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例えば、こんなメロディをポケットに響かせて。

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「お尻がひとつ、お尻がふたつ」磯野は指折り数え始める。
「やめろ~!」史緒里は苦笑して叫んだ。「よくないよくない! こーらー、ダーメでしょう! す~わって」
磯野波平は座る。「くそっ……、どうして俺は女子じゃねえんだ……」
「女子ならば一緒に入れるというのは、妄想です」駅前はきっぱりと言った。「緊張してとても一緒には入れませんよ」
「つうこたぁ、まいちゅんと入ってねえのかよ!」磯野は驚愕(きょうがく)する。
「はい」駅前はきっぱりと頷いた。
「後で、行ってみる?」美波は珠美と麗乃と史緒里に言った。「いっちょどんなもんか、見てこよっか」
「えだったらそのまま入ろうよ」珠美はにやけて言った。
「そうね~、入りましょ~」磯野は裏声で言った。
「どうにかして一緒に入りたいみたいだけど、犯罪だから、波平君」史緒里は磯野を座視で見つめた。「イナッチがそういう事言う? 言わないでしょう?」
「あいつはファンとしては軟弱だ」磯野は言い放つ。「純粋なファン心理としては、入浴のファンサがあっても喜ぶだけで、否定なんてしねえ!」
「そこはやめとけよ」麗乃は笑った。
「駅前さん、一緒に入ります?」美波は微笑んで、駅前を見つめる。
「い、いやぁ」駅前は、ぐにゃ、とあごをしゃくらせた。駅前木葉は精神が高揚すると、表情に異常をきたす事がある。「まいりまひたね、ふふ笑止!」
「駅前さんだったら、うん。大丈夫だけど」史緒里は美しい眼差しで駅前を一瞥して言った。「波平君はダメよ。おあずけ」
「おあずけって事は、いつかは!」磯野は騒ぐ。
「ないから!」史緒里は眼を瞑って強く主張した。「ハウス!」
「きゃいん、てか!」磯野は立ち上がる。「梅ぴょん見たくねえのかよ! 俺の筋肉がどうなってんのか!」
「見たくないっ」美波ははっきりと答えた。
「座れ」珠美は笑う。
「ちょっとお下品よぉ、波平君」史緒里は軽蔑(けいべつ)の眼で磯野を見る。
「じゃあ、お腹いっぱいになったし。かたずけてお風呂行こっか?」麗乃は笑顔で言った。
「れのちゃんの」
「黙れ波平!」美波は立ち上がって、磯野を上目遣いで見つめる。身長差の為、自然となる絵ずらであった。「おりこうさんにしないと、夕君に言っちゃうぞ?」
「あいつに言った、から、って…べ、べつに」磯野は、美波に見つめられて、かっと身体中が熱くなるのを感じた。「ちゅうしちゃうぞ~!」
「いやあ!」
「下品な言動は乃木坂のファンとしてふさわしくなくてよ!」駅前は立ち上がり、瞬間的なつっぱりで磯野を胸をどついていた。
「あー、ありがとう、駅前さん」美波はくたびれている。
「波平君って、病気?」史緒里はまじまじと、波平を上目遣いで見上げた。
「びょ、病気って、べ…別に、病気じゃ……」波平は顔をしかめて硬直する。史緒里に見つめられて身体が熱くなるのがわかった。「く~ぼた~~ん!」
「きゃあ!」
「下品な言動は乃木坂のファンにふん!」駅前は瞬間的に磯野をどついていた。
 磯野波平は床へと吹っ飛んだ。
「も~、なにい?」史緒里は驚いて呆れている。
「かたずけよっか?」美波は微笑んで言う。
「おっ風呂~」珠美は鼻歌を歌った。
「生きてる?」麗乃は磯野の方を気にしていた。
 駅前木葉は言う。「駅前木葉流奥義、一の型、キレイの魔球……」
 磯野波平は頭を抱えて絶句している。少し震えていた。
 一方、こちらでは。
「あー、飛鳥ちゃ~ん」絵梨花は後ろに微笑んだ。「来てたんだ?」
「本選んでた」飛鳥はそれから、ソファへと着席した。「皆さん、お揃いで」
「飛鳥ちゃん、今日も世界一綺麗だよ」夕はにこやかに飛鳥に言った。
「はいはい、あんがと」飛鳥は素っ気なく返す。
「あれえ、じゃあ私はあ?」絵梨花は夕の顔を覗き込んだ。
「もちろん、世界一美しいよ」夕はにっこりと微笑んだ。「で、お前はなんなのイナッチ。飛鳥ちゃんと二人っきりで歩いてきやがって……」
「この人ね、ついてくるの」飛鳥は稲見を一瞥した。
「追っかけ、だけに」稲見はピースサインを作った。無表情である。「追いかけてみました」
「何をしてるでござるか、イナッチ殿とあろうものが」あたるは稲見に溜息を吐いた。
「いやね、俺も本を選びに行ったんだよ。さすがに偶然とは言わないけどね、理由はそれだね」稲見は飛鳥の隣の席に着席した。
「なにしれっと隣に座っとんのじゃ!」夕は稲見に激怒する。「あいてるだろ! 違うソファに座れ馬鹿者ぉ!」
「まあまあ」稲見はそう言いながら、空いているソファへと移動した。「そう怒るなよ。俺もたまにはギャグ、というやつをやってみただけだ」
「無表情でやんな、本気にすんだろ!」
「夕殿、興奮しすぎでござるぞ」
「いくちゃん何書いてんの?」飛鳥は絵梨花を見つめる。
「ビビちゃん」絵梨花は真剣に、テーブルの上で模写(もしゃ)をしていた。「ビビちゃんのタイトハグ……。これ上手すぎて自分で描いたか疑われそう。私昔から言ってるけど、模写は得意なのよ」

