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例えば、こんなメロディをポケットに響かせて。

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 『雲になればいい』が歌われる。純白の煌めくロングドレスを着た一期生の生田絵梨花と三期生の久保史緒里と四期生の賀喜遥香のトリオであった。磯野波平は泣き崩れながら『そうか、雲になればいいのか』と何だかしっくりとくる閃(ひらめ)きがあった。
 『羽の記憶』。生田絵梨花センターで、順番に寄りそって行くメンバー達。バックスクリーンには過去のメンバー達の映像と、現在のメンバーの映像と、舞い落ちる羽が演出されている。
 生田絵梨花のトークが始まる。次の楽曲は、ピアノ演奏のきっかけとなった楽曲であると告げられた。

『それでは聴いて下さい。君の名は希望……』

 生田絵梨花がピアノ伴奏で歌い、そして乃木坂46が歌う。それが『君の名は希望』の真なる姿とも言えるだろう。
 ユニゾンで小さく歌われる姫野あたるの頬に、大きな大きな涙が伝っていく……。
 梅澤美波のMCでトークが開始される。与田祐希は初めて『遥かなるブータン』を歌ったのだが、生田絵梨花が歌うメンバーを決めたとの事で、どうして自分なのかと聞くと、『与田ちゃんがブータンのフリを踊っていたら面白そうだから』という理由であった事を笑いと共に伝えた。
 遠藤さくらは、生田絵梨花に憧れて乃木坂46に入ってきたので、今日と明日は精一杯頑張ると告げた。
 久保史緒里は、初めて生田絵梨花と隣で歌わせていただけるシングルが嬉しかったのだが、シングルの度に何度も『初めてだね、嬉しい』と言われてしまい、驚いたという話を披露した。
 VTRが始まる。生田絵梨花は、ダンサブルな楽曲に対して、もう少しどん欲になれたのではないかと、振り返れば思うと語った。初心者マークを付けたつもりで、ライブでまた実演したいと語った。カラーを曲ごとに変えられたらと。
 生田絵梨花が最後に踊っておきたかった楽曲――。
 それは『命は美しい』である。生田絵梨花をセンターに、冷静さと激しさを兼ね備えた美しい旋律が、楽曲や会場のオーディエンス、はたまた生配信で参戦している全国のファン達の魂を支配していく……。
 続いて『インフルエンサー』である。炎の演出がその楽曲の熱さを物語っている。センターは生田絵梨花と齋藤飛鳥である。幾重にも束ねられたカラフルな薄いレースの様なロングドレスである。百戦錬磨の魅力に紅く輝くエメラルドのような渾身の一曲であった。
 『シンクロニシティ』が始まる。センターは三期生の梅澤美波であり、一期生の生田絵梨花である。『インフルエンサー』の赤とは対照的に、青や紫の冴えた照明で踊り舞う天使たち……。
 『シング・アウト』の楽曲がかかり、齋藤飛鳥のトークで「この曲は、卒業生を送り出す楽曲でもあり、今日こそは、皆さん、どうかクラップして下さい!」と熱く語られた。
 楽曲が始まると、世界中に届くのではないかと思えるほどの素晴らしい歌詞と、洗練された心地の良いメロディにのせて、乃木坂46達は歌い踊った。齋藤飛鳥のソロダンスは人の心を掴んで放さない。

『いくちゃんは、ジコチューで、ジャイアンだけど、みんなそんないくちゃんが好きよ!』

『ありがと~』

 齋藤飛鳥と生田絵梨花抱きしめ合う。『ジコチューで行こう!』が歌われる。曲の終わりに親指を立てた齋藤飛鳥は、笑った。
 生田絵梨花の激しい煽りで、『ガールズルール』が始まった。センターは生田絵梨花である。もはや伝説級のこの青春楽曲に、駅前木葉は果てしない大感動の涙を流した……。
 生田絵梨花のセンター曲『何度目の青空か』が始まる。その人生の忠告のような達観した美しい表現の歌詞とダンスと楽曲と乃木坂46の汗が交じり合って、この楽曲は完成した。

