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ポケットに咲く花。

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「じゃあ、ゆっくり吞も?」真夏ははにかんで言った。
「タキシード仮面かあ……」眞衣はまじまじと稲見を観察する。稲見は赤面しそうだった。
「バラは?」日奈子はにっこりと微笑んで稲見にきいた。「バラは持ってないの? ほら、投げるじゃん、バラ」
「持ってるよ」稲見は内ポケットから一凛(いちりん)の薔薇(ばら)を取り出した。「投げても、刺さらないけどね」
「刺さったら凄いよね」絢音は可笑しそうに笑った。「漫画とかアニメだと刺さるもんね」
「よく笑うようになったね」稲見は絢音に言った。
「はい」絢音は微笑んで頷いた。
「口説(くど)いてんのかよこら」日奈子はふざけて稲見に言った。「カッコイイこと言ってえ」
「超自然だったよね」眞衣が続いて言った。「よく、笑うようになったんだね」
「……」稲見は赤面する。
「なあにやってんの?」蘭世はその仲間に加わった。「イナッチ、顔、赤くない?」
「なになに?」怜奈も加わる。「イナッチが何?」
「いやね、今ね、イナッチが絢音のこと口説いたのよ」眞衣は我が物顔で言った。
「口説いてない」稲見は無表情で抵抗する。
「よく、笑うんだね……とか言って口説いたの~」日奈子ははしゃいで蘭世と怜奈に説明した。「いや手が早いこと。気ぃ抜けないね!」
「あら~」蘭世は微笑む。
「あらま」怜奈も微笑んだ。
「何でそんなわかりづらいコスプレを……」美波はあたるに苦笑した。「どうせならもっと、わかりやすい奴でいいじゃん」
「いやあ、観てくれてるんだよ、ダーリンは」美月は笑みを浮かべて美波に言った。
「ブームでござるよ、ブーム」あたるは笑って説明した。「美月殿が恋をするぐらいでござるからな、これはモテコーデでござる」
「美月じゃなくて、玲子ちゃんね」美月はゆっくりと発音した。「私ではないから」
「そうでござったな、かあ~っはっは!」
「飲み物取ってきた」祐希はそのグループに加わった。「なに、なんの話?」
「あ、私も飲み物取ってこよ~」美月はそちらへと向かう。
「あ私も」美波もそちらへと向かった。
「ダーリンの、コスプレの話」麗乃はあたると祐希を交互に見ながら言った。「じゃない方の彼女の、コスプレだって」
「え、誰?」祐希は眼を見開いてあたるを凝視する。「てかふっつうの人、だよね」
「与田、もう食べないのぅ?」葉月が会話に加わる。
「あー。また後で」祐希は葉月に答えた。
「それなんのコスプレですか?」楓は会話に加わりながら開口一番にあたるに言った。
「じゃない方の彼女の、マー君のコスプレでござる」あたるは胸を張って楓に言った。
「マー君? ああ~」楓は理解したようであった。「あーそういえば、似てる、かも……」
「今日はハッピーハロウィンでござろう、さあさ皆、ではハッピーに御馳走でも食べるでござるよ、さあ食べに行くでござる」
「特攻服か~」遥香は思った事を口に出して呟いた。「けっこう似合うじゃん」
「だろ?」磯野は満面の笑みで答えた。「これしかねえと思ってよお」
「あれ!ああ~! ケーキがある~!」紗耶は驚いた様子でカウンター席の大型ケーキを覗き込んだ。「ハッピーバースデイやんちゃんて書いてある~!」
「おお、今日でやんちゃん二十歳だからなー」磯野はにこにこして言った。「ハッピーバースデイなあ、やんちゃん!」
「ハッピーバースデイ! 璃果、お皿取って」紗耶香はてきぱきとそこにいる数名に指示を出す。「まゆたん、スプーンとフォーク取って。お松、お皿並べて。奈於、飲み物ちょっとどけて、ゆりゆり、笑って。ふふん、可愛い」
