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再見 五 その三の一

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 鍼も、薬学も、、、外科的な施術も、父上の記録に学ばねば。》

 馬車まで、黙って長蘇を背負って歩いた。
 藺晨が、約束を果たすために、あれやこれや、考えを巡らせているのが、長蘇にも分かった。

 どんな結末に向かおうとも、共に進んでやろうと、藺晨は覚悟を決めた。



 長蘇の運命はまた、廻り始めたのだ。




 馬車の側で火を起こし、一夜を馬車の中で越す。

 寒かろうと、藺晨の防寒用の紙衣も使って、長蘇を包んでやった。
 それでも体温は上がらず、長蘇は震えていた。長蘇の体温が回復しないのだ。馬車の中に置いておいた薬を幾つか飲ませても、効き目が無かった。
「困ったな、、。」
 長蘇の額に触れてみる。
《冷たい、、。寒の毒の症状だ、、。
 梅嶺で長蘇の体内に、火寒の毒が生成された。、、火寒の毒に隠されて分からなかったが、寒毒も有るのだろうな。
 馬車の側で火を焚いたせいか、馬車の中は幾らか暖かいというのに、長蘇の体は氷の様だ。
 今まで二人で何度か、寒い夜に野宿をしても、ここまでの症状は出なかった。
 やはり怒りに任せて、闇雲に内功を使った為に、内力の均衡が崩れたのだ。》
 長蘇が額に当てた藺晨の手を取り、自分の頬に動かして、藺晨の手の温もりで暖をとる。
「ははは、、温かいか?。」
 長蘇は少し顔を動かし、頷く。
「ああ、、そうか!。」
 思いついて藺晨は、外に出て、火の側にある温まった石を、二、三個拾い、長蘇の防寒紙を開いて、その手に持たせた。
「男同士だが、そうも言っていられぬ。今晩は抱き合って寝るか。男と寄り添って寝るなぞ、一生の内で、これ一度きりかも知れぬな。ははは、、。」
 藺晨には些か抵抗があったが、、、。
《妙な気がある訳じゃなし、こんな事は何ともない、、、、、、、ぞ、たぶん。》
 長蘇の隣に座り、背中から腕を通して、長蘇肩を抱く。
「つ、、冷たいなぁ、、、お前、、、。」
 藺晨がそう言うと、長蘇はにやりと笑って、自分の頬を藺晨の頬に擦り寄せる。
「がぁっ、、、冷たっ!、、、。」
《そういう奴だ、長蘇という奴は、、。》
 冷たがる藺晨を見て、長蘇は笑っていた。
《長蘇が笑った。》
 長蘇が、目を細めて笑顔になっただけで、嬉しくなり、冷たさも耐えられそうだった。
「もっとこっちに来い。背中が、、凄く冷たい、、。」
《出来るだけ、長蘇を温めてやりたい。》
「幾晩か、ここで過ごさねばならぬかもな、、。
 明日、琅琊閣に出発しても、あの山道をお前は登れん。もう少し回復するまで、ここで過ごそう。
 帰りの晩は野宿だろうと、駅館に馬車のを預けた時に、食べ物を積んで置くように頼んでおいた。さっき見たら、多めに用意してくれた様だ。」
 こくりと長蘇が頷く。
「酒もあったが、、、今日は止めておこう、、ただ体が冷えたのとは訳が違う。」
『お前は飲め。お前が温まれば私も温かい。』
「あはは、抜け目のない奴め。
 軍では寒い時はどうするのだ?。梅嶺は極寒なのだろう?。」
『ああ、、梅嶺の夜営はまだ良かったがな。初冬の夜間作戦なんか、凄く辛かったぞ。大渝を恨んだ。みんな寒くて軍令が出るまで、小隊で集まって温めあった。』
「焚き火位あったのだろう?。」
『火を焚いたら、敵に居場所が、分かってしまうだろ?。』
「寒いのに焚けないのか?!。」
『ただ、我慢だったよな。移動とか、出撃の方が体が温まる。待機は地獄だった。』
