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ポケットに咲く花。

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「小生なんて、ダーリンへ、でござるよ!」あたるは思い出して興奮する。「はあああし、幸せっ!」
「何はともあれ、東京ドームまでの日々も、賑やかな毎日だね」稲見は、珍しく自然に微笑んだ。「ラジオ、テレビに、雑誌、映画、配信に、ベストアルバムに、新曲。盛りだくさんだ」
「乃木坂がなきゃ、仕事にも集中できねえ」磯野はかかっと笑って言った。
「乃木坂が忙しいのに、こっちは手薄なんて、ありえないからな」夕は微笑んで言う。「こっちも乃木坂色で染めさせてもらってる」
「ありがとう」稲見は誰にでもない、乃木坂に言った。
「本当に、感謝しています」駅前も隣の飛鳥と一実に、そしてソファに座る今いるメンバー達に頭を下げた。
「サンキューな!」磯野はウィンクして、親指を立てて言った。
「ちゃんと、最後まで、そしてこれからも、見つめ続けるでござるよ、みんな」あたるは乃木坂の皆にそう言って、頭を下げた。
「本当に、ありがとう。いつもお疲れ様です」夕も、上品に、丁寧に、乃木坂のメンバー達に頭を下げた。「何度生まれ変わっても、恋をさせてね」

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「はい。今映ってますかねぇ、どうでしょうか? 映ってますかねえ。皆さんお待たせしてすみませーん。なんか、機材トラブルだったという事で、申し訳ございません。お待たせいたしました。そしてぇ、でも私もずっとコメントとかは見せてもらってて、一緒に、黒いくるくるを、たぶん皆さんと同じように、見てたんですけども」

 乃木坂46の寺田蘭世として、最後となるであろうファースト写真集『なぜ、忘れられないのだろう?』発売記念ショー・ルーム生配信が始まった。
 風秋夕、稲見瓶、磯野波平、姫野あたる、駅前木葉の五人は、〈リリィ・アース〉地下六階の東側の壁面奥に存在する〈映写室〉の巨大スクリーンにて、今はまだ乃木坂46である寺田蘭世の姿を見守っていた。
 寺田蘭世は、笑顔であった。

「ていう事で、皆さんこんばんは乃木坂46の寺田蘭世です。えーと今回はですねファースト写真集『なぜ忘れられないのだろう』の、発売記念特番、になります始まりました~いぇい」

「蘭世ちゃん、引退するんだってな。芸能界……」夕は、誰にでもなく、囁いた。
「ああ、きいた。辛い」稲見は感情をそのまま口調に表した。
「そんなツラして見送んのか……」磯野は誰にでもなく言った。「笑ってんじゃねえか、当の本人がよ……」
「最後まで、笑顔でいる、でござるよ。イナッチ殿」そう言ったあたるの顔は、泣いていた。
 駅前木葉は、黙って巨大スクリーンを眺めている。

「大丈夫ですか、見えてますかね。ですけどぉ、えーとですねこの番組は私乃木坂46寺田蘭世のファースト写真集『なぜ忘れられないんだろう』が、えーと、本日ですね十一月九日に発売される事を記念した、特別配信になっております。写真集にまつわる、盛りだくさんのコーナーになっておりますので、ぜひ最後までお付き合いください」

「手に入れたよー、蘭世ちゃーん!」夕は大声で言った。
「自宅に届いてんな」磯野は呟いた。
「まだ見る決心がつかないでござる……」あたるは顔を歪ませて言った。
「蘭世さん、綺麗ですね……」駅前は、寺田蘭世に見とれるように、そう囁いた。
「卒業には、卒業を見送る方にも、覚悟が必要なんだね」稲見は呟くように言った。

「限定ポスター、見せていいよぉとの事なので、……私が見せたくない、いひひひひ。嘘です、それは嘘です。恥ずかしいんですけども。え! 完売しちゃってる? え……完売おめでとうってコメントきてる……。ぅえー? 完売してる? たくさん、すでに完売しとるよ。見る前に完売……えー。完売しちゃったのかなあ?」

