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再見 五 おまけの詰め合わせ〜

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その三『頑張れ黎綱2』


       落葉掛けっこの後

 それは、長蘇と飛流、藺晨、三人で、藺晨がよく、剣舞の修練をする大岩の上で、落葉を掛け合って遊んだ日の午後、、、。


 
 部屋に戻った、長蘇と飛流。
「何をしてこんなにゴミまみれに、、、。」
 二人の姿を見て、黎綱が、呆気に取られていた。
『いや、、これでも川で洗ってきたのだが、、。
 衣は脱いで、綺麗に落葉を払ってきたし。
 な?、飛流、、冷たいの我慢して、川に入って洗ったんだよな?。』
 飛流は隣で、云と頷いた。
 長蘇の髪は白いので、落葉が絡まっているのがよく目立つ。しかも、長蘇は晒し木綿の胴衣、落葉を払ったとは言え、泥汚れを更に引き立てていた。
「髪に枯葉が絡みまくって、余計に酷くなってますよ〜〜。枯葉を落とさないで、そのまま川に入ったんでしょ!。駄目ですよ〜〜。濡れた髪に絡まった、濡れた落葉なんて、どうやって取るんですか〜。」
 黎綱は泣きそうだった。
『あ”?、、、そんなに大変なのか?。』
「着替えて、こちらに座ってください。私が絡んだ落葉を取りますから。
 私が毎朝どれだけ頑張って宗主の髪を整えていると、ブツブツブツブツ、、、、。」
 黎綱が一人言を言い始めた。
『、、飛流、、黎綱の言うことを聞こう、、な、、。飛流の衣は無いから、私のを貸してやるから、、。、、飛流、おいで。』
 見れば飛流の髪にも、落葉が絡まっていた。
 川で頭や体を洗い、体は綺麗になったが、払ったとは言え、胴衣は確かに汚れていた。
 胴衣や下履を替えて、衝立から出てくると、黎綱が髪を拭く布や、髪を整える櫛を用意して待っていた。
「さ、宗主、こちらへ!。」
 怒り気味の黎綱に気圧されて、飛流を引き連れて、言われる通りに、黎綱の前に敷かれた、座布団に背中を向けて座った。
「何をしたらこんな事になるんです?!、、、あああっ、、、、髪に絡まって、、落葉が粉々に、、。」
 黎綱は長蘇の髪を拭きながら、怒り心頭だ。
 それもそうだろう。
 この頃は髪を下ろして、流している長蘇。
 長蘇は、以外に無頓着なものだから、黎綱がやるしか無かった。
 なるべく乱れぬように、パサつかぬように、、しっとり流れるような柔らかな見目になるような、そんな上質の髪は、一朝一夕では成せないのだ。
 髪に良い油を、黎綱自ら追求したり、地肌が生き生きとする様に、良い髪になる様、念じながら長蘇の頭皮を揉んだりしていた。
 黎綱の、並々ならぬ日々の努力の賜物なのだ。
 今朝は飛び切り、綺麗な状態に仕上がった。
 髪を梳く黎綱の手に、しっとりと馴染む様でいて、張りがあり、髪の一筋一筋が、艶やかに流れていた。
 黒々とした長蘇の眼子に良く合って、神秘性を引き出し、姿の麗しさに拍車をかけた。
 今朝、髪を整えた長蘇を見て、黎綱は、、
「、、、宗主、、ウルッ、、。」
 そう、涙が零れそうになった程、、。

 なのにそのすぐ後に、、、長蘇ときたら、全てを台無しにしたのだ。

「、、あぁぁぁ、、こんな所にまで、枯葉が、、
 ぁぁぁ、、、何だこれ?、、虫???、、臭っ、、。」
 黎綱は文句言いまくりで、髪に付いたゴミを、眉間に皺を寄せて、一つ一つ取り除いていた。
 その様子を、飛流はポカンと見ていた。長蘇が黎綱に怒られているのだけは、分かっている様子だ。
『、、飛流、飛流、、おいで。』
 飛流を手招きする。
 長蘇は耳元で、黎綱の文句を聞いているだけでは、気が滅入って来そうだった。
 自分も飛流の髪のゴミを取って、暇を潰そうと思ったのだ。
 長蘇は飛流を、自分の前に座らせた。
 小さな体に、ぶかぶかの長蘇の胴衣。
 更に可愛らしく見えた。
 