「ふふ」悠理は微笑んだ。
「わーいケーキだ~」遥香は着席して、周囲を見回した。「しーちゃん、しーちゃん。ここ、となり座って下さい」
「えー、いいよ」史緒里は微笑んで、移動する。
「柚菜たん、ここ座って」遥香は柚菜に微笑んで言った。「ケーキケーキ!」
「わーい」柚菜は遥香の左隣に座る。「食べるー」
「レイちゃん、座ろ?」あやめは手を繋いでいるレイに言った。「ケーキもらおっか」
「えーもらおもらお」レイは着席する。「えー、あ、さくちゃん、となり座る?」
「あー、座るー」さくらははにかんで、レイの隣に座った。すかさずに、磯野がさくらの左隣に着席した。「あ、……ども」
「さくたぁん」磯野は猫なで声でさくらに微笑んだ。「可愛すぎるだろぉ、さくたぁん」
「ふ、ありがとうございます」さくらは文字通り、苦笑した。「金髪、にしたんですか?」
「おお、したんだ。似合う?」磯野はでれでれと微笑みを浮かべる。
「似合います似合います」さくらは一所懸命に答えた。
「波平君、食べちゃっていいの~?」紗耶は大声で磯野に言った。
「いいぜ~!」磯野は立ち上がる。「ハッピバースデイ、トゥーユ~、ハッピバースデイ、トゥーユ~」
 歌い始めた磯野波平に合わせて、そのカウンターにいた全員が合唱を始めた。
「おめでと~やんちゃ~ん!」磯野はクラッカーを鳴らす。
 おめでとうの声が、連鎖反応のように地下二階のフロアに飛び交った。
 風秋夕がマイクを使って、紹介する。皆は所々のカウンター席についていた。
 風秋夕の隣には、特徴的な赤いモヒカン・ヘアーの十文字幻斎先生が立っていた。その人物は日本を代表する催眠術師で、日本で最も速く催眠誘導する催眠術師として「閃光の催眠術師」として知られる、有名な奇術師であった。
 気が付いた者から声をもらしていく……。
「えー、今日は、お忙しい中、乃木坂でもお馴染みの、十文字先生にゲストとして来ていただきました」夕はマイクでフロアの皆に説明する。「先生が時間に制限があるので、手短に言いますが、先生に催眠術をかけてもらいます。俺達ファン同盟の五人が」
 フロアがざわつく中、風秋夕はマイクを十文字幻斎先生に手渡した。
「えーはい、じゃあね、ファン同盟の五人は、ちょっと前に集まっていただきましょう」
 十文字幻斎先生の言葉通りに、乃木坂ファン同盟の五人が、十文字幻斎の前に集まった。
 そこには五脚の椅子が用意してある。五人はそれに腰を下ろした。
「はい、行きます」
 十文字幻斎先生が術をかけていく。
「はい風秋夕君、あなたはぁ~、十数えると、乃木坂46の齋藤飛鳥さんの事が、誰よりも好きになります。はい眠ってぇぇ~」
 風秋夕は眼の前で指を鳴らされて、肩を激しく揺らされ、一瞬で眠りの様な状態におちた。
「五、四、三、二、一、はい!起きて下さい、おはようございます……」
 同じような術が、残りの四人にも施(ほどこ)された。
 風秋夕は、齋藤飛鳥が好きで仕方なくなる術におちている。
 稲見瓶は、生田絵梨花が好きで仕方なくなる術におちている。
 磯野波平は、寺田蘭世が好きで仕方なくなる術におちている。
 姫野あたるは、山下美月が好きで仕方なくなる術におちている。
 駅前木葉は、遠藤さくらが好きで仕方なくなる術におちている。
 十文字幻斎先生が言う。
「え~この状態は、明日の朝を迎えるまで、続きます。明日の朝眼が覚めると、すっきりと、元の状態に戻ります。ありがとうございました」
 驚いたことに、十文字幻斎先生はそう言葉を残し、帰路に着いた。
 フロアに流れる音楽以外には、囁き声しか響いていなかった。
作品名:ポケットに咲く花。 作家名:タンポポ