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例えば、こんなメロディをポケットに響かせて。

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「まいやんのは、シライシマイ、だよ」夕は桃子に優しく微笑む。「呑んでみるといいよ。美味しいから」
「てか、イーサン、今の一部始終きいててくれた?」史緒里は宙に話しかける。
「無理でしょう」向井葉月は言う。「いくらなんでも」
 イーサンは注文を繰り返した。
「ええ!」葉月は驚く。
「すっご」伊藤理々杏も驚いた。
「そうなのよ、きいてるのよちゃんと」史緒里も少しだけ驚いてから、真顔に戻って宙に言う。「じゃあイーサン、それをお願いします」
「麗乃殿は、成人したら、何を呑みたいでござるか?」あたるは麗乃に微笑んだ。
「麗乃ちゃん二十歳だぞ」夕は呟く。
「なんと!」あたるは驚く。「麗乃殿は学生のまんまでイメージが固まってるでござるのに!」
「お酒、あんまり、興味ない」麗乃は苦笑する。
「そうでござるか……。理々杏殿は?」あたるは理々杏を見る。「成人したら、何を呑みたいでござるか?」
「成人してるよ」理々杏は笑った。
「なんと! 二十歳でござったか!」
「ううん十九歳」理々杏は言う。「十八で成人になったんだよ。僕まだ十九歳だけど、一応成人だから、これでも」
「じゃあ、呑めるでござるなあ!」あたるは顔を喜ばせる。
「お酒は二十歳になってから」理々杏は説得力のある表情で、強調的に言った。
「おお、そうでござったな」あたるは苦笑する。「それは変わらないんでござるな。たまちゃん殿は、まだ二十歳じゃないでござろう?」
「珠美も二十歳だよ」阪口珠美は可愛らしくにやけて言った。
「なーんとー!」あたるは絶叫する。
「うっさいわ!」飛鳥はあたるに顔をしかめて叱った。「さっきっから」
「はっはっは」祐希は可笑しそうに笑った。「怒られてる」
「まあまあ、イヴだから」絵梨花は飛鳥に微笑んだ。
「イヴですね~」美月はうっとりと囁いた。
「ゆうき誕生日かクリスマスに、ローラースケート届いたことある」祐希はけらっと笑って言った。
「え、縦に四本並んでるやつ? それとも」葉月は祐希に言う。「二本、二本のやつ?」
「どっちも届いた」祐希は微笑む。「あ順番にね、違う時に。それ、ただのジーパンがダメージジーンズになるまでずっとやってた。傷だらけになりながら」
「与田ちゃんっぽい~な」絵梨花は楽しそうに呟いた。
「サンタクロースって昔は緑色の服着てたり、小人だったり、ひげがなかったり、イメージがバラバラだったの知ってる?」夕は祐希を一瞥してから、皆に話しかける。「赤い服を着て、白い長いひげをはやしてるイメージが根付いたのは、千九百三十一年のコカ・コーラのクリスマス・キャンペーンがほったんなんだ」
「最初っからああなのかと思った……」祐希は視線を泳がせて呟いた。
「画家のㇵッドン・サンドブロムって人が、コカ・コーラ社のコーポレートカラーの赤い衣装をサンタクロースに着させて、白いあごひげをはやした陽気なサンタを描いたのが始まりなんだよ」
「そーいえば波平サンタいたじゃん今日、しょっぱなのニュース放送で」絵梨花は夕に微笑んで言う。「どこ行ったの? あんた達が一緒じゃないってのが、珍しいっていうか、不気味」
「波平もどこいるかわかんないんだ」夕は絵梨花を見て言う。「イナッチか駅前さんが一緒だと助かるんだけど。ほら、野生だから」
 それから洋風のクリスマス・ソングが一曲終わった頃になって、注文していた新しいメニューが〈レストラン・エレベーター〉に届いた。
