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ポケットに咲く花。

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 松尾美佑は、寺田蘭世の背中を見ていたと、温かい方だと語り、洋服をプレゼントされた事を嬉しそうに語った。伊藤理々杏は白いワンピースを寺田蘭世から貰い、今でもそれを着なくても部屋に飾ってあると語った。
 再開されるステージ。始まった『意外ブレーク』は佐藤楓と、北川悠理と、寺田蘭世と吉田綾乃クリスティーの四人ユニットであった。
「ヤバいヤバい、意外ブレークすっげえ好き!」夕は感激する。
「カッコイイな……」稲見は思わず呟(つぶや)いた。
「ダンスもやべえなおい!」磯野は笑顔で叫ぶ。
「あー、感動するでござるっ、と、鳥肌がっ!」あたるは大興奮で叫んだ。
 駅前木葉はステージに見とれている。
 続いて、矢久保美緒と佐藤璃果が、向井葉月を呼び、三人で楽曲を歌う事となった。えいえいおーと、三人が掛け声をかけた時に、小さな笑いが起こった。
 三人のユニットで、向井葉月のアコースティック・ギターで歌うのは『海流の島よ』である。途中、サウンドがかかり、アコースティック・ギターをやめ、歌って踊る三人。その可愛さに、稲見瓶は思わずに笑みを浮かべていた。
 中村麗乃がセンターで『遠回りの愛情』が始まる。中村麗乃、伊藤理々杏、柴田柚菜、林瑠奈、弓木奈於の五人ユニットが、しっとりとこれを歌い仕上げた。
 続いて、和田まあや、阪口珠美、金川紗耶、松尾美佑の四人ユニットで歌われるのは『アナザー・ゴースト』であった。黒い衣装に紅い手袋。その不思議なシリアス感のある雰囲気のステージに、磯野波平は時間を忘れてスクリーンの映像に噛り付く。
 そのままのメンバーでタップ・ダンスが繰り広げられる。スライドする扉を開ければ、そこには衣装をまとったマネキンがいた。再び扉を閉め、また扉を開くと、そこには先程マネキンが纏(まと)っていた衣装を着飾った寺田蘭世が立っていた。
 寺田蘭世をセンターとして『その女』が歌われる。
 続いて、可愛らしい花柄(はながら)と、ドット柄の白いの衣装で歌われるのは、『涙がまだ悲しみだった頃』であった。センターは柴田柚菜である。
 楽曲は止まることなく続き、『リワインド・あの日』が寺田蘭世、山崎怜奈、和田まあやの三人ユニットで歌われる。印象的なブラックの衣装であった。姫野あたるは、盛大に鳥肌を立て、両腕を抱えながら、その楽曲に大興奮する。
 センターを伊藤理々杏に『のような存在』が始まる……。ラストの瞬間、光を手中に掴み取る伊藤理々杏の演出が秀逸であった。
 佐藤璃果がセンターで『不等号』が流れる。
 楽曲は眼忙(めまぐる)しく変わり、『誰よりそばにいたい』がメロディアスに流れる。センターは寺田蘭世であった。この名曲に、駅前木葉は、感動に震えながら涙を流した。
 寺田蘭世のトークが始まる。自分の気持ちを言葉にするのが、苦手だったと。ステージには受け継ぐもの、受け継がれていくものがあると。
 そして『自由の彼方』が開始される。センターは寺田蘭世である。真っ白な雪の結晶の様な衣装であった。
 伊藤理々杏のセンターで『三角の空き地』が続いてかかる。風秋夕は、その頬(ほお)に、涙を落とした。
 俺にとって、寺田蘭世は、当たり前の存在じゃなかった。
 君が微笑むと、心がにやけた。君が笑うと、なぜだろう、安心さえした。
 君が花なら、俺達ファンは水だろう。その関係性が誇らしい。
 眼を瞑(つぶ)れば、すぐに昔の君が蘇(よみがえ)って。
 眼を開けば、いつもそこに君がいる。
