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今もそっとポケットの中で・・・。

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「それに……、このままの気持ちで今まいちゅんに、何を言えるでござろうか……」あたるは俯きながら、言葉を見つける。「たぶん、逆に、励まされてしまうでござるよ……。小生は、少しでも……、あの人の支えになりたい」
「同感だね」稲見は頷いた。
「そっかあ」夏男ははにかんだ。「愛されてる人なんだねぇ、まいちゅんって人は」
「みんながまいちゅんを好きでござる」あたるは、涙を浮かべてにっこりと微笑んだ。
「モデルさんで、美しく、スタイルがいいですよ」稲見は夏男に言う。「そんな長所さえも、彼女の前では笑いに変わってしまうぐらいに、ユニークな人ですね」
「小生の人生を……。いや、乃木ヲタ達の人生を支えてきた、それこそ大スターの一人でござる。泣いて泣いて、泣きつくしているファンは大勢いるでござろうな」
「へえ……。今日が誕生日なんでしょう? まいちゅんさんの」夏男は二人を見つめて言った。
「そうですね」稲見は答えた。「ハッピー・ハッピー・バースデイです」
「それこそ来てくれるんじゃないのう?」夏男は稲見に言った。
「向こうには同士がいます。彼女が来れば、必ず祝ってくれる。彼女が来る奇跡よりも、俺は彼女をしっかりと見送る為の選択をしたんです」
「小生も、……同じでござる」あたるは片手で顔を隠して呟いた。
「そっか……。あれだね、そんな時期に誕生日があるっていうのも、素敵な感じだね」夏男は微笑んだ。「卒業かあ……」
「そういえば、新内眞衣ちゃんがあなたからの卒業、というソロ曲を歌っているんですけど、ミュージック・ビデオがかなり、可愛いんです」稲見は夏男に微笑んだ。「最後には、泣けてしまうんですけどね」
「あーのMVのまいちゅんは~、あ~れはやっばいでござる~!」あたるは泣きべそをかいて言った。「可愛すぎるんでござるよ~!」
「確かに、可愛い」稲見は納得して、コーヒーを飲んだ。「ああ、美味しい……」
「あ~の頃のウパとイナッチとかつおがさあ、コーヒーにはうるさかったからねえ」夏男は軽い調子で笑った。「随分鍛えられたよ~。そういえばさ、二人は、仕事どうしてここに来てるの?」
「サボりました」稲見は眼鏡の位置を修正しながら答えた。
「あっは!」
「小生も、人に警備を代わってもらって、ここに来ているでござる……。うぅ、まいちゅん……小生をおいて、どこに行くのでござるぅ……」
「まいちゅんは世界のどこかにいるよ」稲見は無表情で言った。「世界は繋がってる。それこそ、気持ちの捉え方が重要だ。さよならで終わるつもりはないんだろ?」
「ないでござる!」あたるは顔をしかめて立ち上がった。「例えこれが今生の別れだとしても、気持ちはずっと一緒でござろう? イナッチ殿、夏男殿、そうでござろう!」
「そだね」
「うん」
「僕は……、まいちゅんの事を、決して忘れない。それはこれからのまいちゅうもだけど、そうじゃなくて……。これまでのまいちゅんを、一生を懸けて愛すると思うんだ」あたるは座りながら、涙をふいた。「いつまでも、まいちゅんの理解者でいたいよ……。まいちゅんを好き? と聞かれて、いつの時代に生きてても、大好きですと、答えられる人間でいたい……。それこそ、何期が来ても、守護神みたいに大ファンを続けながら、まいちゅん達を忘れない、そういう男でいたい」
 稲見瓶は、よそを向いて、顔を隠した。
 夏男は、笑顔で頷いている。
「忘れたくない、忘れるもんかっ!」あたるは泣き、叫んだ。「まいちゅんを愛した自分を、いつまでも誇りに思う! この今僕を支配している大切な気持ちを、いづまでもわずれないっ!」
「ブラボー」夏男は囁いた。
「誓おう」稲見はよそを向いたままで言う。「俺も想い続ける事を……」
「約束だよ」あたるは、泣き顔で、優しく微笑んだ。
「約束だ」稲見は、そのままで、右手の小指を差し出した。
 姫野あたるは、鼻をすすり上げながら、稲見瓶の小指に、己の小指を絡め合わせた。
 指切りげんまん、嘘ついたら針千本、呑ます。指きった……。
「へへへ」あたるはにっこりと微笑む。
「……」稲見も、鼻をすすって、微笑んだ。
 この指切りが、君に捧げる最後の約束です。
 僕らは、いつだって変わらない。
 変わらずにいる。
 だから、まいちゅん。
 君も、笑って下さい。
 まいちゅん。

