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ポケットの中の夏。

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「行く途中に簡単に説明してたら、もう全部わかったからって言われた」夕は磯野にそう説明してから、紗耶達に言う。「やんちゃん向こうにあるフランクフルト、超ヤバいんだぜ~、食べたほうがいいよ。一口サイズだから」
「えー、食べる」沙耶は笑った。
「弓木ちゃん、浴衣もいいね」夕は奈於に指先でキュンを作った。「美形が浴衣着ると凄いな、迫力がある」
「また~、そんな事言って~」奈於は空中を手で扇(あお)いで言った。おばさん的なあの仕草(しぐさ)である。「口が上手いんだから~」
「ミュウちゃんもくろみんも、さすが!」夕は二人にも指先でキュンを作って言った。「可愛すぎる! 感謝したいぐらい!」
「ありがとうございます」と明香。
「ふふ」と美佑。
「あれ、波平は?」夕は辺りを見渡す。「どこ行きやがったあいつ……」
 磯野波平は満面の笑みで、遠藤さくらを見つめている。一方、遠藤さくらは苦笑を強(し)いられていた。
「大丈夫、さくちゃんは私が守るから」真佑は片手でさくらを守りながら、半分だけ真剣に言った。「波平君、やめて」
「まだ何にもしてねえし」磯野は満面の笑みである。
「さくちゃん狙うのはえぐいっすわ」瑠奈は磯野に言った。
「やめて下さい」沙耶香も半分だけ真剣に、半分はにやけて磯野に言った。
「いやいや、何もしてねえのに」磯野は満面の笑みで言う。「何をやめればいいのよ?」
「その顔、やめて下さい」璃果は思い切って言った。
「顔ときたか!」磯野はまいった顔をする。「じゃあ、ゆんちゃん……」
 柴田柚菜はびくり、とする。
「やめて下さい!」璃果は少しだけ本気で言った。
「璃果ちゃん、強い……、俺に当たりが強い」磯野はくじけそうになる。「何にもしねえよ? ただ見てるだけだぜえ?」
「本っ当に、何もしないで下さい!」美緒は磯野をにこやかに睨みながら言った。「夕君! 夕くーん!」
「わた! わかったから! しっ! し!」磯野は大慌てで、指先を口元に当てて言った。「四期、団結力つえーなぁ……。それが見たかったりして、へっへ」
 稲見瓶は、本日も通常通りにはるやまのスーツであった。無論、他の乃木坂ファン同盟の四人も同じである。今は、二期生の伊藤純奈、渡辺みり愛、新内眞衣、北野日奈子、鈴木絢音、山崎怜奈と共に行動していた。
「あー、フランクフルト、マジ美味しかったなぁ」純奈は出店に眼を奪われながら、誰にでもなく囁いた。「さっきからかき氷が無いんだけど、純奈探してんだけど」
「イナッチ背ぇ伸びました?」みり愛は稲見を見上げながら言った。「また高くなってんだけども」
「いいや、変わってないと思うけどね」稲見はそこで眉を顰める。「いや、確かに測ってないな。二十五までは伸びるというし、飛鳥ちゃんも最近伸びてるらしいから……。今度測ってみよう。みり愛ちゃん、何センチか、賭けますか?」
「いや賭けないよ。でもたぶん伸びてるよ」みり愛はそう言って、出店に視線を移した。
 新内眞衣は食べながら出店を物色している。「あこの、ベビーカステラうまい……。ちょっと食べてみる?」
「ん……んんー!」日奈子は満面の笑みで何度か飛び上がった。「おーいしいー! あそれ日奈子も買うべきだったー!」
「いいよ、あげるよ」眞衣は笑顔で日奈子に言った。「一緒に食べようよ」
「まいちゅん優しい~!」日奈子は眞衣の持つ袋からベビーカステラを一つ取って、口に入れる。「んんー! 甘い!」