 それを久保史緒里と風秋夕と姫野あたるが率先して皆に配った。
「俺さ、やっぱり何度目の青空か、好きなんだよな」夕はそう言ってから、喉の奥にラム・コークを流し込んだ。「あの時、いくちゃんが乃木坂に帰ってきてくれるとは信じてたんだけど、それが、ほんとに帰ってきてくれて…、センターに選ばれて。宿命だと思った」
「あの時ね。学業があってね」絵梨花は相槌を打つ。
「本当に空にみたいな透き通った曲だよ。俺は自分が曲がりそうになった時に聴く。特別な曲なんだ」夕は絵梨花に微笑み、飛鳥にウィンクする。
「なんのウィンクだよ」
「あはは」絵梨花は笑う。
「飛鳥ちゃんと一緒にいる時の俺、全部が、飛鳥ちゃんを好きな俺だから。そりゃたまに表現するさ」夕はけけらと笑った。酔いが回ってきた様子であった。
「久保ちゃん何でそんなに可愛いんでござるか~?」あたるは顔を赤らめて、史緒里を切なそうに見つめた。「一瞬の表情が、せつない時、儚い時、あるでござるよ~……。小生はその度に、胸が高鳴るでござる。と思った矢先、次はにっこりと久保ちゃんが笑うでござるよ~。尊い! でござる!」
「あらー、ありがとうダーリン」史緒里はあたるを一瞥して微笑んだ。「見てくれてんのね」
「モバメでもそうでござるが、久保ちゃんは常に何か、自分の中の何かと戦い、葛藤しているでござる」あたるはラム・コークを呑んだ。「守ってあげたくなるんでござるよ。小生なんかがっ、守るとかっ、草!」
「ダーリン、酔ってる?」史緒里はあたるを見つめる。
「夕君、このユウ、強いね」美月はうっとりと美しく微笑んだ。「美味しい」
「それ俺がいつも吞んでるラム・コークっていうカクテル」夕は美月に微笑む。「言ったじゃん。好きになっても知らないよ、て」
「カクテルの話だよねえ?」絵梨花は飛鳥にきく。
「さあ」飛鳥はよそを向いたままで真顔で呟いた。
「風呂上がりって天国じゃね?」夕は会話が聞こえている皆を見回しながら言った。「でもさ、入るまでが地獄じゃん? めんっどくさくってさ」
「あー」絵梨花は納得する。
「でもさ、入った後のあの幸福感、さっぱりしてさ、ほっかほかしてさ。たまんないよね?」夕は無邪気に笑った。「俺二十分くらいで出ちゃうんだけど、みんなどれぐらい?」
「えー、どの、ぐらい、だろう」絵梨花は考え始める。
「ちょっと、長い、ぐらいかな」飛鳥は普通に答えた。
「ゆうき五分ぐらいで出る」祐希は楽しそうに笑った。
「五分?」という声が相次ぐ。
「頭がー洗って、身体がー洗って、……湯船に浸かっても、二分ぐらいしか浸かってらんないから」祐希は笑った。
「与田ちゃんって、不思議な人だね」夕はにっこりと祐希に微笑む。
「四十三度」祐希は付け足す。「熱いから、ずっといられない、はは」
「与田ちゃん酔っぱらってる?」絵梨花は祐希のグラスを見る。
「あ、コーヒーです」祐希は微笑み直す。「酔ってませんよ」
「そか。じゃ、飛鳥、そろそろ行くよ」絵梨花は飛鳥を見て言った。
「どこに?」飛鳥は上品な表情を驚かせる。
「地下二階の、いつもの場所」絵梨花は笑った。「大体そこにいんでしょ、四期」
「いいよ、行かなくて」飛鳥は立ち上がった絵梨花を見上げて言う。「行ってどうすんの……」
「挨拶だよ、挨拶」絵梨花は行く気満々で飛鳥の腕を引っ張る。「ほら、飛鳥ちゃん」
「えー……」飛鳥はしぶしぶと立ち上がる。
「行ってらっしゃーい」夕は笑顔で二人を見送る。
 生田絵梨花と齋藤飛鳥は、〈無人・レストラン〉一号店を後にした。

       15

 地下二階までエレベーターで降り、エントランスのメインフロアへと出ると、東側のラウンジで乃木坂46四期生達がクリスマス会を催していた。