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例えば、こんなメロディをポケットに響かせて。

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 会場と一体になって『乃木坂の詩』を歌う乃木坂46……。
 最後をまとめる秋元真夏と生田絵梨花は、笑顔であった。
 皆さん本日は、ありがとうございました――と、深々と頭を下げる乃木坂46……。
 ありがとうございましたと、生田絵梨花がもう一度しめくくった。
 生田絵梨花の晴れ舞台は、鮮やかでいて、悲しみと比例するような、満開の笑顔の咲き乱れる卒業式であった。

       12

 乃木坂46生田絵梨花卒業ライブ二日目、当日。二千二十一年十二月十五日である。昨日の見事であった生田絵梨花のライブも卒業ライブであったが、今日の卒業ライブが、正真正銘の生田絵梨花の乃木坂46としての最後のコンサートである。
 〈リリィ・アース〉地下六階の〈映写室〉には、すでに昨日とは異なる生田絵梨花グッズに身を包んだ乃木坂46ファン同盟が集っていた。
 両手には黄色と黄色のサイリュウム。
 高い天井の照明には、すでに灯りはともっておらず、巨大スクリーンからの光で場内が満ちていた。今は乃木坂46の楽曲のインストや、乃木坂46の様々なCMが流されていた。

「見守ってくれたら、嬉しいですってさ。いくちゃんから」夕は、稲見に小さく微笑んだ。「モバメでさ」
「そういえば、与田ちゃんやさくちゃんも、思い出を作りたいとか、焼き付けますとか、はりきってたよ」稲見は微笑んだ。「乃木坂と乃木坂のスタッフさん達は、ライブをこなすごとに、必ず前のライブを上回った凄いライブにしてくる」
「ああ、だな!」磯野はにやけた。「今んとこ、昨日のライブが歴代一位ってぐらいに凄かったよなあ? いくちゃんがアイシーで出てきたときゃ、俺ぁもうびっくりだぜ!」
「今日のライブもきっと凄い興奮のライブになるはずだ」稲見は巨大スクリーンを見つめた。「見逃さないでいこう」
「本当にそうでござる……。思い出に深く刻み込まれるライブは、多々あるでござるが、真新しいライブがやはり、一番興奮するんでござる」あたるは深く頷いた。「これは凄いことでござる。どんな作品でも、最初が一番面白いと言われる事が多い中、たま~に、なお面白く、進化していく作品があるでござるのとおんなじでござる。これは、本当に凄いことでござる……」
「今を全力で駆け抜けているからです」駅前は、微笑んでいた。「私も研究者として、大変勉強になります。日々の成果ですから、これは」
「追いかける意味、あるだろ? あるよな!」夕は嬉しそうに微笑んだ。「さあ、いくちゃんのラストステージだ。全国のヲタ達に負けないように、俺達は俺達のやり方で見届けようぜ!」
「了解」
「おっしゃあ!」
「わかったでござる!」
「任せて下さい」

 影ナレが始まった……。『え』の遠藤さくら、『り』の佐藤璃果、『か』の掛橋沙耶香の三人であった。一言一言に、スティック・バルーンの拍手が巻き起こる。
 会場が紫色の照明と、黄色いサイリュウムで埋め尽くされている。照明が消されると、VTRが流れ始めた。
 まだ幼き日の生田絵梨花が映し出される……。日々のレッスンなどを気を抜かずに頑張ると必死にコメントしている姿であった。

