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今もそっとポケットの中で・・・。

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「やー、なんっか与田とやまがまだ帰宅してないみたいで……、何気なくした連絡がとれないでいて」美波は磯野を無視して夕に顔を向けて言う。「たぶん、まだここに残ってるんだと思って、心配になって探しに来たんですけど……」
「偉い!」眞衣は大きな声を上げた。「グッド……」
「水、飲めよな、まいちゅん……」磯野は心配そうに眞衣に言った。
「与田ちゃんと美月ちゃんがいない……」夕は顔色を変える。「そんな残酷な世界は嫌だ!」
「おいイーサン」磯野は虚空に話しかける。「与田ちゃんと美月ちゃん今どこよ?」
 しゃがれた老人の声が店内のその部分だけに響き、「お答えできません。ノーコメントでございます」と告げた。
「あーそうだった……。イーサンの乃木坂レーダー、今使用不可能なんだった!」夕は髪をかき上げて、顔をしかめた。「まいちゅん、もう少ししたら、部屋に戻るんだよ? いいね?」
「ほーい」眞衣は手を上げた。
「梅ちゃんは、明日ミーグリあるからもう休んで」夕は立ち上がる。「イーサン、イナッチと駅前さんとダーリンに非常事態発生の報告だ。奴らがいるフロアに今から俺の声を無条件で流せ」
 畏まりました――と電脳執事のイーサンが応えた。
「イナッチ、駅前さん、ダーリン、緊急事態発生だ。与田ちゃんと美月ちゃんがまだこのリリィに残ってるらしい。連絡が取れない状態でいる。携帯電話で各自指示するから、指示された各フロアを徹底的に探せ! 通信終わりだイーサン。波平、行くぞ!」
「おうよ!」磯野は勢いよく立ち上がった。
 次の瞬間、店内の音楽が消え、各ポジションに設置してあるテレビ画面に稲見瓶の顔が映し出された。
「イナッチどうした?」夕は最も近い場所に在るテレビ画面に顔をしかめて言った。
 『いや、うん。あのね、美月ちゃんと与田ちゃんだけどね。二人なら、ここにいる』
「え!」美波は思わず声を上げた。「どこ?」
 『いつもの場所だよ。地下二階の、東のラウンジ』
「携帯繋がってないのか?」夕は一安心して、顔の表情を緩めた。「梅ちゃんが連絡取れなかったって言ってるぞ」
 『やっほー』
 『こんばんは~』
 与田祐希と山下美月がテレビ画面に映った。
「何だよ、二人ともライン見てる? 電話も出ないし……」美波は苦笑する。
 『やー、充電無くなっちゃって』祐希は小さく笑った。
 『私も~』美月はじろじろとこちらを見つめている。にやけていた。『誰がいるの?』
「夕君と、波平君と、新内さん」美波はテレビ画面にそう答えながら、立ち上がった。
 『新内さん、メリークリスマ~ス』美月は微笑んだ。
 『メリークリスマ―ス』祐希もテレビ画面に映って微笑んだ。
「あ……」美波はもう一度、テレビ画面に振り返って苦笑した。「新内さん、眠っちゃった……」
 風秋夕の携帯電話が着信音を奏でた。表示された文字は、ダーリン、であった。
「もしもし?」夕は事の事情を短めに説明する。
「駅前さんも一緒なの?」美波は画面に映った稲見にきいた。
 『うん。いるよ』稲見は無表情で答えた。『どうも、大騒ぎになってたみたいで、ごめんね。配慮が足りなかった』
「いや、いいんだけどさ、無事なら」美波は顔を笑わす。「やまと与田、寝ないの?」
 『寝ないの、だって』
 『もう少ししてから寝まーす』祐希は疲れ切った笑顔で元気いっぱいに答えた。
 『私も、もう寝るかな。部屋戻って』美月は冷静に答えた。
