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今もそっとポケットの中で・・・。

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 新内眞衣はコートをコートラックにかけると、ソファ・スペースで立ち上がりながらこちらを向いている、稲見瓶と姫野あたるに笑顔を向けた。
「あけおめ」眞衣は笑顔で言った。
「あけましておめでとうございます」稲見はにこやかに眞衣に向けて微笑んだ。これが新年で最初の稲見瓶の笑顔であった。「今年もよろしくお願いします」
「よろしくです」眞衣は頭を下げながら、ソファ・スペースへと向かう。しかし、一度そこで立ち止まる。「ちゃんと言わなきゃだね。新年明けましておめでとうございます」
「まいちゅん殿! あけましておめでとうございます、でござる!」あたるはいっぱいに笑みを浮かべて眞衣を見つめた。「今年も、なにとぞ、よろしくお願い致します、でござるよ!」
「よろしくお願いします。てかさ」眞衣は西側のソファに腰を下ろす。「三日から、いるんだね? 誰にも期待しないで来たんだけどさ」
「偶然はね、全てとは言えないけど、必要な分だけが必然なんだよ」稲見はにこりと微笑んで言った。「俺はお正月は暇で仕方ないんだ。かと言って、ここに来たのは書類を忘れて取りに来ただけのただの偶然なんだけど、来てよかった」
「小生はただならぬ予感がしたでござるよ!」あたるは興奮気味に、東側のソファでバウンスした。「乃木坂関係の大人達は集まるんじゃないかと予想したでござる。的中したでござるよ!」
「来ました~」眞衣は笑顔で頷いた。
「地上のシェフ達も通常通り、動いてるよ」稲見はメニュー表を持ち上げて、眞衣にメニューをどうぞ、と無表情でサインを送る。「正月と言えば、御節料理とお雑煮だね。もちろん、それ以外も有りだ」
「あー」
 新内眞衣はメニュー表を広げる。稲見瓶と姫野あたるのテーブル・サイドには、それぞれ日本酒とカクテルが置かれていた。日本酒が稲見瓶で、カクテルのレッド・アイが姫野あたるである。
「イナッチ、髪変えたね」眞衣は稲見を一瞥して言った。
「うん。切りました」稲見は頷いた。
 稲見瓶の髪型は、黒髪のセンターパートショート2ブロックだった。
「小生は、相変わらず、ぼさぼさでござるよはっは」あたるは髪を掻いた。
「ダーリン短いの似合うって」眞衣はあたるを一瞥して言った。「絶対似合うから! なんなら保証するから。あーでもね、六四分けはいい感じよ」
「そうでござるか!」あたるはレッド・アイを勢いよく飲み干した。「っぷうあ~~。はあ、……まいちゅんに褒められたでござるよ! イナッチ殿!」
「ああ、良かったね」
「嬉しいでござる!」
「そんなにぃ?」眞衣は苦笑する。「あのさ、イナッチの時計って、それロレックス? ずっと思ってたんだけどさ、気づくと見えない位置にあるから」
「ロレックスは夕だね。ロレックスのヨットマスター」稲見は答える。「俺のはタグ・ホイヤーだよ。ちなみに波平の時計は、フレデリック・コンスタントだよ」
 新内眞衣は関心の声をもらした。流れるような動作で、姫野あたるを見る。
「小生のは、Gショックでござる」あたるは腕を斜めに胸の前で決めて言った。「象が踏んでも壊れぬでござるよ~」
「いいね」眞衣は笑顔で言った。またメニュー表に視線を落とす。
「え」――という声に、最初に気付いたのは稲見瓶であった。珍しく音楽が流れていない為か、星形の五台並んだフロア中央のエレベーターからの声が届いていた。
 新内眞衣は振り返る。そこには暖かそうなコートを着込んだ乃木坂46一期生の秋元真夏の姿があった。