       5

 二千二十一年十一月二十日、東京ドーム乃木坂46真夏の全国ツアー2021ファイナル!当日。ついに伝説に語り継がれるであろうこのライブの日が訪れた。
 地下六階の〈映写室〉に集った乃木坂46ファン同盟の五人は、それぞれの思いを胸に秘めながら、その開始の時刻を待つ……。
「始まるのか~……」夕は四人の顔を見て、笑った。
「間違いなく、伝説になるだろうね」稲見は高揚(こうよう)しているが、無表情であった。
「やべえな、緊張してきちった」磯野はトイレへと向かう。
「小生、全力で応援するでござるよ!」あたるは満面の笑みで言った。
「あ~、もう、とうとう東京ドームですか。時が経つのは、本当に早いわ」駅前は深々と呟いた。
 戻ってきた磯野波平は言う。「お前らも、出すもん出しとけよ。乃木坂もそうだろうから」
「お前、そうだけどさ」夕は嫌そうに、磯野を見る。「俺、お前嫌い」
「いやあ、でも確かに本番が始まったら、トイレへは行けぬでござるからな」あたるはトイレへと向かう。
「私も」駅前もトイレへと向かった。
「イナッチは?」夕は稲見にきいた。
「大丈夫。準備万端だよ」稲見はピースサインで答えた。
「俺も準備万端だ!」夕は言う。「さあ乃木坂のみんな、騒ごうぜ!」
「興奮して泣くなよ、ふん。まだはえーからな、今日は」磯野はにやけながら言った。

 やがて時計の針が動き、その時がきた。
 影ナレは高山一実と生田絵梨花と和田まあやであった。残されたチューリップである。東京ドームのライティングが紫一色に染まっている。影ナレでは笑いが起こっていた。

「かずみ~~ん、いくちゃ~~ん、まあやちゃ~~ん!」磯野は泣き叫ぶ。
「いや泣くのはええよ!」夕は磯野に驚いた。
「どうなる事やら」稲見は微笑んだ。
「いや~、面白いでござるなあ、乃木坂の一期は」あたるは微笑む。
「影ナレから贅沢な時間だわ」駅前は感激した。

東京ドームが暗闇に包まれると、歓声が上がった。ナレーションが語り、BTRが巨大なスクリーンに映し出される。