「ござるござるうるせえなお前はぁ!」夕は怒鳴って、携帯電話の通話をオフにした。「何なんだあいつは、武士か……」
「梅ちゃんもう寝るん?」磯野は着席しながら美波を見つめた。
「ああ、お、うん」美波は磯野に頷いた。「もう寝るよ」
「じゃあ部屋まで送るわ。何階?」
「地下四階」美波は眞衣を一瞥して答えた。
「まいちゅんと一緒か?」磯野は片眉を上げて美波にきく。
「ああ、違う。たぶん」美波は思い出しながら答える。「新内さんはたぶん、地下三階」
「そっか。じゃあ俺、まいちゅん抱きかかえて行くから、途中まで一緒に行こうな」磯野はにこっと笑った。
「うん。大丈夫?」美波は座りながらきく。
「イナッチ、まいちゅんと梅ちゃん送ってから合流する」夕はテレビ画面に戻ってきた稲見に開口一番に言った。
 『了解。じゃあ、切るね』
 通信は終了された。店内に音楽が戻る。
「歩けるから……」
 突然に、新内眞衣は寝ぼけながら立ち上がろうとした。
「おっと」
 磯野波平は、すぐさま新内眞衣を支えた。そのまま、椅子を下げて、少しポジショニングをしてから、新内眞衣を背中に背負った。
「まいちゅんの部屋ナンバーは、地下三階に着いてからイーサンにきき出せ。教えてくれる」夕は立ち上がりながら、磯野に言った。「くれぐれも、変な気起こすなよ?」
「誰に言ってんだ、てめえは」
「お前だよ……。長く上がり込むのも無しな。ベッドまで運んだら、ちゃんと寝かせてすぐに戻って来い」
「てめえに言われるまでもねえ……」磯野は、鼻の下を伸ばす。
「ほらその顔ぉ!」夕は怒鳴る。「物語ってるんだよそのツラがぁ!」
「波平君、変な事したら、絶交だよ?」美波は立ち上がりながら磯野に言った。
「嘘でもそんな事言わないでくれ、梅ちゃん」磯野は悲しそうに美波を見つめる。「俺らが絶好なんてしちまったら、世界はどうなっちまうんだよ……」
「どうなるんだよ」夕は吐き捨てる。
「世界がな、ちょっと変わっちまうだろ?」磯野は美波に微笑んだ。「そういうちょっとした寂しい事で、世界は壊れてくんだぜ。梅ちゃん、絶交は無しだよな? 俺が寝てるまいちゅんに何してもよ……」
「どうしても何かしたいんか貴様は!」夕は怒る。
「じゃあ、軽蔑(けいべつ)する」美波は微笑んだ。「てか、ついてく……」
「俺もついてくわ」夕は溜息をついた。「始めっからそうすりゃよかった」
「えー……」磯野は残念そうに唸った。
「クリスマスに寝込み襲うんか貴様って奴は!」
「っせえ」
「ふふ。行こう」
 梅澤美波と風秋夕と磯野波平の三人は、新内眞衣の部屋のベッドに、彼女を寝かせてから、地下四階の梅澤美波の部屋へと下りた。
「ここまででいいから」美波は座視でにやける。
「無理すんな、顔に出てるぜ」磯野は格好つけて微笑む。「お茶でも淹れます、てよ」
「何時だと思ってんのよあんたは!」夕は憤怒して磯野の服を強引に引っ張る。「おやすみなさい、梅ちゃん。ほら、行くぞ!」
「梅ちゃん、おやすみな!」磯野は美波に投げキッスをして、ウィンクした。
 梅澤美波は鼻を鳴らして小さく笑ってから、部屋のドアを閉じた。

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 第72回NHK紅白歌合戦!が二千二十一年の終わりを告げ、CDTVスペシャル!年越しプレミアライブ2021→2022で年を跨(また)ぎ、そして迎える新年の二千二十二年一月三日。
正月三箇日の最終日、乃木坂46二期生の新内眞衣は、厚手のコートを羽織り、私生活用の金縁の細身の眼鏡をして、〈リリィ・アース〉に訪れていた。
乃木坂46ファン同盟からは、稲見瓶と姫野あたるの二人だけが〈リリィ・アース〉居り、風秋夕と磯野波平と駅前木葉は実家に帰郷していた。