 あの日の気持ちを、持ち続けた10年間。

 オーバーチャーが流れる――。
 ステージに映し出される大きな影。再び拍手が巻き起こる。それは白いドレスを身に纏った生田絵梨花の姿である。白いピアノに座り、星空の中で『あなたのために弾きたい』を弾き語る……。
 生田絵梨花はステージ上で、声のない挨拶をする。すると『何度目の青空か』が始まり、乃木坂46がステージに集合した。バックステージには青空が広がり、乃木坂46の笑顔が晴れ渡る。
 微笑みながら、歌いながら、涙ぐむ生田絵梨花……。
 『制服のマネキン』が始まる。センターは生田絵梨花である。フロントは齋藤飛鳥、生田絵梨花、星野みなみの三人であった。レーザー光線が交差する。
 生田絵梨花の煽りで『おいでシャンプー』が始まる。センターは生田絵梨花である。横一列に並んでステップを踏む乃木坂46。それから会場中に広がり、オーディエンスに歌う乃木坂46。
 『会いたかったかもしれない』が始まる。一度集まったセンターステージから、また会場中へとオーディエンスに手を振りながら広がりを見せる乃木坂46。やがてメインステージへと舞い戻り、ラストまで踊り、歌いきった。
 すかさずに『ぐるぐるカーテン』が始まり、バックスクリーンに懐かしいあの頃の『ぐるぐるカーテン』が映し出される。息の合った『ぐるぐるカーテン』であった。
 生田絵梨花の挨拶から、秋元真夏のMCでトークが始まる。
 二期生の北野日奈子は、憧れの先輩は生田絵梨花だと初告白した。生田さんから、最近になって、いくちゃんと呼び始めた事も赤裸々に語ってくれた。
 よく一緒にいた、飛鳥ちゃんどうですか、と秋元真夏がふると、いないない、と齋藤飛鳥が返し、ケンカしないで、と生田絵梨花が割って入り、してないしてない、あなたのためにケンカしてない、と齋藤飛鳥が笑いを起こした。
 VTRが始まり、生田絵梨花は自分についてを語る。後輩にとって、壁を作りやすい、緊張を与えやすい先輩であったなと語った。だが、後輩たちはすきを伝えてくれると。そして徐々に絡みが増えていと。った
 二期生は、不屈の精神を感じると。
 三期生は、甘えん坊に感じると。
 四期生は、凄く謙虚だと。
 後輩だけども、憧れみたいな感覚がある。いい曲、混ざりたいと思うと……。
 四期生のモンスター楽曲『アイシー』が生田絵梨花のセンターで始まった。

「いやヤバすぎる! こーれはヤバすぎるってえ!」夕は眼を喜ばせて、大興奮で叫んだ。
「これも目玉の一つだよね」稲見は高揚しながら言った。「凄いな」
「いくちゃんがアイシー踊ってんぞ!」磯野は興奮して鼻息を荒くする。「可愛すぎんだろうが!」
「おー、幸せでござる!」あたるは満面の笑みで言った。
「凄い、忘れませんっ絶対に!」駅前は叫んだ。

 三期生楽曲の『三番目の風』が始まると、オオオという短い歓声が鳴った。生田絵梨花のセンターである。間奏ではそれぞれのメンバーに由縁のあるパフォーマンスを一人で全てこなしていく生田絵梨花。与田祐希とのパートでは、まさかの生田絵梨花から与田祐希へのキスが飛び出し、自然発生の歓声を生んだ。
 生田絵梨花はステージの通路を歩いて行く。二期生楽曲の『アナスターシャ』がその美しい旋律を奏で始める……。
 二期生達と手を繋ぎ、寄り添い合い、歌い、踊るその姿は、完成された美の象徴といえるだろう。
 一期生楽曲の『白い雲に乗って』を生田絵梨花から歌い始める……。階段の上の段にいたメンバー達も、やがて生田絵梨花の隣へ降り、肩を並べて、笑顔でこれを歌った。
 一期生のメンバーで星形を作り、始まる『あらかじめ語られるロマンス』。永久(とわ)の名曲に身体中が震え始める姫野あたる……。
 この輝くライブ会場の星々というサイリュウムの一つに、僕も参加しているつもりだよ、いくちゃん。君に会いに来たんだ。
 運命であったのかもしれないと、最近は思い始めている。
 君達と、この時代に出逢ったことを。