「お前、何冊買ったんだよ」夕は磯野を一瞥して言った。
「俺はワンパターンにつき、二冊、とこういうのは決めてある。買いすぎちまうからなあ」磯野は巨大スクリーンから眼を放さずに言った。
「このショー・ルーム限定のが、欲しかったけど。無いのかな」稲見はぼそりと呟いた。
「凄いでござる、凄いでござるよぉ蘭世殿ぉ……」あたるはまた、感動して新しい涙を浮かべた。
「すごぉい……」駅前も、つい声に出して呟いていた。

「まずはこちら、写真集トークぅ……やー、良かったBGMがある、嬉しい。という事でですね、こちらは写真集に関するトークを、どんどんしていこうというコーナーです。ユーザーの皆さんも気になる事知りたい事あったら、ぜひどんどんコメントとか、まツイッターの方も私も見ているので、してくれたら嬉しいですお願いします!」

「どうどうとしてるね」稲見は誰にでもなく言った。
「二期、だかんな」磯野はにやけた。
「後輩がたくさんいるんだ、ちゃんとした先輩だよ」夕は笑みを浮かべる。
「はあ~……、時よ! 止まれでござる!」あたるは叫んで、磯野からげんこつをもらった。
「#、らんぜ祭り……。オールナイトニッポンでまいちゅんさんと決めたアレですね」駅前は必死に携帯電話を操作し、コメントを送っていた。

「そ! 私、引退、引退を発表したんですけど、引退? するからぁ、なんか今の私に、今とか後の私に、その写真集におけるそういうカットって、いらないんじゃないかなぁと思って、葛藤もあったんですけどぉ……やっぱり、自分がもっと年齢を重ねた時にぃ、いい思い出になったらいいなぁと思って。すっごいね、贅沢な話なんですけど、こんな皆さんにも、ね、見ていただくような場所で、贅沢なんですけどぉ、綺麗に撮ってもらってえ、思い出に残せたらいいなぁと思って、やらせていただきました」

「綺麗だろうなあ!」磯野は凛々しく微笑んだ。
「表紙、三パターンか」夕は満足そうに呟いた。
「ポストカードか。コンプリートしてみたかったな」稲見は囁いた。
「蘭世殿は、買い物上手なイメージが強いでござる」あたるは、弱々しく微笑んだ。
「素敵な写真集になりましたね、蘭世さん」駅前はにこやかに、呟いた。
「おいポスターの追加されたってよ!」磯野は叫んだ。
「……」稲見はすかさずに携帯画面をチェックする。
 五人共が、素早く携帯電話を操っていた。

「て事で、次のコーナーに行きたいと思います! 続きましてはこちらです。この旅、なぜ忘れられないんだろ~……ふふ。はい、という事で、こちらは今回の写真集のテーマ、大切な人との旅、にちなんで番組をご覧の皆さんに、えーと忘れられない旅の思い出と、忘れられない理由を、コメントや、ツイートで、考えてもらおうというコーナーになっております!」

「忘れられない、旅の思い出……」夕は声に出して言った。
「忘れられない理由か……」稲見も声に出して言った。
「誰かさん達が、無邪気に笑ったからだよ」夕は微笑んで言った。
「旅をしてるといえば、そうかもね」稲見は呟いた。
「心の旅、でござる」あたるは巨大スクリーンを見つめて呟いた。
「旅なんて、伊豆に行ったぐれえかな?」磯野は思い出しながら言った。
「修学旅行の京都が忘れられないでござる」あたるは苦く笑みを浮かべた。「まくら投げで、小生まとにされたでござるよ。あれは今ではイジメでござる」
「そういう忘れられない、じゃないんじゃないか?」夕はあたるを一瞥する。
作品名:ポケットに咲く花。 作家名:タンポポ