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再見 五 その三の一

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 黎綱からは、宗主の指示で作っていると聞いていたので、まさか宗主が、店に直接行ける訳もないでしょうし、、てっきり若閣主が、店に頼んでいたのかと、、、。
 少し面食らってしまって、答えられなかったのですが。
 姑娘とは、どちらのお嬢様で?。何故女子が?。若閣主のお知り合いで?。宗主の秘密は大丈夫なのですか?。」
「ゲフンゲフンゲフンゲフン、、、。」
 長蘇は飲んでいた茶がどこかに入り、噎(む)せってしまった。
「、そ、、、宗主、、。大丈夫ですか。」
 隣で黎綱が、長蘇の背中を摩(さす)っている。
──そうだ、私は女子の姿で皮店に、、、。
 うっかりしていた。──
 店主は、鞘の仕上がりの良さに驚いたのだろう。長蘇が協力してくれれば、良い商いが出来ると睨み、何とか繋いでおきたいと思案したのだ。
 真顔で問う甄平を、どう躱すかは、藺晨次第だった。
「大丈夫だ。その女子は私の由縁の者で、信用できる。
 私以外に、誰もその者を知らぬし、色々と経緯があり、表立って歩ける女子では無いのだ。
 長蘇もその女子も、互いに弱味を握りあっている様なものだからな。
 ふふふふ、、、事が終われば、後腐れなく、綺麗に忘れ去られるだろうよ。」
 藺晨から言われたものの、甄平はの心は、不安が拭えない。
「そうなのですか。宗主、大丈夫なので?。」
 長蘇は微笑み、頷いた。それを見て、甄平はようやく、ほっと胸を撫で下ろす。甄平は、琅琊閣までの道すがら気が気ではなく、琅琊閣への秘境の道を、大急ぎで上って来たのだ。
「そうでしたか。私の杞憂で良かったです。
 店主の印象に強く残った様で、楚々とした上品な姑娘だったと、、さぞや由緒ある名家のご令嬢なのだろうと、、立ち居振る舞いが優雅だったと、、。」
「あはははははは、、、。店主がそんな事を。
 案外見る目がないな。粗暴で、人から物を巻き上げたりする、性格の悪い姑娘なのにな。なあ、長蘇、あはははは、、、。」
 藺晨の笑いが止まらない。
 長蘇は、藺晨がえらく楽しそうなのが腹立たしいが、自分が女装していると、甄平にはとても言えない。
 藺晨はそれが分かっていて、困る長蘇を楽しげに見ているのだ。
 藺晨は、長蘇が女装しているのを、幾らか匂わせてやろうかと思ったが。
 この甄平の事だ。『ウチの宗主を一体何だと!』と、またぎゃーぎゃーと噛み付かれかねない。
《甄平に噛み付かれたら、面倒臭くてかなわぬ。》


 藺晨が立ち上がり、長蘇を誘う。
「さて長蘇。剣も手に入った事だし、手合わせするか!。」
「ん!。」
 甄平がぴくりと反応した。
「えっ、この剣で?。
 宗主、若閣主との手合わせを、見ててもいいですか?。」
 甄平が懇願。
「う、。(これは使わん、欠けたらどうする)」
「甄平は任務があるのだろ?。ほれ、さっさと行け。」
「え──────っ、、、、ブツクサブツクサ、、。」
 藺晨が甄平を追い払い、甄平は不満たらたらで部屋を出て行った。
 
「では宗主、お手合せ、行ってらっしゃいませ。
 ニコニコニコニコ、、。」
「、、??。」
 何故か機嫌の良い黎綱。

 長蘇は、はっとして、一度は置いた剣を取りに行き、そのまま藺晨と外に出ようとする。
「え──────っ、宗主、使わないなら、その剣、置いていって下さいよ〜。絶対に触りませんよ。離れて見てるだけですから〜。」

