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ポケットに咲く花。

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 現在この地下二階のメイン・フロアに流れている楽曲は、タリア・フューチャリング・ファット・ジョーのR&Bサウンド『アイ・ウォント・ユー』であった。
 王様ゲーム第六回戦。ジャンケンで王様に選ばれたのは、姫野あたるである。
「これは意外と禁じ手かもしれぬでござるが、決心して言うでござる。一番と二番が仲良くポッキーゲームでござるよ!」
 姫野あたるはそう言い終えた後で、すぐに皆の顔色を窺(うかが)う。
 寺田蘭世は違う。北野日奈子も、違うだろう。与田祐希も、違う。山下美月でもない。賀喜遥香でもないようだ。遠藤さくらは、違うらしい。和田まあやか、いや違う。
 姫野あたるは右横の、磯野波平と風秋夕と稲見瓶を見る……。
「ぬおっ!」あたるは思わず声を上げていた。
 完全に真っ白に燃え尽きたアホづらで、磯野波平が二番の割り箸を持っている。
 そして、風秋夕が俯いて頭を抱えていた。
 稲見瓶は四番の割り箸であった。
「まさか……」あたるは二人を見る。「一番と、二番でござるのか……」
「あ~あっあっ」一実は独特の笑い方で微笑む。「当たりだねえ! ダメだよ? やらなきゃー。与田ちゃんと美月ちゃんだってやったんだからー」
「命令、替えろ、ダーリン」夕は燃え尽きる寸前の炎をその眼に宿してあたるに言った。
「ダメだよー!」一実はにこやかに言う。
「だーめ、やんなきゃー、ほら、うちらだってちゃんとやってるんだから」日奈子もにこやかに言った。
「ユリの次は、BL?」蘭世は可笑しくてくすくすと笑った。
「がーんばってねー」美月はけらけらっと笑った。
「と、とりあえず落ち着くでござる!」あたるは落ち着こうと、ドリンクを手に取った。
「呪いがとけた……」祐希は安心の溜息をついた。
「二人とも、モテるんでしょう?」遥香はいじめっ子のように言った。「じゃあ、こうゆうのは上手いはずだよね?」
 西野七瀬と遠藤さくらは、笑いながら硬直している二人を見つめていた。和田まあやはにやけながら二人を見つめている。
 何だかんだと皆で騒いでいるうちに、楽曲がTLCのR&Bサウンド『ノー・スクランブルス』に変わった。
 風秋夕と、磯野波平が、仲良くポッキーゲーム、である。
「くそ」夕はポッキーの端っこを口に咥えた。「ん!」
 一方、磯野波平はひからびたどこかのお爺さんのようになっている。
「波平君、がんばれ!」美月は一応、応援した。「こんなの得意でしょ?」
「波平君、早く、がんばれ!」遥香は磯野をせかす。「一瞬だよ!」
「お前なあ!」夕は一度口からポッキーを放して、磯野に言う。「こっちだって大迷惑なんだよ、てめえだけ固まって時間取らせんじゃねえ! 嫌な時間が倍になるじゃねえか」
「あの、なあ!」磯野は蘇(よみがえ)る。「俺が女でもなあ、てめえにだきゃー触れられたくねえんだよ、このなんちゃって王子様が!」
「触れねえよ一瞬だ、一瞬!」夕はまた、口にポッキーを咥えた。「ん!」
「くっそー……」磯野は、嫌々で、ポッキーのチョコレートの方を、口に咥えた。
 パキン――と、すぐにポッキーの柄(え)は折られた。
 磯野波平は、風秋夕を睨みつけながら、口の先に残ったポッキーを食べていく。
 風秋夕もまた、磯野波平を鋭く睨みつけたまま、残りのポッキーを食べ終えた。
 その場に、パラパラとした拍手が舞い上がる。
「嫌なものを見た」稲見は呟いた。
「じゃあ見なきゃいいじゃねえか!」夕は稲見に憤怒する。
