二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ポケットに咲く花。

INDEX|18ページ/36ページ|

次のページ前のページ
 

「いい雰囲気だったよ」まあやは微笑みながら言った。「えもうこのまま、しちゃうんじゃないかと思ったもん」
「しないですよぉ」
 山下美月と与田祐希は、声をハモり重ねるようにしてそう言った。
「美月ちゃん超セクシーだったし」夕は至福の笑みで言う。「与田ちゃん、超可愛かったし」
「ヤベえな」磯野も幸福の笑みを浮かべていた。「俺なんかこいつとだったらしょっぱなから折ってんぜ?」
「こっちのセリフだ馬鹿者……」夕は溜息をついた。「王様ゲーム、改めてヤバいな」
 王様ゲーム第四回戦。ジャンケンで王様に選ばれたのは、山下美月であった。
 現在この地下二階メイン・フロアに流れている楽曲は、SWVの『ライト・ヒア―』である。
「んん、どうしようかな……」美月は小首を傾げて、皆を見回す。「じゃーね、んー……どうしよっかなー……。七番さんと、三番さんがぁ、好きな異性の名前を言う」
 咄嗟(とっさ)に皆は、その番号の持ち主を探し始める……。
 結果、三番が与田祐希で、七番が姫野あたるであった。
「何でー、私ばっかり……」祐希はもう笑うしかない。
「くじ運、持ってるねえ」七瀬は祐希に言った。
「持ってるっていえるんですかねえ、これって」祐希は苦笑する。
「ダーリン、乃木坂関係以外の、好きな人な」夕はあたるの方を見て言った。続いて祐希を見つめる。「与田ちゃんは、好きになった事のある人、または、現在も好きな異性の名前ね」
「ええ~? 私ばっかり……」祐希は苦笑する。「何で、えー?」
「思い出の、とかでもいいよ」夕は親指を立てて祐希に微笑んだ。「とりあえず、好きな異性をバラしちゃって下さい」
「波平、だろ?」磯野は祐希に押し付ける。「だろ与田ちゃん!」
「えー逆にダーリンの好きな人っていうのも気になる~」一実はあたるを見て言った。あたるは赤面する。
「ほんと無理」祐希は苦笑から逃れられない。「かっきー、さくちゃん、助けて」
「がんばって下さい」さくらは優しい笑みでグーを出して言った。
「あでも、子供の頃とかだったら」遥香は柔らかく微笑んで、祐希に言う。「大丈夫じゃないですかね」
「えー」祐希は困りながら笑う。
「どうする?」美月が男子達に言う。「芸能人とかでも、与田のタイプがわかるよ?」
「マジか」夕は片手で胸を押さえた。
「なあ、波平だろ?」磯野は返事が来るまで言う。「だろ与田ちゃん!」
「黙っとれ貴様ぁ!」夕は磯野に怒鳴った。「う~るっせえなさっきっから!」
「だってよ、自分の名前じゃなかったら、こんなん一回失恋すんのとおんなじじゃねえかよ!」磯野は大声で興奮する。
「去年のクリスマスに与田ちゃんにフラれてるでしょうよあんた!」夕は嫌そうな顔で磯野に叫んだ。
「声が大きいよ、二人とも」稲見は無表情で抑揚(よくよう)無く言った。
 お題、与田祐希と姫野あたるが、好きな異性の名前を言う、である。
「じゃあ、私から……」祐希は小さく手を上げて言った。「もちお、君……です」
「へー!」一実は感心する。「もちお君だ~? へー変わった名前だねえ」
「小学生の時とか?」蘭世は祐希に言った。
「もちおって名前なの?」日奈子は不思議そうに祐希を見つめる。
「はい。私がつけました」祐希は鼻筋(はなすじ)に皺(しわ)を作って笑った。「うちのもちお君です」
「与田ちゃんのワンちゃんだよ」夕は一実達に説明した。「いいよね? 有りで。傷つくより百倍いい答えだったよ」
