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今もそっとポケットの中で・・・。

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「いいえ、あなたは特別よ……。名刺、持ってるわね?」
「はい。稲見」
「はい」
 会話が成立すると、互いがまた他の有力者を探すために一時離れる。このシステムが染みつけば上出来な日になる。しかし、会話が成立した後も、長々と付きまとわれる場合もあるのである。
「こんばんは、稲見と申します」
「稲見さん? えー、あ。橋本です。えーおいくつ何ですか?」
「十七です」
「えーすごーい、こーんなパーティーに……代表の方なんですか?」
「いいえ、うちの相棒が代表です」
「その方は、どちらに……」
「あそこで、グラスを片付けている……、彼です。名前は月野、私と同じ年齢です」
「カッコイイ!」
「ふふ」
「あーでも私、稲見くんの方がタイプだな~」
「ありがとうございます、橋本さん」
「名刺、欲しいな~」
「ああ、これは、遅れまして……稲見です」
 パーティーには約一時間いて。まあまあの収穫であったといえるだろう。
 二人ともが暑苦しいコートをわきに抱えて、スーツ姿で新宿を後にした。
 タクシーで赤坂まで移動すると、近くにいたガードマンに誘導され、そこでタクシーを降りた。
「あら、な~んだユウ殿達でござったか~。今日はやけにめかし込んでいるでござるな~」
 月野夕は背伸びをして、あくびをした。
 料金を支払い終えた稲見瓶は、ガードマン姿の姫野あたるに微笑む。
「うちの技術を買ってくれる企業を探しに行ったんだ。誘い口は、ユウの美しい顔、だね」
「何でも使うよ、俺はさ。夢のためならば」
 月野夕は姫野あたるに微笑んだ。
「小生の顔は車の排気ガスで真っ黒けでござる」
「だからぁ、うちに来ればいいじゃん」
「それはダメでござるよ! 乃木坂は工事中でござる。では誰かがこうしてガードマンをしなくては」
「理解しよう。それぞれに使命はある」稲見は風を気にしながら言う。長く吹き抜けて行った一陣の風は、少し肌寒かった。「ダーリン、今日は何の日か、わかるかな?」
「まいちゅんの写真集発売日でござるな! 小生、フラゲしてるでござるよ!」
「内容は?」稲見はきく。
「まだ見ていないでござる!」あたるは満面の笑みで微笑んだ。
「よし、じゃあ後で会社に来いよな」
 風秋夕は歩き始める。
「メシ食ってから来いよ~、洗い物出したくないからさ~」
 稲見瓶も、姫野あたるに頷いてから、歩き出した。
「待ってる」
「気を付けて帰るでござるよ~」
 赤坂の会社兼たまり場のマンションに帰宅した後は、ショールームの「乃木坂46新内眞衣ファースト・写真集『どこにいるの?』発売記念SP」を各々のパソコンの画面で観た。
「イナッチ知ってっか? 今日、埼玉県庁オープンデ―って言って、まいちゅん午後の一時半からトークイベントしてたんだぜ」
「あーそれね、かなりSNSで行きたがってた人がいたね」
「それ俺かも」

 パソコンに映し出されたショールームの生配信では、乃木坂46の新内眞衣がはきはきとしたトークを繰り広げている。

『や―はい、て事で、あの、さっそくですがコーナーに行っちゃいましょうかね。がんばりまーす。まずはこんなコーナーをやってみたいと思います。えー、題して、コメント記者会見~!』

「まいちゅん白のニットヤバいな、超可愛いじゃん」月野夕はにやける。
「前髪が可愛い」稲見は無表情で呟いた。

『ちなみに今うん、地元の子とかにも見せたけど、女の子の友達でも、やっぱ、眞衣の水着姿見るのは、ちょとなんか、抵抗あるみたいで、ね全然お風呂とか一緒に行った事あるんですけど、なんか水着になると、うん。ちょとやっぱ、照れるみたいで、あんま直視できないって言ってました』

「ちょ、直視できない! 君は眩しすぎるまいちゅん!」
 月野夕は片眼を閉じて、表情豊かに写真集と奮闘している。
「直視します」
 稲見瓶は、それから言葉を失いながら、1ページ1ページをゆっくりと、観察していく。

『何でそのタイトルになったのか教えて。ん~~、十個ぐらい、案はあったんですけどぉ、秋元先生に選んでいただいて、その中でぇ、なんか秋元さんの中でぇ、たぶん、私のぉ今までのイメージとぉ、これを見た時のギャップがあったのかなって、思うようなタイトルが沢山あったんですけど。なんか帯も含めて、これがいいな~、て。これが私らしいな~と思って。この、どこにいるの?ていうタイトルにしました』

「これ……宝にしよ」
 月野夕は、写真集を眺めながら呟いた。
「……」
 稲見瓶は、写真集に言葉を失っている。口が半分あいていた。
 玄関から鍵が開く音がして、間も無くしてから、中嶋波平が新内眞衣の写真集を手に持ちながら、携帯電話でショールームの生配信を見ながら部屋に入ってきた。
 テーブル前に散らばっているザブトンにどん、とあぐらをかいて座る。
「なんかよ、一緒にタイ旅行してる気分になんねえ?」
「なるな、これは!」
「どうやるの?」稲見は写真集から顔を上げて二人を交互に見つめる。「どうやって思い込めばうまくいくかな? まいちゅんと一緒にタイ旅行を実感するには、どうすれば……」
「お前にゃ無理そうだ」中嶋は愛想なく言い捨てた。
「撮ってるのが自分だと思うんだよイナッチ!」月野夕は笑顔で言う。「がんばれ! 全然価値観違うぞ!」
「やってみる……」
 稲見瓶は無表情で、新内眞衣の写真集を真剣に見つめる……。
「できた!」
「やったなあイナッチ!」
「それ撮ったなぁ俺だ、勝手な想像はやめたまえ」

『載ってないんですけど、ほんとに青のドレスとか凄く綺麗でえ、でこれ裏びょう、これ裏表紙っていうんですかね? 表紙~裏表紙とこの表紙のこの……、あれ、ところにも使われてるぐらいでほんとに好きで、入れ込みたくて、選びました。うん、ほんとに、いっぱいいい写真あったんですけど、なかなかね、あれだったんで、でもね、いい感じです。おお三万人突破したという事で~ありがとうございます~嬉しい~』

「これは……果たして男子が見てもいいのかな?」
 稲見瓶は二人を見る。
「ん?」月野夕は、すぐに笑みを浮かべる。「いいんじゃない? 本人が見ていいって言ってんだから」
稲見瓶は言う。「プールや海岸で、水着姿の女性をじっくりと観察する事は、よくないよねえ?」
「どこが悪い?」中嶋にはわからない。
「写真集はな、魔法なんだよ。見てる俺達は、まいちゅんの大切な人設定に当てはめてもらえるんだ。だから、一緒に旅行したり、ホテルに泊まったりしてるように思えるんだよ」
「魔法か……」
「最高だろ?」月野夕は無邪気に微笑んだ。
「最高だね」稲見も微笑んだ。
 ショールームの生配信は止まらずに進行していく。

『変わり続ける新内眞衣。彼女は今、何処にいるのだろうか。はい『どこにいるのだろう?』というタイトルかけてくれた、ので、で、ま、きっと、いい意味でも悪い意味でも日々変化すると思うので人って、なんで、この三人にしました。この三名にはサイン入りチェキをプレゼントします』

「あー欲しいなー!」中嶋は立ち上がる。
「座れ……」月野夕は呆れた顔で言った。
「俺も欲しかった」稲見は呟いた。