「無表情で怖えんだよてめえは!」磯野も稲見に八つ当たりした。
「やー、でも、キスの距離にはいたねえ」一実は面白がって二人を弄(いじ)る。「あの距離に顔が近づく事って他にないでしょう?」
「ない、ねえ」七瀬は軽く苦笑した。「でも、夕君の方が、意外とあっさりとやる気でいたね、それが、意外」
「だって、俺らがNG出しちゃったら、乃木坂もNG出しちゃうでしょ?」夕は困った顔で微笑みを浮かべた。「それじゃせっかくの王様ゲームがさ、もったいないからさ」
「それにしても、嫌なものを見た」稲見は呟いた。
「黙ってろ!」と夕。
「はったおすぞてめえ!」と磯野。
「いやー、もうちょっとがんばって欲しかったな」日奈子は笑みを浮かべて言った。
 フロアに流れていた楽曲が、ブルーのR&Bサウンド『ワン・ラブ』に変わる。
「うーん、もーうちょ~っと、見たかったよねー」まあやは先程の主役二人を見つめて言った。「だって、ポッキーかじって、すぐ折っちゃうんだもん、二人とも」
「でもさ、同時だったじゃん? 折ったの?」日奈子は楽しそうに言う。「でもさ、夕君は右向いて折って、波平君は左向いて折ってんだよね。それがなんか、かっこよかった」
「ああー、わかる~」蘭世はソファを小さくとんとんと飛び跳ねて微笑んだ。
「強敵を前にして、ライバル同士が仕方なく、手を組んだ、みたいな?」遥香は蘭世達を見つめて言った。
「そうそうそれー」蘭世は喜ぶ。
「いや、あれは悪夢だね」稲見は呟く。
「勉強しねえなてめえは! 黙ってろっつってんだろ!」夕は驚きながら稲見に怒った。
「カンチョーして持ち上げんぞコラ!」磯野は稲見に興奮して怒鳴った。
 王様ゲーム第七回戦。ジャンケンで王様に選ばれたのは、寺田蘭世であった。
 フロアの楽曲はメアリー・J・ブライジのR&Bサウンド『リアル・ラブ』になった。
「えー、じゃあね。一番から、十一番の全員が、王様に何かして」蘭世は微笑みながらそう言った。
「はい!」夕が挙手してその場を立ち上がった。「内緒話、しまーす!」
「はい」蘭世は頷いた。
 風秋夕は、稲見瓶に何やらを打ち明け、磯野波平にも何やらを打ち明けた。磯野波平は姫野あたるにそれを耳元で伝え、姫野あたるは少しだけ移動して、北野日奈子の耳元をそれを打ち明けようとして、「あああいい香りでござる~」と一度失敗してから、もう一度気持ちを引き締めて、北野日奈子へと何やらを伝えた。
 稲見瓶が高山一実へとそれを伝えると、高山一実は、西野七瀬へとそれを耳打ちで伝えた。西野七瀬は遠藤さくらへと伝え、遠藤さくらも、賀喜遥香へとそれを耳打ちで伝えた。
 賀喜遥香は、山下美月の耳元でそれを囁き、山下美月は与田祐希の耳元で、小さくそれを伝えた。
「OっK!」祐希は片手でOKマークを作って夕に微笑んだ。
「蘭世ちゃん意外、みんな伝わったね!」夕は笑顔で皆に言った。
「おっけーおっけー」一実は微笑んで言う。「伝わったー」
「いいよいいよ」日奈子もにやけて言った。
「オッケー」まあやもにやける。
「オッケーです」美月は微笑んで言った。
「はい」遥香は頷いた。
「じゃあ、みんなで、せーのぅ……」夕は言った。
次の瞬間、その場の十二人全員が声を合わせて「蘭世(ちゃん)大好きーーー!」と叫んだ。
 寺田蘭世が微笑む中、続いて風秋夕が天井を見上げて、電脳執事のイーサンに言う。
「イーサン、ミッション、スタート!」
 地下二階メイン・フロアの音楽がピタリ、と止み。空間を照らしていた照明が、仄(ほの)かな灯(あか)りだけになる。続いて、ハッピーバースデイの音楽が流れてきた……。
 十二人が合唱する。
作品名:ポケットに咲く花。 作家名:タンポポ