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ポケットに咲く花。

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「うん。何パターンかあったと思う」未央奈は頷いて答えた。
「弓木殿は」あたるが言いかける。
「やけどしないで下さいね、だよな」夕は楽しそうに、あたるより先に言った。「ヤバ、どんだけ食ってんだ俺ら」
「けっこう食べてるね」怜奈は口元を片手で隠して笑った。「お昼ご飯とかにしてるの?」
「正解でござる」あたるは笑顔で怜奈に答えた。
「基本ここにいない時はカップスターだよ」夕は笑顔で怜奈に言う。「俺はいっぺんに二個食うけどね」
「ねえ、おかわりしない?」未央奈はグラスの中の残り少ない液体を一瞥して言った。
「じゃあカップスターとドリンク、おかわりしよう」夕は皆を見て言う。「ドリンクが到着したら、改めて蘭世ちゃんの卒業に乾杯しようぜ」

       8

稲見瓶(いなみびん)は、腕時計で時刻をチェックする。予定の時刻にはまだ少しだけ余裕があった。〈リリィ・アース〉にて、友人達との待ち合わせである。
二千二十一年九月二十一日、うたコン【生放送!】の収録を終えた乃木坂46の数名は、今宵も〈リリィ・アース〉に休息に訪れていた。
 エレベーターを降り、稲見瓶は早歩きでフロアを移動する。地下二階のエントランス・メインフロアの東側のラウンジ、通称〈いつもの場所〉に、乃木坂46数名の姿を見つけた。ソファ・スペースに座っているメンバーは、乃木坂46一期生の高山一実、同じく一期生の和田まあや、二期生の寺田蘭世、北野日奈子、三期生の山下美月、与田祐希、四期生の賀喜遥香と遠藤さくら、卒業生の西野七瀬であった。
 乃木坂46ファン同盟からの参加者は、風秋夕(ふあきゆう)、磯野波平、姫野あたる、そして稲見瓶である。
「おー、イナッチ~」一実は振り返って、稲見の登場に微笑んだ。「イナッチ時間通りにくるね~、さすが、イナッチ」
「やあ、みんな」稲見は早々に夕の隣の席に腰を下ろした。「お待たせしました」
 高山一実はいつも通りの、大きなポジピースTシャツを着用している。西野七瀬はフラグスタフのロングTシャツを着用している。和田まあやはトゥー・ビー・バイ・アニエスベーのTシャツを着用していた。寺田蘭世が着用しているトップスはエレンディークである。北野日奈子が着用しているロングスリーブTシャツはミルクフェドである。山下美月が着用しているTシャツはウィゴーである。与田祐希が着用しているブラウスはエピヌであった。賀喜遥香が着用しているニュウ起毛スウェット襟レース出しロゴトップスはイングである。遠藤さくらが着用しているスウェットTシャツはアクネ・ストゥディオズであった。
 乃木坂46の服装はこの夏も華やかであるが、乃木坂46ファン同盟の四人の服装は、今宵も言わずと知れたはるやまのスーツであった。
 東側のソファには北野日奈子と寺田蘭世が座っている。対する正面の西側のソファには、高山一実と西野七瀬と和田まあやが座っていた。南側のソファには山下美月と与田祐希、そして賀喜遥香と遠藤さくらが座り、対する正面の北側のソファに、稲見瓶、風秋夕、磯野波平、姫野あたるが座っていた。
「何で集まった?」七瀬は可笑しそうに言った。
「偶然ここに寄ってくれた人達と、その人達が呼び出した人達」夕は七瀬に微笑んで言った。「メシも食べちゃったし、何だろうな、この幸せ過ぎる集まりは……」
「夕食、まだなんだけど」稲見は無表情で夕を見る。
「食べなよ」夕は嫌そうに稲見に言った。「そんな、見られても……」
