二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

再見 五 その三の一

INDEX|2ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 

 すらりと鞘から剣を抜く。この剣独特の重い光が現れた。
 剣を眺め、さめざめと剣に話しかける藺晨、、。
「名剣だったのに、、、。包丁や鍋や農具ばかり打っていた老人の、一世一代の一振を、、何と無惨にこんな黒い皮で包みやがって、、、。可哀想な私の剣、、、。」
「若閣主、何を仰るのです。この剛剣に、最良の鞘ではないですか!。この鞘を見ただけで、相手は怯みますよ。」
 甄平が不満そうに言った。
 鞘は丁寧に磨き上げられ、美しい。白に碧の筋の入った玉がはめ込まれ、同じ革で作られた紐で複雑に編まれて、更に丈夫にされている。そして漆が幾度も塗られ、美しい皮の色が抜きん出の、剣と同じ位に職人の技が尽くされていた。
 決して藺晨が言う程、悪い鞘ではない。ただ武人として戦場に生きた者と、そういった経験がなく、剣を美術品と見なす藺晨との、考え方の違いなのだろう。
「せめて、、長蘇が白い皮を選んでくれていたら、、もう少し、こう、、、、な、、。
 あぁ、、全く残念な、、。
 ほら見てみろ、私の気持ちが、剣を持てば分かるだろう?。」
 藺晨は剣を鞘に収め、長蘇に渡した。
 長蘇は剣を抜き、鞘と剣両方を隅々まで見る。
 納得の、いやそれ以上の仕上がりだった。
──これ程の仕上がりに出来る者は、都の職人でもそうはいない。見事だ。僻地にこれ程の技を持つ者が居ようとは。
 しかし藺晨がこの鞘の素晴らしさを解(かい)せぬとは。、、、嘘だろ?。自分が『白い宝剣』と言った手前、意地を張っているのか?。
 、、、、、ならば。──
 長蘇は藺晨に剣を差し出す。
「ん。(この剣は藺晨にやる)」
「はぁぁ????、この不細工な剣を私によこすだと?。要るか!、こんなみっともない剣。美しくも何とも無いのに。」
 ぷんぶんと怒る藺晨に、甄平が言う。
「あー、失礼ですが若閣主。これ程美しい剣は、滅多にお目にかかれるもんじゃ無いですよ。」
「あぁぁ???。」
 そう言われて、眉間に更にシワが寄る藺晨。
 おずおずと甄平が、二人に向かって言う。
「あー、要らないんなら、私に下さい。」
 甄平が長蘇に両手を出した。
「やらん!!。」
「うー!!。(やらん)」
 藺晨と長蘇がきっぱり断る。
「え〜〜、、、、。
 ヒキトリテガナイカラワタシガヒキトロウト、、、、ブツブツブツ、、、、。」
 がっかりして意地ける甄平、、。
 すると黎綱が更ににじり寄り、両手を差し出した。
「あー、すみません〜。ありがとうございます〜。
 ニコニコニコニコ。」
 黎綱は、甄平が断られたならば、自分の物になると思ったのか、嬉しそうだ。
「図々し過ぎる!!。」
「あー!!。(馬鹿)」
 藺晨と長蘇が黎綱を叱る。
「全く!、何なんだ!、お前の配下は!。」
 藺晨は呆れたように長蘇に言った。
──これ程の剣を目の前にしたら、誰だって欲しくなる。これを持っているだけで、江湖では一目(いちもく)置かれるだろう。──
 長蘇は、甄平や黎綱の気持ちが、分からないでもない。
──だが、白い皮で宝石を散りばめてとは、、、。趣味が悪すぎる。
 これ程の剣を、飾ってどうするのだ、藺晨。──
「この剣は、長蘇、お前にくれてやったのだ。今更、要るか。
 、、、、大事にしろよ。」
 藺晨にそう言われて、長蘇は、剣を自分の手元に置くことを決めた。
「、、。」
 長蘇は何も言わぬ代わりに、藺晨に笑顔を向けた。
 長蘇の、少し含羞(はにか)んだような笑顔。長蘇は、打ち上がった剣を、格好良い姿にして藺晨に渡そうと思っていたのだ。
──まさか藺晨は、本当に宝剣にしようとしていたとは。──
 これまで使っていた剣より、幾らか軽めだが、丁寧に細い皮で飾り巻された柄は、まるで以前から使っていたかの様に、しっくりと手に馴染んでいる。
──剣の均衡が絶妙だ。剣が腕と一体になり、自分の体の一部の様に扱えるだろう。
 大切にしよう。──
 長蘇の中で、いい剣を手に入れた嬉しさが、次第に溢れる。
 藺晨も、長蘇のその様子が嬉しかった。