「あー明けましておめでと~」眞衣は振り返ったままで真夏に言った。
「明けましておめでとう。まいちゅん来てたんだ~」真夏はゆっくりと歩いてくる。「あイナッチ~、あ、ダーリンもいる~。明けましておめでと~」
「明けましておめでとうございます」稲見は落ち着いた仕草で真夏に微笑んだ。「今年もよろしくお願いします」
「予感が当たったでござる~!」あたるは立ち上がった。「まなったん殿、明けましておめでとうございますでござる! 今年もどうか、なにとぞ、よろしくお願い致しますでござる~!」
「は~いあけおめ、ことよろ」真夏は、眞衣の隣に着席する事に決めた。「みんな初詣行った?」
「行った~」眞衣は答える。「てか、とりあえず座りなよ」
「はい」真夏は屈託なく微笑む。
「初詣ね、行ってきたよ」稲見は真夏に答えた。「浅草に行ったんだけど、凄いね、あそこの熱気と人の多さは」
「浅草はね!」眞衣は相槌を打つ。「はんぱじゃないでしょ」
「小生は、西新井大師、というぎりぎり東京の場所で初詣をして来たでござる。それでも、人混みははんぱではなかったでござるが」
 新内眞衣は秋元真夏にメニュー表を手渡す。己も少し遠いテーブル・サイドにあったメニュー表を手に取った。
「何呑む?」眞衣は真夏にきく。
「あー……じゃあ……。私そんなに強くないから」真夏はメニュー表から顔を上げて、眞衣に微笑んだ。「ビールで。クリア・アサヒがいいや」
「なにー、じゃあ私もビールにしよ」眞衣は更にメニュー表をめくって物色する。「お腹、すいたひと」
「はい!」真夏は笑顔で、小さく手を上げた。「お雑煮食べたい!」
 時刻は正午の二時過ぎであった。
「お雑煮と、イナッチとダーリン、お刺身好き? だいじょぶ?」眞衣は二人を見る。
「好きだよ」と稲見。
「大好物でござる!」とあたる。
「お鍋、好きな人?」眞衣は三人を交互に見る。
「はい」と笑顔の真夏。
「好きだよ」と稲見。
「大好物でござるよ!」とあたる。
「何鍋?」眞衣は考えながら囁く。「白湯? キムチ鍋?」
「キムチ鍋!」真夏は微笑んで言った。
「キムチ鍋ね」眞衣は稲見とあたるを見た。「でい?」
「いいね」と稲見。
「早速頼むでござるよ」とあたる。あたるは虚空にしゃべる。「イーサン。お雑煮を、……何個でござるか?」
「はい」眞衣は小さく手を上げた。
「はーい」真夏も小さく手を上げた。
 稲見瓶は小さく首を横に振った。
「お雑煮を二つ、と……キムチ鍋でごる。キムチ鍋を六人前、ぐらでござるかな。あとクリア・アサヒを一つと、まいちゅん殿は……」
「同じでいい」眞衣は答えた。
「クリア・アサヒをやっぱり二つでござる、イーサン。それからぁ、ラム・コークでござろう? イナッチ殿……ふむ。ラム・コークを二つ、あとお刺身の盛り合わせを十人前、至急頼むでござるよ、イーサン」
 畏まりました――と、電脳執事のしゃがれた老人の声が応答した。
 北側のソファ・ポジションに座る稲見瓶からは、中央の星形に五台並ぶエレベーター付近をこちらに向かって歩いてくる乃木坂46四期生の遠藤さくらと、同じく四期生の賀喜遥香の姿が見えていた。
 稲見瓶は黙ってそちらを見つめながら、片手を上げた。すぐにその行動に気付いた三人は眼を凝らして後ろから近づいてくる二人の姿を発見した。
 五人が改めて年賀の挨拶を済ませると、遠藤さくらと賀喜遥香は南側のソファ・ポジションに落ち着いた。
 ドリンクの注文が次々と届く中、稲見瓶がそれを皆に分配していった。
「初詣行った?」眞衣は四期生の二人にきいた。
「行ってきました」さくらはにこやかに答えた。
「すっごい、混んでました」遥香は顔を驚かせて言った。