「ああああ」一実はにっこりと独特の笑い方をした。「イナッチの感情がわからない、今更だけど」
「でも、かずみんの活動スケジュールが九月いっぱいじゃなくなって良かったよな?」磯野は誰にでもなく、表情豊かに語り掛ける。「東京ドームが延期になったんは、残念すぎっけどよぉ」
「蘭世ちゃんも活動の最後の日って、決まってないんだよね?」夕は蘭世を見つめて言った。
「うん、決まっては、ない、のかな」蘭世はあやふやに返事をする。「あの、うちも晩ご飯まだ食べてないんよ」
「えー食べなよ、お腹空いたでしょう?」夕は驚いた顔で蘭世に言った。「頼んじゃおうよ、ね」
「対応が違う……」稲見はメニュー表を見つめながらぼそっと呟(つぶや)いた。
「あーまあやも食べよっかな……」まあやは悩んだ顔を皆に向ける。「食べる人、いる?」
「飲み物、おかわりぐらい」日奈子はほどほどの笑顔で言った。
「ブドウ、食べたいかも」美月はまあやを見て言った。「食べます?」
「あーブドウねー、いいかも」まあやはテーブルに手を伸ばしてメニュー表を取った。
「あ、うち、スジコとご飯でいいや」蘭世はメニュー表を美月に手渡す。「はい。てかスジコあったんだ。知らなかった。知ってたらスジコ注文してたのに」
「イクラじゃねんだ?」磯野は笑みを浮かべて蘭世に言った。
「スジコ」蘭世は頷(うなず)いた。
「じゃあ、私はイクラにしようかな」遥香はメニュー表を見つめながら言った。
「みんな食べるねえ?」夕は笑う。「そうだよな、カロリー使うもんな」
「なぁちゃんとさくちゃんは食べないでござるか?」あたるは笑顔で二人を交互に見た。
「ドリンク、でいいかな」七瀬は小首を傾げて答えた。
「じゃあ、みたらし団子で」さくらは上品に微笑んで言った。
 現在この賑やかなフロアを飾る楽曲は、マライア・キャリー・フューチャリング・T,I,のR&Bサウンド『アイルビー・ラビィング・ユー・ロング・タイム』であった。
「ねえねえ、なぁちゃんとさくちゃんの上品コンビって、すげえ良くない?」夕は稲見に言った。
「何て言えばいいの?」稲見は無表情で夕を見る。「どっちも好きな人だけど、そんなコンビは初耳だね」
「いやすげえいい、でいいじゃん別に」夕は嫌そうに稲見に言った。
「たかせまるとかきさくだろうがあ!」磯野は興奮して夕の肩を叩いた。夕は「やめろ」と嫌がっている。「たかせまるとかくさくって言やぁ乃木坂のファン業界じゃあもう有名よお!」
「お、興奮した!」日奈子は磯野を楽しむ。「立つか? 立つのか?」
「だからよぉ、王様ゲームやんねえ?」磯野は満面の笑みで言った。
「何が、だからなんだよ」夕は眉を顰めて磯野に言った。「メシでも食おうかって話してるとこでしょうよ……」
「王様ゲーム賛成でござる!」あたるは大きく手を上げた。「小生はクリスマス・イヴの奇跡の王様ゲームを体験してないでござる! 参加したいでござるよ!」
「とりあえず、それぞれのメニューを注文しよう」稲見は冷静に言った。
 皆が各々のリクエストを、電脳執事のイーサンに伝えた。
 注文したフードとドリンクが全て届くまで、十五分間かかった。それまでにフロアに流れた音楽は、乃木坂46の『他人の空似』、乃木坂46の『ごめんねフィンガーズクロスト』、ワイクリフ・ジョンの『スィーテスト・ガール』であった。
「じゃあやんなよ、王様ゲーム」一実は夕を中心として皆を見回す。「私となぁちゃんは見てるから。やんなよ」
「えーやんないんですか?」日奈子はそう言ってから、蘭世を見る。「蘭世ぴんは? やる?」
「どーゆうのかわかってないから、とりあえずは参加します」蘭世は美月達を見る。「やるでしょう?」
「あ、はい」美月は笑顔で頷いた。
作品名:ポケットに咲く花。 作家名:タンポポ