「この曲が一番好きだった時期もあったなぁ……」夕は懐かしさを呟いた。
「MVの、学校のマドンナがいくちゃんだったっけなあ」磯野は懐かしさを呟いた。
「毎日聴いてるけど、やっぱりいいな」稲見はそれを実感する。
「好きでいさせてほしいでござる……小生はこれからも、この曲を、いくちゃんを忘れぬでござるよ……」あたるは強く眼を瞑って囁いた。
「いくちゃんさんの、初のセンター表題曲……。最強だわ」駅前は乃木坂46から眼を反らせずに呟いた。

 生田絵梨花のトークが始まる。次の曲が、一日目最後となる曲だと告げられた。それは最初に披露した『最後のタイト・ハグ』だと。フル・サイズで披露するのは、おそらく今日と明日で最後になるだろうと。
 生田絵梨花の笑顔から告げられる……。

『最後のタイト・ハグ』

楽曲が始まった。曲中に生田絵梨花を秋元真夏が抱きしめるシーンでは、秋元真夏は泣いていた……。
ありがとうございました――と、帰っていく乃木坂46を、黄色い光が包み込んでいた。
すぐに、スティック・バルーンのアンコールが開始される。
それは、徐々に加速していく……。
会場中のオーディエンスが、ファンを代表するように、スティック・バルーンを打ち鳴らしてくれている。
紫色の照明一色の会場に、黄色いサイリュウムの星々……。

VTRが始まった。生田絵梨花がソロ曲についてを語っている。毎回チャレンジする感じだと。凄い緊張感があると。「ちゃんと伝えられるように歌えるかな」と。
十年間を歩んできた時と、これからここを出て歩んでいくんだという覚悟、それが今回のソロ曲であると。
生田絵梨花のソロ曲『歳月の轍』が歌われる……。
十年間を、粉雪で振り続けた、美しい雪の結晶のような一曲。白いスモークが雪の絨毯を演出している。ライティングは降りしきる雪……。
歌唱を終えた生田絵梨花は、思いの内を語る。自分自身の選択を。支えてもらっての生田絵梨花だし、何かに皆さんが挫けた時は、支えになりたいと。
明日が、皆さんと立てるラストのステージだと思うんですけど、本当に、十年間、ありがとうございます――と。
生田絵梨花の歌唱から『指望遠鏡』が始まる。会場中をステージにして、大きく広がる乃木坂46を見つめながら、姫野あたるはあの頃、自分を強くひっぱってくれた乃木坂46を思い出す。
そのオリジナルメンバー、生田絵梨花のことを想う……。
オーディエンスに手を振る乃木坂46。
『転がった鐘を鳴らせ』が生田絵梨花の煽りから始まる。会場中をステージにして、乃木坂46は大きく手を振りながら、笑顔でこれを歌った。

風秋夕は、止まってくれない涙のなか、小さく笑みを浮かべた。
 稲見瓶はユニゾンでこれを歌う。涙したままで。
 磯野波平も乃木坂46を見つめたままで、小さくユニゾンでこれを歌っていた。
 姫野あたるは、『歳月の轍』からまだ涙が止まっていなかった。
 駅前木葉は、頬の涙を拭いて、笑顔で乃木坂46を見つめる。

 秋元真夏のMCで生田絵梨花との最後のトークが行われる。
 生田絵梨花が言う。

『名残惜しいのですけど、十年間、ライブで歌い続けてきた曲を……え』

 齋藤飛鳥が生田絵梨花のサイリュウムを奪った。伝説の、生田絵梨花と久保史緒里とのやり取りの再現であった。
 それを生田絵梨花がいい声で丁寧に説明し、齋藤飛鳥に『そんないい声で説明しなくていいから』と突っ込まれ、笑いを生んでいた。
 『乃木坂の詩』が歌われる。

『本日は本当に、ありがとうございましたーー』