       8

 二千二十二年二月三日。今宵〈リリィ・アース〉では、一月生まれと二月生まれの生誕祭が開かれていた。会場は地下六階の〈無人・レストラン〉二号店である。
 会場内は広々とした空間造りになっていて、天井や壁面には豪勢な装飾が成されている。各所に設置してあるテーブルには、立食パーティーならではのビュッフェ形式での御馳走が並び、各所の<レストラン・エレベーター>も常に起動していた。
 本日の主人公である印となる輝くティアラをしているメンバーは、乃木坂46四期生の松尾美佑、三期生の梅澤美波、四期生の黒見明香、二期生の新内眞衣、一期生の樋口日奈、四期生の弓木奈於、一期生の星野みなみ、OGの高山一実、乃木坂46ファン同盟の駅前木葉である。
 駅前木葉はティアラを頭に載せている事を恥ずかしく思いながら、こそこそとした動作で一期生の星野みなみと齋藤飛鳥のそばへと近寄って行った。
「あら、飛鳥さん、みなみさん、奇遇ですね」駅前は不自然な笑みを浮かべた。「何か月ぶりかしら。お元気でしたか?」
「元気~」みなみは明るく微笑んだ。
「奇遇も何も……」飛鳥は苦笑する。「なに、誕生日なの?」
「あ、はい。すみましぇん」駅前は恐ろしい眼つきで笑った。「笑止!」
「怖いですから……」飛鳥は駅前から眼を反らす。
「あはは、変な顔~」みなみは駅前を指差して笑った。
「飛鳥さん、モンド・グロッソのストレンジャーのMV、世間より少しだけ早く拝見させていただきました。あれは、動く写真集とも言えますね。楽曲も飛鳥さんも、最高に素敵でした!」
「ああ、見たの」飛鳥は駅前を見る。「てか聴いてくれたのね」
「みなみも聴きた~い」みなみははにかむ。「えどんな感じ?」
「一種の、芸術のようなものかしら」駅前は思考せずに感想を言った。「わざとらしくなく、気が付いたらノイズのような音が耳を打っていました。それが最後まで響いているのですが、全く嫌じゃないんです。それどころか、飛鳥さんの声にも、その不思議な楽曲にもチルアウト効果があるような感じで……部屋のお掃除とかしながら聴いててもはかどっちゃうような感じですね」
「へ~」みなみは感心する。
「ありがとうございます」飛鳥はぺこり、と会釈した。
「どんな時にも聴いてたくなる一曲でした」駅前はにこり、と微笑んだ。
 稲見瓶はコーヒーカップを片手に持ちながら、近くにいた松尾美佑と弓木奈於と金川沙耶に話しかけた。
「ハッピー・ハッピー・バースデイ。弓木ちゃん、みゅうちゃん」稲見は立ち止まる。「お酒を呑めるのは、弓木ちゃんだけ?」
「あー、私も、年齢的には呑めます」沙耶は畏まって稲見に答えた。「まだあんまり、強いお酒は吞んだことないんですけど」
「そうなんだね。今度、強いお酒の良さと、上手な呑み方を伝授しよう」稲見はうっすらと笑みを浮かべた。「弓木ちゃんは呑んでる?」