「波平じゃねえの?」磯野は残念そうに顔をしかめる。「そこもちおなんだ?」
「小生は……、乃木坂以外でござるかぁ?」あたるは改めて、驚いた顔で夕の方を見る。
「卒業生もなし」夕はきっぱりと答えた。
「早く言えよ、お前にあんま興味ねえんだからよ……」磯野はつまらなそうに囁いた。
 フロアに乃木坂46の『逃げ水』が流れる。
「小生はぁ……、シイアのMVによく出ている、元少女のダンサーが好きでござる」あたるは絞り出しながら言った。「わかるでござるか?」
「シーアって、あのシャンデリアの?」夕はあたるに確認する。
「そうでござるそうでござる!」あたるは笑顔で言った。「シャンデリアという曲のMVで、その子がデビューしたでござる。メディアに顔を出さないシイアの代わりに、その子がしばらく、シイアの象徴になってたでござるよ。今はもう、大人でござろうな」
「へー、あとで調べよう」一実は納得した様子だった。
「少女を好きになるとこがな、お前らしいよな」磯野は吐いて捨てる。
「いや! 物凄く華麗なバレエダンスを踊るでござるよ!」あたるは必死に弁解する。「全米がその子に注目したでござる! 魅力は本物でござろう!」
「へー」日奈子は呟いた。
「あ、この子だ?」遥香は携帯電話の画面をあたるに向ける。「この子?」
「そーうでござる!」
「どれ?」
「見せて」
 その場がざわつく中、王様ゲームの第五回戦が始まった。ジャンケンで王様に選ばれたのは、賀喜遥香である。
 フロアにJAY-ZのHIPHOPサウンド『イゾー/イン・ザ・エンド』が流れる。
「えーと、五番と十番が、好きな漫画を二つ以上言う」遥香はにこやかに命令を出した。
「五番と十番だって?」夕は皆を見る。「お、蘭世ちゃん」
「はい、十番です」蘭世は上げていた手を下ろした。「好きな、漫画?」
「はい」遥香は丁寧に答える。「あ、アニメでもいいです、大丈夫です」
「十番は?」夕は皆の顔を見ていく。「えー与田ちゃん?」
「また」祐希は苦笑して頷いた。五番の割り箸を持っている。
「五回連続だよ?」七瀬は少し驚いた顔で祐希を見つめる。「ほんとに、くじ運凄いね」
「運いいんです」祐希はそう言った後で、苦笑する。「この場合、いいって言っていいかわかんないですけど」
「え宝くじとか買いなよ~」まあやは真剣に言った。
「はい。今度、買います」祐希は笑って答える。
「好きな漫画かあ~」一実は微笑ましく、選ばれた二人を見た。「教えて教えて」
「はい。じゃあ、蘭世さんから」遥香は、上品な仕草で、手の平を蘭世へと向けた。
「はーい」蘭世は答える。「え二つ以上?」
「はい」遥香は頷いた。「二つでいいです」
「えと……、まず一つが、黒崎くんの言いなりになんてならない。で……、二つ目が、オオカミ少女と黒王子。です……」
「へー」遥香はのけぞって感心した。「そうなんだ」
「何回もリピートして読んでるぐらい好きなの」蘭世は微笑んで遥香に答えた。
「へー」遥香は感心した後で、祐希を覗き込むようにして見た。「じゃあ、与田さん。お願いします」
「はい。私は、銀(ぎん)魂(たま)」祐希ははにかんで答えた。「一つくらいしかわかんないから、好きなキャラ言います。定春(さだはる)です」
「与田ちゃんどんだけ動物好きなんだよ」夕は可笑しくて笑った。「すげえ与田ちゃんらしくて好き、その答え」
「さだはる、て……、あのでっけえ犬か?」磯野は夕にきく。
「いやー与田ちゃんも蘭世ちゃんも女の子だなー」
「シカトかてめっ!」
 王様ゲームは禁断の第六回戦へともつれ込んでいくのであった……。

       10
作品名:ポケットに咲く花。 作家名:タンポポ