑顔で言った。
 皆もゴーグルを外した。
「そんなもん、よくやるね」桃子は笑顔で皮肉を言った。「何が楽しいの」
「いや、歩かないとダメだな、やっぱ」美月が言った。
「与田ってVRでも小動物なんだね」理々杏は笑いながら言った。
「そっちも人形だったくせに……」祐希は口元を尖らせる。
「桃子って怖がりだよね」美月は微笑んで桃子に言った。
「だって、夜寝れなくなったらどうするの?」桃子は真剣である。
「そんなに怖くないってー」美月は笑う。「笑ってたじゃん、私達」
「ふんっだ」桃子はあっちをむく。
「あー怒っちゃった」美月は微笑んで言った。
 話題は次々にと移り変わり、やがて、東側のラウンジには誰もいなくなった。
 何十分かして、東側のラウンジを通りかかったのは、乃木坂46四期生の遠藤さくらと賀喜遥香、早川聖来、田村真佑、筒井あやめ、清宮レイ、掛橋沙耶香であった。
「ちょっともう下に行くの疲れた~」沙耶香は皆に言う。「ここでいいじゃん。ここにもメニューあるんだから」
「音楽が無いんだよねー」遥香はそう言ってから、思いつく。「あそっか。イーサンにかけてもらえばいいのか。なるほどね」
「じゃあ、ここにしよう」さくらはソファ・スぺースに移動する。
「たこ焼き食~べよっと」聖来はご機嫌の様子でソファへと着席した。「たこ焼き食べる人~?」
「はーい」賀喜遥香は手を上げ、聖来の隣に着席した。
「私も~」真佑も手を上げて、さくらの隣に着席した。「えいっぱい種類あるよね?」
「あんで~」聖来はメニュー表を開く。「どこやったかなぁ……」
「はーいたこ焼き食べる」あやめも手を上げた。空いているソファに腰を下ろす。
「私も~、たこ焼き~」レイはあやめの隣に着席した。
「私も食べよっかな」沙耶香は空いているソファに一人で着席した。
「あったあった!」メニュー表を見ながら聖来が言う。「いっぱいあるー、見て見てー」
「待って、何飲む?」遥香が言った。「先に飲み物じゃない?」
 電脳執事のイーサンへ、それぞれが各々のドリンクを注文し終わった後で、それぞれが各々のたこ焼きを注文した。
 電脳執事のイーサンへ注文した音楽は、乃木坂46『メドレー』であった。
「ダンスレッスン、だんだんきつくなってきたね」沙耶香は笑みを浮かべて言った。
「ついてくのがやっと」さくらは苦笑した。
「さくちゃん、ダンス上手いやんなあ?」遥香が言った。
「上手ーい、上手ー」聖来がそれに続いた。
 遠藤さくらは、眼を細くして口を力ませながら首を横に振っている。
「飛鳥さん凄いよね」遥香は笑顔で言った。「覚えるの早いっていうか、覚えながらのダンスが、もうほぼ完成形なの」
「それ凄いわかるー」沙耶香は微笑んで言った。「表現がこう、美しいよね」
「凄い、大人っぽい」レイははにかんで言う。「大人だけどさ。何て言うの、…セクシー」
「ああ色っぽいよねー」真佑はうんうんと頷いた。
「聖来お腹減った~。何か頼も」聖来はメニュー表を開く。
「あやもた~のもっと」あやめもメニュー表を開いた。
 電脳執事のイーサンが皆のファースト・ドリンクとたこ焼きの到着を知らせると、皆はそれをテーブルへと移して、新たな料理を各々が注文した。
「あねえ、夕君、金髪にしたの知ってる?」真佑は皆を見て言った。
「え知らなーい」聖来は笑った。「え絶対似合う~」
「前髪だけなかわけにしてあって、長くて」真佑は夕の新しい髪型を説明する。「横と後ろは短いの」
「えーいいじゃーん」聖来は微笑んだ。
「イナッチは黒髪のなかわけでしょ? だよねえ?」遥香は確認を取りながら言う。「で波平君は、黒髪の、六四わけの、普通か」
「たこ焼きおいひ~い」沙耶香はたこ焼きを頬張って言った。「あっくい」
「おー!」
 皆がその声に振り返ったその時――、中央に星形に五台並ぶエレベーターの一角から、風秋夕と磯野波平の歩いてくる姿があった。
 二人は噂通りのヘアスタイルであった。変わらぬところで言えば、本日も二人ともがはるやまのスーツを着用しているところであろう。
「おはようございます」聖来は二人に言った。「あ、こんばんはか……」
「それってくせだよね」レイは満面の笑みで言った。
「へっへ、座っちゃおうっかな~?」
「お邪魔しちゃおうかな……いい?」
 確認をし、了承を得ると、磯野波平は掛橋沙耶香の隣に着席し、風秋夕は遠藤さくらの隣へと着席した。
「イメチェン、どう?」夕は笑顔でさくらに言った。
遠藤さくらは慌てて頷く。「はい、カッコイイです」
「その話してたんだよね?」真佑が言った。
「え!」夕は驚愕(きょうがく)する。「俺の話してくれてたの!」
「まあー、イナッチと波平君もね」真佑は付け足した。
「何だ……」夕は肩を落とす。
 話題が尽きない中、皆の注文した料理が電脳執事のイーサンのしゃがれた老人の声のもと〈レストラン・エレベーター〉に届けられた。
 それを率先して風秋夕と磯野波平と田村真佑と賀喜遥香が皆に分配した。
「さくちゃんカレーかあー、美味しいよね」夕はにこり、とさくらに微笑んだ。
「はい」さくらは頬張りながら答える。
作品名:ポケットの中の夏。 作家名:タンポポ