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例えば、こんなメロディをポケットに響かせて。

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 〈BARザカー〉の店内はミラーボールの煌びやかな木漏れ日のような光に包まれ、各所ではレーザー光線やフラッシュライトが明滅している。店内反面の壁には巨大な鏡が埋め込まれており、屋内が二倍に見える。
 内側にカーブした半円型のカウンター席が在り、それが東側、西側、北側に設置されている。出入口からすぐの場所には幾つかのテーブル席が在った。
「おっ邪魔しま~す!」
生田絵梨花は〈BARザカー〉の出入り口の扉を開いた。店内には洋風のクリスマスソングが流れていた。
店内の装飾もクリスマス一色である。発光する雪だるまやクリスマスツリー、やけにリアルなサンタクロースが店内各所で楽しむ皆を見守っていた。
「あー! 楽しんでるぅ? いくちゃぁん!」桜井玲香は半眼でにんまりと微笑み、絵梨花を出迎えた。「ちょと、ここ、ここ来なよここ……」
「えー、はぁい」絵梨花は一番手前のテーブル席に座った。「玲香、もうできちゃってない?」
「こんちわ」齋藤飛鳥も絵梨花の隣に腰を下ろした。
「そうなのよ」若月佑美は困り顔で絵梨花に苦笑した。「ずっと呑んでるの、今日。あの、私の結婚記念とか言って」
「あーおめでとう~!」絵梨花は思い出したかのように佑美に微笑んだ。
「ああ、おめでと」飛鳥も佑美に微笑む。
「ありがと!」佑美は微笑み返した。
「飛鳥~!」井上小百合はにっこりと飛鳥に微笑んだ。「久しぶり~!」
「久しぶり」飛鳥もにこりと微笑む。
「玲香、あんた今日帰るんでしょう?」佑美は玲香に困った顔をする。「いくちゃんにからんでないで、ちょっと、玲香、聞いてんの?」
「あっはっは、超酔ってる」絵梨花は笑う。
「あ、じゃあはい」何やらをしていた生駒里奈は、絵梨花と飛鳥を見つめた。「いくちゃんと飛鳥ちゃん、何吞む?」
「あー、じゃあビールで」絵梨花はそう言った。
「じゃわても」飛鳥も小さな顔の横に手の平を浮かべて言った。
「へいイーサン! ビールにちょう!」里奈は叫んだ。
「飛鳥、久しぶり。いくちゃん、卒業、おめでと~」斉藤優里は微笑む。ほんのりと頬が赤らんでいた。
「おー、ありがと~」絵梨花は微笑み返す。
「飛鳥、会うのいつ以来?」伊藤万理華は飛鳥の顔をまじまじと見つめる。
「いつ以来だろう……」飛鳥も万理華の顔をまじまじと見返した。「でもあれだよね?」
「い~くちゃん」白石麻衣は絵梨花に微笑んだ。「卒業だね! ついに!」
「卒業だよ~」絵梨花は微笑む。
「ついに乃木坂の番長も卒業か~」松村沙友理はチキンを手に取りながら呟いた。
「いやいや、番長ではないから」絵梨花は薄く笑みを浮かべて言った。「ジャイアンではあるけど、番長ではないから」
「同じじゃない?」飛鳥はくすっと笑った。
「いやいや、違う違う」絵梨花は小さく首を振った。
「まいまいじゃん……」飛鳥は少しだけにやけて、大きな瞳をぱちくりとする。
「あー飛鳥ー、久しぶりだよね」深川麻衣は屈託なく微笑んだ。「乃木坂をひっぱってってくれて、ありがとう」
「いやいや……」
「飛鳥がんばってるよ」絵梨花は飛鳥の肩をぽんと触った。「飛鳥に、託すから。これからの乃木坂を」
「なーに言ってんの」飛鳥はあしらう。
「でもそーだよね、いくちゃんが抜けて、完全に飛鳥がエースで乃木坂の看板なわけだよね?」白石麻衣はそう言ってから、アサヒ・スーパー・ドライを呑む。「っはあ、うーんビール吞んでるから、気持ちよくなってきちゃった」
