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ポケットに咲く花。

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 明るく抱き合う二人……。
 一本の薔薇(ばら)の花束と、想いのこもった手紙を、メンバーが一人一人、寺田蘭世にメッセージと共に手渡しで贈っていく。
 寺田蘭世は、最後のトークで、おこがましいが、本当に幸せ者だなと、皆さん本当にありがとうございましたと伝えた。
 寺田蘭世は、ステージの上へと続く階段へと上り、他のメンバーは惜しみながら、ステージを後にした。
 ステージ上で、寺田蘭世は最後の言葉を呟く。沢山の愛を、本当にありがとうございました――。会えると言えば、また会える気がすると、彼女は語り、最後に、またどこかでお会いしましょう――と、彼女は言葉を残して、ステージを降りて行った。

       13

 季節が完全に冬を迎えた二千二十一年十月三十一日。ハロウィーン当日。乃木坂46はミート&グリートを催して一日の激務を終えたことだろう。
 現在、ここ〈リリィ・アース〉には激務を終えたばかりの乃木坂46数名と、その卒業生達数名が集っていた。ハロウィーンであるが、皆、私服姿である。コスプレはミート&グリートで充分に披露されたのだろう。
 乃木坂46ファン同盟の五人は、今宵の〈リリィ・アース〉でコスプレをしていた。
 風秋夕は漫画バスタードのカル=スのコスプレであった。銀色の鎧に紫の衣装、茶色いロングブーツに、白いローブを身に纏い、腰には短剣アイスフォルシオンが携えられている。髪の毛も銀髪であった。
 稲見瓶は漫画セーラームーンのタキシード仮面のコスプレであった。黒髪に、タキシード仮面お馴染みの仮面に、黒いタキシード姿である。
 磯野波平は漫画東京リベンジャーズの、東京卍会の特攻服姿のコスプレであった。髪は金髪である。
 姫野あたるはドラマじゃない方の彼女から、主人公小谷雅也のコスプレであった。チェック柄の長袖シャツに、靴下の見える短めのベージュのチノパンである。肩にかけるバッグも再現していた。
 駅前木葉はドラマ言霊荘から主人公の歌川言葉のコスプレであった。長袖の黄色いロングTシャツに、オーバーオール姿であった。
 地下二階エントランスホール、メイン・フロアにはハロウィーンの装飾が所々に施されていた。
「ハッピーハロウィン!」夕はにこやかに、フロアを見物している数名のメンバーに言った。「ようこそ、ハロウィーンの館へ」
「誰のコスプレかわっかんねーんだよなー」飛鳥は口元を笑わせながら、夕をジロジロと見つめて言った。「何、勇者?」
「絶対零凍破(テスタメント)!」夕は技を繰り出す仕草で言った。「知らない?」
「んーん」飛鳥は首を振った。
「バスタードっていう漫画の、カルスっていうキャラなんだけどさ、このキャラが好きで好きで、ガキん頃マネして魔法唱えてたもんね」夕は飛鳥に微笑んで言った。
「ハリー・ポッターじゃないんだ?」飛鳥は意外そうに言う。
「俺は魔法と言えばこっち。バスタード。まあね、少々エロイけどね」
「東京リベンジャーズかー」遥香は磯野に微笑んだ。「で、誰なの?」
「卍会の、俺」磯野はかかっと笑う。「東京リベンジャーズの俺!」
「出てないじゃん」遥香は磯野を見つめる。
「はいチュウしちゃうぞ~」磯野は襲い掛かる。
「キャあ!」驚く遥香。
「絶対零凍破(テスタメント)ー!」夕は磯野を羽交(はが)い絞(じ)めにする。「おら絶対零度(ぜったいれいど)だぞ、お前の体組織は完全に活動を停止した! 停止したんだから止まらんか馬鹿者ぉ!」