 本当は強気な人なのだろうと思って見ていると、強気で意地を張って、踏ん張っている君が見えた。
 弱い面を見せるのが嫌いで、常に笑っている君は、美しい花びらを咲かせている、一凛(いちりん)の凛々(りり)しく咲いた花束だ。
 美しい横顔からは、想像もできない苦労と心労を積み重ねて来たね……。
 全てとは言わない。でも、知っている。君の俯(うつむ)いた顔も、泣いてしまった顔も。
 そのどれもを抱きしめて、夢を見ようと思う。
 寺田蘭世という、儚(はかな)くも光り輝く、長い長い夢を。
 大好きだよ、蘭世ちゃん。
 素晴らしい家族に見守られ、育まれ、包み込まれていると、一目でわかる。
 そんな家族を、君は微笑ませている。
 その笑顔の一部を、俺達ももらっている。
 君という美しい花に、水を絶やさぬよう誓う。
 これからも、ずっとだ。
 バイバイは言わないよ、蘭世ちゃん。
「蘭世ちゃーーーーん! 蘭世ちゃーーーーーーーーーん!」
 風秋夕は大きく叫んだその名前を、その姿を、新しい記憶へと焼き付けていく。決して忘れる事のない記憶へと変わるだろうと、そんな気がしながら。
 山崎怜奈センターで『錆びたコンパス』が始まる。
 寺田蘭世センターの名曲『ブランコ』が流れる。磯野波平は耐え切れずに、顔をしかめて涙する……。
 もうちっと見てたかったぜ、蘭世ちゃんのこと。
 早いよな、季節が変わってよ、月日が経ってよ、大人になるのって。
 本当はこんな言葉なんかじゃ伝えられねえんだけどな。
 考えちまう。時間なんか止まれ、て。
 そしたら、そこでずっと蘭世ちゃんを笑かしててやれるのに、て。
 もうちっとだけ、時間をくれねえかな、神様よ。
 蘭世ちゃんが笑うとこ、ちゃんともう一回見たいんだよ。
 あと少しだけ、時間をくれよ、なあ、神様よ。
 蘭世ちゃん、上手く言えねえんだけど……。その長い髪が好きで、蘭世ちゃんが笑ってんのが好きで、好きで、好きで……、言葉なんか、ちっぽけなもんだな。
 選ぶんなら、ありがとう。だ。
 蘭世ちゃん、いい人生をくれたぜ。
 ありがとうな。
 蘭世ちゃんの番だぜ。幸せにな――。
 またな、蘭世ちゃん……。
「蘭世ぢゃん……っく、らーんぜちゃーーーーーーん!」
 磯野波平は顔をしかめながら、大声で叫び散らした。これ程までに育て上げた、深い愛情と共に。
 『別れ際、もっと好きになる』が佐藤楓のセンターで歌われる。姫野あたるは何秒間か、眼を瞑(つぶ)り、大きな涙を頬(ほお)にこぼした。
 最後でござる……。小生も、笑おうと思う。
 これは、もう、最後のお別れなのでござろうか……。
 しょうせ……。僕は、蘭世ちゃんに、ちゃんとお別れができるだろうか。
 乃木坂46としての寺田蘭世ちゃんは、これで最後のステージなのだろう。
 でも、寺田蘭世ちゃんの人生のステージは、これからも続いて行くよね。
 じゃあ、僕はいつまでも、君の大ファンだ。
 ずっと、ずっと、かけがえのない存在なんだよ。
 太陽がいつか燃え尽きて、この世界の闇が訪れようとも。
 僕は寺田蘭世の大ファンでいる。
 形を変えないままで、僕の君への心はこのポケットに閉じ込めておくよ。
 さよならは言わないけれど、感謝の言葉は伝えたい。
 ありがとう。そして、生涯、君の笑顔を忘れない。
 永遠の、愛を誓って――。
「蘭世ちゃん蘭世ちゃん、蘭世ちゃーーーーーんっ!」
 姫野あたるは、泣きじゃくりながら、何度叫んだであろうその名を叫ぶ。永遠の愛を誓いながら……。
 『嫉妬の権利』が中村麗乃のセンターで歌われる。稲見瓶は、親しみのあるこの曲の中でこそ、寺田蘭世への恋心を想った。
作品名:ポケットに咲く花。 作家名:タンポポ