「む!、ん!。(見るな、減る)」
「あはははははははは、、、。長蘇〜、なんて器が小さいのだ、、、あはははははは、、。」


 物欲しそうな黎綱を部屋に置いて、藺晨と長蘇は、琅琊閣の大岩の上に来た。

「まず振ってみろ。」
 使わぬとは言ったものの、手元にあれば、振ってみたくなるもの。
 実は藺晨も楽しみにいているのだ。
 長蘇は鞘を抜き、剣を眺める。先端から手元まで、少しの輝きも逃さぬように、じっと見つめた。
 閃光のように鋭い一振を見せ、そこから剣舞が始まった。
 『剣舞は好かぬ』と言っていたから、長蘇は剣舞が苦手なのだと思っていた。
 だが中々どうして、力強さがあり、藺晨ですらケチが付け難い程の腕前だった。
 天地の光や風すらも味方に付けた様な、流れる様な身のこなしに、藺晨は目が離せなくなる。
 新しい剣は、まるで以前から使っていた剣のように、長蘇の腕や体と一体化して、靱(しな)やかな動きを見せる。
《どうやら長蘇に、とんでもない剣を、持たせてしまったな、、。》
 まだずっと、長蘇の剣舞を見ていたかったが、長蘇は動きを止めて、大きく深呼吸をすると、剣を鞘に収めた。
「何だ?、もう終わりか?。」
『あぁ、終いだ。もう体が無理。』
《そうか、、病か。これ以上やれば、発作を起こす。》
 長蘇が病かだということを、忘れてしまう程の出来栄えだった。
『今日は、手合わせはもう出来ぬ。この剣でお前が剣舞をしてみろ。ほら。』
 長蘇は藺晨に剣を差し出した。
「馬鹿言え、お前の剣舞を見て、その後で私が出来ると?。」
『えっ?。』
《しまった!。うっかり長蘇を褒めてしまった。しかも奴はそれに気がついた。》
『何だって?、聞こえなかった。もう一回言ってみろ。』
 人の悪い長蘇は、藺晨の顔を追いかけて、しつこい程に覗き込む。
『ほらほらー、何て言ったんだ?。』
 あまりの執拗さに藺晨も根を上げた。
「あぁ〜、うるさい!。そうだよ!、見事な剣舞だったよ!。適わぬと言ったのだ。満足か!。」
『あはははは、、。』
 長蘇が笑っている。
「全くお前と来たら。ふふふふ。」
 二人で笑った。





 それから更に、数ヶ月が過ぎる。
 季節は秋の終わりに向かっていた。

 琅琊閣の紡衣房の者達は、刺繍に嵌り、皆、技を競っ合っていた。
 お陰で長蘇の衣も、悩んで選ばなければならぬ程、枚数が増えた。(藺晨とおソロになってたり〜。)

 今日、藺晨と長蘇は出かけるのだ。
 久々だった。
 長蘇は支度をして、部屋で待っている。
「さて、今日は少し遠出をするか〜。
 おいっ、長蘇、支度は出来たか?。」
 ずかずかと長蘇の部屋に入ったが、何処にも姿は無かった。
「あっ、少しお待ちを。今、着替えが終りますので。」
 衝立の後ろから、黎綱の声がした。
 藺晨は衝立から姿を現した長蘇に驚く。
「はぁ?。」
 長蘇は白い内着に黒い衣を合わせていた。
「なんだそれは!。」
『えっ、、変か?。たまには、色々組み合わせるのも、面白いかと思って、、。』
「変だ!。着替えろ!。これまで拵えたお前の衣は、一式物で、柄と絹の色が組み合わせてあるのだ。上衣が芙蓉で、中が菊って、変だろ、どう考えても!。」
『?、そうか?。色の組み合わせは良いと思うんだけどな。、、そうだろ黎綱。』
「わ、、私に聞かないで下さいよ〜。でも、確かに組み合わせは変えぬ方が良いかも、、、。」
 黎綱は二人の会話から逃げた。
「色の取り合わせも変だ。着替えろ、長蘇。そのままなら、連れて行かないぞ。」
『、、、。(むかー)』
 長蘇は黙って衝立に向かった。
 付いて行こうとする黎綱を、長蘇は寄せ付けず。一人で衣を変える気のようだ。
「上衣だけ着替えて来い。いいか破くなよ。」
作品名:再見 五 その三の一 作家名:古槍ノ標