「イナッチ~、タキシード仮面だあ?」絵梨花は微笑ましく稲見に言った。「似合う似合う! いいじゃ~ん」
「これしか思い浮かばなかった」稲見は苦笑する。「肌の露出が多い漫画しか知らなくて、ふと思いついたのが、この人だった」
「イナッチがタキシード仮面なら、セーラームーンは誰だろうね~?」絵梨花は茶化して稲見に言った。
「誰だろう。いくちゃんかも知れない」稲見は微笑む。
「あ、言うようになったなー。イナッチなまいき~」絵梨花は横目で稲見をふざけて睨んだ。
「美月殿!」あたるは美月のそばで走るのをやめた。「どうでござるか!」
「なに。誰、それ?」美月は苦笑する。
「雅也、マー君でござるよ! じゃない方の彼女の!」あたるは必死に訴えた。
「あー。本当だ」美月は可笑しそうに笑った。「そーゆーの着てたね」
「マー君と小生、どっちが奥手かいい勝負でござるゆえ、通じるものを感じたでござるよ」
「あー……。玲子沼にハマっちゃうよ?」美月はあたるににこ、と微笑む。
「もう、ハマってるでござズッキュウウン!」あたるは昇天しそうになった。
「木葉ちゃん、もしかして、それって……」七瀬は苦笑しながら、駅前に言った。
「はい。言葉(ことは)ちゃんです。言霊荘の」駅前は赤面しながら言う。「このは、と、ことは、なので、思い切ってやらせていただきました」
「コスプレ、ていうか、普通の服だよね?」七瀬はくすくすと笑う。
「はい」駅前もふふふと笑った。
「観てくれてるんだ」七瀬は微笑みを浮かべた。
「はいもちろんです。震えながら、毎週観ています」駅前は眼玉をひんむいて答えた。少し、高揚(こうよう)している。
 地下二階のフロアには、長手が十五メートルにもなろうカウンター席が所々に設置してあり、その上に氷やドリンク、豪勢なフードなどが用意されていた。
遠藤さくらと矢久保美緒は、周囲の装飾をまじまじと観察している。和田まあやと樋口日奈と寺田蘭世と山崎怜奈は、さっそくカウンター席に座っていた。
与田祐希と向井葉月と佐藤楓は、最寄りの〈レストラン・エレベーター〉へと向かい、電脳執事のイーサンにドリンクを注文していた。
久保史緒里と伊藤理々杏と阪口珠美と吉田綾乃クリスティーは、やはりカウンター席で食事を始めていた。
「夕君、誰それ?」絵梨花は面白がって夕に言った。「戦う人だよねえ?」
「冷凍魔術が得意なカルス様だよ」夕はローブをひとはらいして、絵梨花に微笑んだ。「乃木坂におススメしにくい漫画ですが」
「銀髪って……」飛鳥はまじまじと夕の髪の毛を見上げる。「それ、本物?」
「染めちゃった」夕はにこやかに飛鳥に言った。「似合うでしょ? ハンサムだから」
「自分で言っちゃったよ」飛鳥は苦笑する。
「でーも、こんな同級生、学校にいたら目立つなー」一実は微笑んで夕を見る。「うんモテると思ーう。夕君モテたでしょう?」
「どうだろう、どう思う?」夕はにっこりと一実に微笑んだ。
「私学校で目立たなかったから、夕君に相手にもされないと思うな」真夏ははにかんで言った。
「よく言うよ。まなったん学校のマドンナだったっていう情報入ってるよ」夕は口元を引き上げて真夏に言った。「生徒会長で、乃木坂だなんて。モテ要素しかないじゃんか」
「じゃあ、相手、してくれる?」真夏は小首を傾げて、夕を上目遣いで見上げた。
「この世の終わりが来ても、手は放さないよ」夕は真夏に微笑んだ。
「やってろ」飛鳥は吐いて捨てる。
「ねね、なんか呑む?」絵梨花はそこにいる皆を見て言った。「お酒だよね? やっぱ」
「お酒なら、ゆっくり吞もうね」一実はそこにいる皆に言う。「私ら、アサヒ・ビールの大人選抜だから、お酒の呑み方とかレクチャーしてるからね、一応。お手本だから」
作品名:ポケットに咲く花。 作家名:タンポポ