あなたを好きで良かった
翌日、私は学校を休んだ。休む、とりっちゃんにメールをしてベッドに仰向けに寝転がる。目が厚ぼったい感じがする。前日思いっきり泣いた上に唯ちゃんから届いたメールが気になって一睡も出来なかった。その結果酷い顔をしていたからだ。
「折角唯ちゃんがメールくれたのに……」
話って何だろう、気になってしょうがなかった。
その時携帯電話が鳴る。このメロディーはメールではなくて電話のものだ。液晶画面には〈田井中 律〉と表示されている。
「もしもし?」
「あ、出た出た。ムギ、大丈夫か?」
「うん……大丈夫よ。目の下にクマができちゃって皆に会えるような顔じゃないの」
そうか、とりっちゃんは安心した様に言った。
「ありがとう。ひょっとして私が心配で電話してきたの?」
「ん、あぁそれもあるけど。唯がな」
唯ちゃんがどうかしたのだろう?
「そういえば唯ちゃんから昨日メールがあったの。今日話があるって内容だったんだけど、唯ちゃんには謝らないと」
「あー、やっぱりムギ絡みか」
「どういうこと? 唯ちゃんは?」
「いないんだよ、唯が」
「え、行方不明ってこと? いつから? 今朝?」
唯ちゃんがいなくなった。そう聞かされ急に心配になってくる。
「いや、朝はいたんだよ。んでムギはって聞かれて休みって答えたらいなくなってさ。ひょっとしたらそっちに行ったんじゃないかって」
そう言われて私は窓から外を覗いた。すると門の所からずっとこっちを眺めている唯ちゃんと目があう。
「もしもし、唯ちゃんウチの前にいる! とりあえず切るね」
そして私はカーディガンを羽織ると唯ちゃんのもとに駆けていった。
「唯ちゃん!」
「ムギちゃん、おはよー」
一瞬私の顔を見てギョッとした唯ちゃんだったがすぐにいつもの笑顔になる。そういえば私は今酷い顔をしているんだった。
「おはよーじゃないよ。学校抜け出してどうしたの? りっちゃん心配してたよ?」
「えへへー、ムギちゃんとお話したくて来ちゃった♪」
「もう、駄目じゃない学校サボっちゃ。話なら明日にでも出来たでしょ」
唯ちゃんを叱る。でも嬉しかった、私の為にそこまでしてくれるなんて。
「とりあえず私の部屋に行きましょう。お茶、入れるね」
「わー、ありがとムギちゃん」
作品名:あなたを好きで良かった 作家名:大場雪尋