「そうだよ、エースだよ」絵梨花は飛鳥を見つめる。「よろしくね、乃木坂を」
「はい?」飛鳥は表情を険しくする。「別に、みんなで頑張りますよ……」
「生駒ちゃんから始まったんだよねぇ……」優里は懐かしそうに呟いた。
「私は、あれだから、暫定センターみたいな、あれだから」里奈は食べながら言った。
「よく言うよ」飛鳥は言う。「何回センターやったの、あなた」
 生駒里奈は微笑み、ぺこぺこした。
「最後のタイト・ハグ、いい曲やねんな」沙友理は絵梨花に言った。「あれ感動するわぁ」
「私も、時々泣きながら歌ってるから」絵梨花は苦笑した。
「真夏と抱き合うシーンがいいのよ」白石麻衣はそう言ってから、メンバーの顔を確認していく。「あれ? 真夏は?」
「真夏はあれ、向こうの仕切ってる」絵梨花は背中側を親指で指差して言った。
「はい。来たよ」里奈はビールグラスを〈レストラン・エレベーター〉から取り出す。
 生駒里奈は生田絵梨花と齋藤飛鳥に、大きめのビールグラスを配った。
「まいまい、吞んでる?」絵梨花は強気の笑みで深川麻衣の顔を覗き込むようにして言った。「呑まなきゃだよ、今日は」
「うん~吞んでるよ~」深川麻衣は聖母のように微笑んだ。「あ、飛鳥がもっと吞みたいって」
「言ってないだろ」飛鳥は咄嗟に反応した。「呑んどるわい」
「かんぱーい!」玲香は体勢をよじれさせて叫んだ。「メリ~クリスマ~ス!」
「メリクリ」里奈は落ち着いて言った。
「玲香、ちょと、呑みすぎだよ」佑美は困った顔で玲香のビールグラスを取り上げようとする。玲香はそれをよけていた。
「あー飛鳥ぁ、今日夕君たちって、どうしたの?」白石麻衣は不思議そうな顔で飛鳥に言った。「いなくなぁい?」
「あー、ね。いない、ね」飛鳥は呟く。
「あれちゃうん?」沙友理は食べながら言う。「後輩のとこで騒いでんのとちゃう?」
「あー」飛鳥はそう呟きながら、席を立ち上がった絵梨花を見上げる。
 生田絵梨花は、ビールのグラスを手に持ちながら、北側のカウンター席に集まっている二期生のところに顔を出した。
「あーいくちゃん」新内眞衣は最初に声を上げた。「来た来た、噂をすれば」
「あっは、まいちゅん顔赤っ」絵梨花は吹き出して笑った。
「そ、私すぐ半分ぐらいで顔赤くなっちゃうんだよね」新内眞衣は苦笑した。
「いくちゃーん」堀未央奈は絵梨花に抱きついた。「卒業おめでと~う」
「ありがと~う」絵梨花も抱きしめ返す。
「今年、いっぱい?」寺田蘭世は絵梨花に言った。
「そ!」立ったままで絵梨花は頷いた。「紅白まで!」
「改めて卒業おめでとうございます」鈴木絢音は清楚に微笑んで挨拶をした。
「ありがと~今日何回言われるの、卒業おめでとうって」絵梨花は笑った。
「いくちゃん、にひ」北野日奈子は絵梨花に振り返って、無邪気な笑みを浮かべた。「卒業おめでと!」
「きいちゃんに言われる日が来るとはね」
「どうゆ意味! それ」日奈子は笑う。
「どういう意味だろう。ふと、自然に出てきた」絵梨花も笑った。
「いくさん、卒業おめでとうございま~す」山崎怜奈は後ろを振り返って絵梨花に微笑んだ。
「ざきさん、ありがと~」絵梨花は移動する。「ちょと、座ろうかな」
「座って~」未央奈は言った。
「いくちゃん」渡辺みり愛はにんまりと笑った。「おめでと」
「みり愛~」絵梨花はみり愛の右隣りに腰を下ろした。「ありがと~。みり愛ちゃん、何呑んでるの?」
「カクテル」
 その時、〈BARザカー〉に設置してある十七台の大型テレビの画面が映り替わり、店内の音楽のボリュームが極端に弱められた。
 テレビにはCMふうの映像が大ボリュームで流されている。