ポケットに咲く花。
「夏業式、だな」夕は寂しそうに笑って、四人に言った。
「おお、東京ドームでな」磯野はにやけて、頷いた。
「始まるね、そろそろ」稲見は鼓動の高まりを感じる。
「おおお、緊張が限界を超えてるでござる~」あたるはお腹を押さえながら苦笑した。
「かずみんさん、皆さん、ちゃんとしっかり、応援しますね」駅前は巨大スクリーンに映し出された乃木坂46の姿に誓った。
影ナレは樋口日奈、伊藤理々杏、山下美月であった。このメンバーは、高山一実とセーラームーンをやった仲間であった。一言一言に、スティックバルーンの強い反応が起こる。
会場中が、紫一色のライティングに染まる。照明が落とされ、数秒間の闇に変わると、やがてVTRが始まり、オーバーチャーが流れ始めた。スティックバルーンを叩く木霊が激しさの頂点へと達する。
ただいまと、初めましてが交錯する場所。やはりここは特別だった。乃木坂46真夏の全国ツアー2021ファイナル!東京ドーム。
一滴の煌めく光が一瞬にして乃木坂46に降臨した瞬間に、『ごめんねファンガ―クロスト』が爆発的な勢いで始まった。センターは四期生の遠藤さくらである。
続いて齋藤飛鳥の満面の笑みで『ジコチューで行こう』がかかる。曲中、齋藤飛鳥の『東京ドームのお前らーヤッホー、今日はアメイジングでポジピースなライブにしましょうねー!』という掛け声が熱かった。
軽快なリズムとメロディと共に『太陽ノック』が始まる。トロッコに高山一実が乗り込んでいた。生田絵梨花や、トロッコに乗った秋元真夏から『アメイジ―ング』と『ポジピース』の溢れる演出となった。
生田絵梨花の『皆さん、大好きだよー!』から、『おいでシャンプー』が始まる。山下美月と賀喜遥香、遠藤さくらもトロッコに乗り込んでいた。齋藤飛鳥もトロッコで会場に手を振っている。
ステージに戻り、ラストダンスを踊るメンバー達。
乃木坂46の代表曲ともいえる『シンクロニシティ』がその神秘的な旋律から始まる。センターは三期生の梅澤美波である。高山一実は笑顔でこれを歌っていた。
秋元真夏のMCで、トークが始まる。会場を煽る秋元真夏とメンバー達、会場の盛り上がりは頂点に達していた。
『今日は世界一、熱い一日にしていきましょう!』
表題曲、カップリング曲、アンダー曲、ユニット曲/ソロ曲のランキングを巨大スクリーンにて発表された。
与田祐希は『逃げ水』が印象的だと語った。感じた気持ちは忘れないだろうし、忘れたくないなと思いましたと語ってくれた。
筒井あやめは、『ひと夏の長さより…』が思い出深いと語った。高山一実と沢山コミュニケーションを取れたことが嬉しかったと語った。
北野日奈子はセンターをやらせてもらっている『日常』はやっぱり大切だと語った。
VTRが流れ、ナレーションが語る。ジャンル別に人気曲を募集したと。今日のこのライブでは、その中でも人気の高かったものを披露すると。
『ファンタスティック3色パン』が始まる。一期生の齋藤飛鳥、三期生の山下美月、三期生の梅澤美波の三人はそれぞれが別々の制服姿で、パンを身体につっくけていた。
賀喜遥香、新内眞衣、秋元真夏、樋口日奈、遠藤さくら、生田絵梨花、高山一実、この七名で歌う楽曲は『せっかちなかたつむり』である。可愛すぎるそのステージに、風秋夕は我を忘れて巨大スクリーンに噛り付くようにして見つめる……。
迫力のサウンドで『錆びたコンパス』が開始される。センターは二期生の山崎怜奈である。水色を基調とした刺繡の入ったロングドレスであった。
感動的なメロディと共に『ひと夏の長さより…』が始まった。センターは一期生の秋元真夏と四期生の賀喜遥香である。肩元にゴールドの花柄の装飾が入った、チェック柄の白を基調としたロングドレスであった。
代表曲ともいえる『ありがちな恋愛』が流れる。センターは一期生の齋藤飛鳥と三期生の山下美月であった。
ヴァイオレットな雰囲気で披露されるダンスパフォーマンスから、『日常』が始まると、ステージは紅いライティングが交差する。重い旋律と激しいダンスが見事な名曲を表現してみせた。
バルーンに乗った齋藤飛鳥をセンターとした『裸足でサマー』が始まる。与田祐希と遠藤さくらもバルーンに乗っている。会場中に広がって歌い踊るメンバー達。衣装は白を基調とした紫が印象的なロングドレスである。
与田祐希の煽りから『全部 夢のまま』が始まった。七十年代のディスコサウンド風のこの楽曲にテンションを上げ、乃木坂46ファン同盟の五人は暗黙の了解で完コピのフリを踊る。
樋口日奈のありがとうございますで、MCが始まった。
向井葉月は、高山一実との宝物の時間に、『渋谷ブルース』を歌った事を挙げた。高山一実は『私が抜けたら、ホワイト・ハイもいなくなっちゃうんで、ボンバー頑張って』と向井葉月に告げた。
新内眞衣は思い出に、一緒に遊んでくれた事を挙げた。新内眞衣の家に集合して、近所迷惑レベルで騒いだ事を思い出に挙げたのだった。
齋藤飛鳥は、ちょっと緊張するんですけど、お涙ちょうだいかも知れないんですけど、と前置きをしてから、高山一実との食事の約束をキャンセルした事が、一番の思い出だと語った。
VTRが流れる。一期生達から何もかもが始まったと、ナレーションが語る。二期生の功績が色あせる事はないと。三期生加入、新たな風が吹き抜けた。四期生加入、見えるだろうか、透明な光が。
乃木坂46の数ある楽曲の中でも最強といえる『アイシー』が始まる。センターは四期生の賀喜遥香である。これを四期生達で歌っている。全力で会場中を煽る賀喜遥香は凛々しく、情熱的に笑っていた。ピンクと朱色のドレスが可愛かった。
岩本蓮加のセンターとしての煽りから『トキトキメキメキ』が歌われる。三期制が全員で歌うとても可愛すぎる楽曲。紫のロングドレスが印象的であった。
始まりからして名曲としか言いようのない旋律を奏でながら、『アナスターシャ』が二期生達によって歌われる。寄り添い合うようにしてサビを歌う二期生達。もう、四人になってしまった。歴史を思わせる楽曲ともなった。
一期生達は『失いたくないから』を歌う。ステージで、高山一実だけが踊っている。他の一期生達は、トロッコに。そして、トロッコから降り、高山一実の待つステージへと集まる一期生達。最後は全員でこれを歌い、踊った。センターは高山一実であった。
VTRが始まる。2020年に乃木坂46が出したシングルCDは僅か一枚。多くのライブも中止となった。そんな困難な中、乃木坂46は輝き、選抜がこれを引っ張ってきたといえるだろう。
選抜、という言葉は、乃木坂46にとって、特別な言葉である。
ステージ上に、乃木坂46の選抜メンバー達が集まっていく……。
秋元康先生と小室哲哉氏の天才最強音楽プロデューサーコンビが創り出した名曲『ルート246』が始まった。センターは一期生の齋藤飛鳥である。漂うレーザー光線。紅い衣装が印象的であった。小室サウンドに秋元先生のクールな歌詞が乗る。