「あ、宗主の所有になったのなら、、、ちょっとだけ貸して頂けませんか?。」
 甄平が長蘇に頼むが。
「むー、、。」
 長蘇は、ぷいっとそっぽを向いて断った。
 すると黎綱が、、。
「宗主、私は触らせてもらえますよね。私がしっかり、お手入れをさせていただきますから。」
 長蘇は黎綱の言葉を無視して、『さっきの報告の続きを、、』と甄平に促した。
「宗主、それは無いですよ〜。触るだけですよ、ダメなんですか?。」
 黎綱が食い下がるが、一瞥し、睨み返す。
『手垢が付くだろ!、触るな。』
 長蘇はぎゅっと剣を抱き締めて、絶対に離さない。
「あはははは、、。長蘇、魔剣に魅入られたみたいだな。魂まで取られらるなよ。」
『取られるもんか。』
 長蘇は、にやりと藺晨に笑いかける。
「あははははは。」
《子供が玩具を手にしたみたいだな。》
 騎馬隊を率いて、敵を蹂躙した将軍だと言うのに、ある時は子供の様な反応を見せ、藺晨は長蘇から目が離せなくなるのだ。
《可愛らしい。》



 その後、甄平から報告を受ける。
「熊王!?。」
「自分は怪力王と言っていますが、余り素行が良くないのと、見た目から『熊王』と揶揄されています、、。
 この者がとんでもない悪たれで、、。通りかかる村や街で、悪行三昧で、、、。金品は強奪するわ、女子供には暴行するわ、とんでもない一味です。
 最初は熊王と手下二人程だったのですが、次第に悪たれが集まりだして、、、。」
 黎綱が眉を顰めて問い返す。
「役所は、何も動かないのか?。」
「集まった三下は大したことがないのですが、この熊王が滅法強くて、、、。地方の役所位ではとても手に負えぬ様です。」
『知っているか?、藺晨。』
 長蘇は藺晨を見る。藺晨も既に知っている様だ。
「あぁ、十日程前の知らせで、その様な者がいると、。出没するのは、ほとんど辺境だ。奴も都の軍は怖いのだろう。」
「宗主、江左盟の掌握地内に来たならば、少し痛い目に遭わせて、教育してやりましょう。」
 甄平の言葉に、長蘇は頷いた。
『廊洲の配下には、なるべく熊王の被害のあった場所に行き、手助けするように。決して目立たなくていい。その地の侠客に敵ではない事を伝えるのだ。
 繋がりが出来れば、その土地の情報が手に入る。』
 確かな情報は、金よりも重要だ。侠客の中には、仁徳を備え、土地の名士になっている者も少なくない。そういった名士の力となり、敵対関係では無いと、働きかける事も重要だ。
『甄平は腕が立つ。熊王の件は、お前が直接当たってくれ。』
「はっ。
 、、、、、。」
 そう答えて、甄平は少し考え込んでいた。
「どうした?、甄平、、。何か気になる事が?。」
 藺晨が察して、甄平に問いかけた。
「あ────、、、あの、、、。
 革屋の店主から、奇妙な事を聞かれまして、、。
 『姑娘はお元気ですか?』と、、、。
 よくよく聞けば、その女子が事細かに指示をしていったと。才能溢れる女子だと言われました。
 今後も剣の鞘の意匠を、お願い出来ぬだろうかと頼まれまして、、、。
作品名:再見 五 その三の一 作家名:古槍ノ標