 結ったままの飛流の髪は、まだ濡れていて雫が垂れている。
──私は、髪を拭け、とはいったが、一人では難しかったのだろうな。ふふふ、、。
 一生懸命に、私の真似をして、可愛らしかった。頑張って拭いていたのだが、拭き切れる筈も無いな。(私自身、拭き切れるてないのを、棚上げにしているのは、置いといて、、と。)
 素直に言う事を聞く飛流、、
、、、、、、かわっ、、。──
 ある程度、結わえた飛流の尻尾を拭き取ると、髪を解いた。
 ぱらりと髪が飛流の小さな肩に掛かる。
 頭には殆ど無かったが、毛先の方に沢山着いていた。
 長蘇は、飛流の毛先の、濡れて柔らかくなった落葉を、丁寧に取り除いていた。
──確かにこれは取りにくいな、、強く触ると、粉々になるのもあるし、、。
 、、、黎綱の怒りも最もだ。──
 毛先を触られているのに、擽ったいのか、飛流がモジモジし始める。
 そして後ろを振り向いて、長蘇の顔をみる。
 何だか嬉しそうな飛流。
『こら飛流、じっとしてろ、、。』
 そう言って、飛流の頭を前を向くように戻した。
 嬉しそうな飛流を見ていて、長蘇の心もほんわかと温まった。
「宗主もじっとしててくださいよ。」
 黎綱も長蘇の頭を、自分の前に戻した。
 三人仲良く並んで、落葉を取ったり取られたり、、。




 するとそこへ、いきなり藺晨が入ってきた。

「おい!、長蘇、飛流!、温泉に行くぞ!。」


『温泉!』
「温泉!!」
「おん、、??。」

 長蘇と黎綱の二人は喜んでいるが、不思議顔の飛流。
「琅琊閣の温泉が、あの山の向こうにあるのだ。良い泉質だぞ。美肌になる。
 、、、、あ?、、何してるんだ?、長蘇?。」
 付かさず黎綱が恨み節。
「櫛で落葉を払ってから、水浴びをしてくだされば良かったのに、どうやらそのまま水に入った様で、、、髪に絡まった落葉を、取っていたのですよ。」
「あぁ?、そうなのか?、、。普通、櫛で梳いてから入るだろ?。長蘇はそんな事も知らんのか?。」
『、、、悪かったな、知らないよ。』
 藺晨はチラリと長蘇を見る。
「まぁ良い、取れたのだろ?。さぁ、行こう、温泉!。」
『良し、行こう。』
 長蘇が飛流の顔を見ると、温泉が何か知らぬ様だったが、長蘇と一緒で嬉しそうだ。
 黎綱がいそいそと動き出した。
「あっ、、すぐ着替えの用意をします。若閣主、少々お待ち下さい。」
「準備なぞ、必要無いぞ、黎綱。
 温泉の建屋に、私の衣が幾らか置いてある。長蘇にはそれを貸してやる。」
『は??、私にお前の刺繍入の衣を着ろと?。やめてくれ、着れるか!!。』
「何を言っている?。長蘇、もっと豪華な刺繍を施した衣を着ていただろ?。しかも、良く似合って、、、。アレから見たら、私の衣なんか、大人しい大人しい。
 それとも『アレ』を持って行くか?。」
『ぁっ、、、、えーと、、、、、モゴ。』
 口篭る長蘇。
「、、、それにしても長蘇、」
 藺晨は、長蘇の胴着を着た飛流を見て、目を細めている。
 長蘇の晒し木綿の胴衣なので、飛流には袖が長く、たくし上げていて、無造作にたくし上げられた袖から、飛流の細く小さな手が、可愛らしく出ていた。
 珍しく肩に垂らされた黒髪は、長蘇が落葉を取ったので、少々ボサボサ、、。だが、それがかえって何とも可愛らしく、、、。
 「、、、、、お前、、何て良い仕事を、、。」
『だろ?、ふふふ、、。』