「そうなのか、、。私は、、何も知らぬのだな。琅琊閣で何不自由なく、暮らしていられた。」
『世の中の殆どの者は、そんな事は知らぬだろ。私の場合は仕方が無いのだ、武門の家に生まれたのだから。それに軍は、私の性に合っている。
 私だって、知らない事は山ほどあるし、知ってるからとて、何になる。良い例を一つ教えてやる。私を堅苦しい所に出してみろ、非難轟々だぞ。』
「??、、お前は礼や作法が分からぬと?、、。」
『いや、、頭には入っているが、、、体が耐えられん。逃げ回ってた。』
「あははは、、お前、仮にも公主の息子では無いか。呼ばれただろう?、堅苦しい所に。」
『ん、、余りに無作法だから、仕舞いには呼ばれなくなった。無作法も、案外大変なんだぞ。我ながら良く練られた作戦だった?。』
「ぷ───っっ、、作戦だと??。その口がよく言うよ。地だろ、地!。」
 他愛のない事を話した。
 話している内に、長蘇の体温も、また幾らか戻った様だった。
「震えも止まったな。眠くなったか?。」
 長蘇はにこりと笑む。
「なら、眠れ。眠るのが一番の薬だ。」
《長蘇、、疲れただろう、、。》
 長蘇の呼吸が深くなり、寝息に変わる。長蘇は呆れるほどに、寝付きが良い。
 こうも近くにいて、よくよく見れば、白い毛で覆われていても、長蘇の顔立ちの端整さが分かる。
 きりりとした目鼻立ちから、長蘇の意志の強さが伝わってくる。
《だが、普段憎たらしいのに、こうして気持ち良さげに眠る、無防備な姿ときたら、、、、可愛らしいというか、、守りたくなる、、というか、、つんつんとかイタズラしたくなるというか、、、、いやいやいやいや、、、、ダメダヤメロ。
 あ───、お前がごりごりの無骨な男じゃなくて、ほんとに良かった、、、。ごりごり、抱いて温めるなんて出来ない、、。ごりごり男なんか、私は見殺しにしてしまったかも、、。
 、、、、長蘇じゃなきゃ無理。》
 そんな事を考えたら、何だか可笑しくて仕方がない。
 きゅっと長蘇を抱き寄せれば、長蘇の頬に、藺晨の唇が触れる。
《回復しなかったら、琅琊閣まで、私が背負って上ってやる。
 琅琊閣に帰った後は、忙しくなる。
 まず、長蘇の体調を整えねば。今回こんな事があって、どれ程、長蘇は体の均衡を崩しているか。施術に耐えられる様、万全に整えておかねば。
 そして同時に、施術の計画を立てる。何処から毒を除去するか、、、どんな薬を使うか。長蘇の体質と薬の相性。
 問題は父上だ。どう考えても、私一人では不安だ。
 父上はこんなに長く、琅琊閣から離れ、放ったらかしに出来るのか、、。世間もよく知らぬ私なんぞに、任せ切りにして、安心して放浪している訳が無い。琅琊閣には、父上と繋がった者が、琅琊閣の内情を知らせているに違いない、、、。
 その者に、長蘇を施術する事を、伝えさせる事が出来れば、幾ら何でも父上は、帰って来るのではないか?。父上が帰ってきたらこっちのモノだ。父上が施術せぬまでも、琅琊閣に居てくれるだけでも、私には心強い。
 それに父上は、長蘇を死なせてしまう事を、酷く恐れていた。》
『ぅ、、ん、、、。』
 長蘇が藺晨の腕の中で動く。平常の体温が戻ってる訳では無いが、体が温まってきていて、少しずつだが楽になっているのだろう。
 長蘇の縮こまっていた体が緩み、脰(うなじ)を見せて、藺晨の横で安心して眠っている。綺麗な体の線が、接した藺晨の体へと伝わる。女物の衣を纏った感触は、長蘇の体であっても、酷く扇情的て思え、藺晨は目の前にある、薄らと開けた無防備な唇に、己の唇を重ねて弄(まさぐ)ってみたくなる。
《、、、馬鹿、止めとけ。長蘇は男だ。
 私も今日は、酷い緊張をして、頭がまだ張り詰めたままらしい。
作品名:再見 五 その三の一 作家名:古槍ノ標