「ねえイナッチ」蘭世が言った。
「うん?」稲見は蘭世に振り返る。
「ここのさぁ、地下、二十二階に、〈プール〉あるじゃん?」蘭世は稲見の返事を貰ってから、言葉を続ける。「サメ飼ってるって、本当?」
「サメ?」稲見は首を傾げる。「サメって、シャーク?」
「あの、ジョーズ?」蘭世は答える。
「サメだよねえ」稲見は考えながら答える。「聞いた事もない。まあ、飼おうと思えば飼えるのかもしれないけど、許可はおりるのかな。そもそも、そんな恐ろしいものが〈プール〉にいるとは思えないけど。誰にきいたの?」
「れなち」蘭世は玲奈の肩を叩いて言った。「この人からきいた」
「え? 何?」怜奈は稲見と蘭世を交互に見る。
「二十二階の〈プール〉に、サメがいるって言ったよねえ?」蘭世は玲奈に言った。
「ああ、うん。きいた」怜奈は頷いた。「絢音ちゃなんからきいたんだよ、確か」
「はい?」隣を歩いていた絢音は、眼を白黒させる。「何? 何ですか?」
「二十二階に、サメがいるんでしょ?」怜奈は絢音に言った。
「あー、うん。いるらしい、けど」絢音は答える。「私は見に行ってない。怖いから」
「サメを飼い始めたのかな?」稲見は眉を顰めて呟いた。「夕の考える事は、よくわからない事も多いからな……」
 気持ちが高揚(こうよう)した駅前木葉(えきまえこのは)は、あごをしゃくらせて、遠藤さくらに強く微笑んだ。これは駅前木葉の特有の癖(くせ)である。
 遠藤さくらは口元を手で隠して、笑わないように、頑張りながら、笑っている。
「木葉さん、そーいう、その、そういう顔しなければ、すっごい綺麗なのに」遥香はもったいなさそうに駅前に言った。「何でそーなっちゃうの?」
「あき、緊張、でふかね?」駅前はあごをしゃくらせたまま、眼を見開いて微笑み返しているつもりで遥香に言った。遥香は少し怯(おび)えている。「あのう、すぐ、慣れるんで、大丈夫れす、っふっふふ」
「夕君とか、笑わないんだよ、木葉さんの顔ギャグで」美緒が信じられない、といった表情で言った。「凄いよね。えどっちがいいんですか? 笑った方がいいのか、笑わない方がいいのか……」
「はい。どちらでも大丈夫ですよ」駅前は気が済んだのか、平常心で答えた。「笑ってくれた方が、安全かしら」
 安全、て何だよ……。と賀喜遥香は心の中で駅前木葉という人物に恐怖を覚えた。
 現在、久保史緒里は身動きを封じられている。封じているのは、磯野波平の満面の笑みの熱視線であった。
「何……何ですか?」史緒里は苦笑して磯野に言った。「何で見てるんですか……」
「国民的アイドルだぜ?」磯野は満面の笑みで答える。「そりゃ見るだろう。見るな、つう方がどうかしてっだろ久保たん」
「嫌!」史緒里は「久保たん」と言われて短く悲鳴を上げた。
「やめろ! 波平!」そう言ったのは美波であった。「そんなんばっかやってるから、脳みそまで筋肉になっちゃうんだよ」
「だれが脳みそまで筋肉なのよ…梅たん……」磯野は深いダメージを受けて美波に言った。
「て前に、夕君が言ってたなーと思って」美波は笑った。
「夕のものまねしてくれたんだな、ありがとうなすげえ嬉しくなかったぜありがとうさんって事で……」
 磯野波平はそう言って、激しく抵抗(ていこう)する梅澤美波を肩にしょい込んだ。
「やめてってば! 波平君っ!」美波は抵抗する。「おーろーしてっ!」
「さあ、二人になれっとこ行くか」磯野は美波を担いだままで歩き始める。
「波平君やーめーさなさい!」史緒里も激しく磯野に抵抗する。「ちょっと危ないからおろしなさいって! 波平君っ! 波平君のバカっ!」
 ざわざわと、この騒動を見物しに人が集まってくる……。
作品名:ポケットの中の夏。 作家名:タンポポ