二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

BUDDY 13

INDEX|3ページ/12ページ|

次のページ前のページ
 

(アーチャーには、わけがわからないだろうな……)
 頭を抱えてしまう。
 どうすればいいのかわからない。
 どうしようもなくてやってしまった告白は受け入れられたと取ればいいのか、スルーされたと諦めればいいのか。
 アーチャーは嫌だと言わず、士郎のキスを受け取り、そのまま興が乗ったのか、それとも魔力供給のつもりだったのか、熱く、深い口づけを繰り返した。
(アーチャーはどういうつもりなんだろう……?)
 アーチャーの意図がわからない。何をどう思っているのか、己をどうしたいのか。
(俺をどうするっていっても、厄介払いしたいと思ってるんだろうしな……)
 いつまでも使い魔にしているのも面倒だろうし、座に連れ還ったとしても、なんら役に立たない士郎が居ても仕方がない。ならば、ここで消えてくれれば、と考えるのが普通だろう。
「どう……しよう……?」
 わからなくなってしまった。
 これからどうすればいいのか。
 アーチャーの使い魔のままでいいのか、それとも……。
「はあ……」
 幾度目かのため息を、また、吐いてしまった。



「どう……しようかな……」
 そろそろ就寝の時間だが、士郎はベッドに入れずにいる。明日の朝食の仕込みや後片づけはアーチャーがやる当番になっていたので、士郎は先に自室に戻った。
 戻ったのはいいが、ベッドの前で立ち尽くす。
「ね、寝るんだよな……、いつもみたいに……」
 アーチャーに抱き込まれて、今夜もここで眠ることになる。いまだに魔力は僅かしか流れてこないため、こうするより他はないのだが……。
「あんなこと言ってキスとかして……、じゃあ直接供給もできるだろう、ってアーチャーが言い出したら、今度はどうやって逃げればいいんだ……」
 お前が好きならいいじゃないか、とアーチャーは言いそうだが、そう単純なことではない。士郎はアーチャーが好きなのだから問題ない。士郎が問題だと思うのは、その行為に至る前提にアーチャーの気持ちがないことだ。
「そりゃ、魔術師なら当然なんだろうけどさ……」
 アーチャーも魔術師上がりのサーヴァントだ。そんな常識は知っている。だから、手っ取り早く直接供給をしようと何度も勧めてくる。
「だけど、そういうことじゃないんだって……」
 甘いのかもしれない。
 魔術師にあるまじき、と言われるかもしれない。
 それでも士郎は、気持ちの伴わない性行為をしたいとは思わないのだ。
 それを身をもって味わった士郎だからこそ、そう強く思うのだろう。
「あんな苦しいこと、させたくないんだ……」
 あんな思いを味わうのは自分だけでいいと思う。士郎とて、魔力不足で動けなくなるくらいなら、直接供給ででも補ってもらいたい。士郎にも魔術師の知識がある手前、きっとあの経験がなければ、アーチャーの誘いに乗って直接供給を受け入れていただろう。だが、
「あんなの、絶対……」
 味わってほしくない、と士郎は切実に思う。
「たくさん嫌なこと、やってきたんだからさ……」
 守護者として長い時を存在していたアーチャーだからこそ、今、この僅かな現界の間だけでも、自分の思うように過ごしてもらいたい。
 己という付属品のために、自分自身を犠牲にしてほしくはなかった。
(これって、俺の我が儘なんだろうか……?)
 アーチャーが心のままに存在するということが、どれほど難しいことなのか士郎もわかってはいるが、願わずにはいられないのだ。
(どうか、アーチャーの心のままに……)
 いつも、その心を虐げられてきたアーチャーに、一瞬にも満たない現界だろうが、安らぎを、と願う。
(そう思うのは……)
 いけないことだろうか、と何度も士郎は自分の中で問い続けていた。



***

 翌日の朝食の仕込みを終えて部屋に入ると、士郎がベッドの前で突っ立っている。
 風呂上りのようで、少し髪が濡れていた。
「何をしている?」
 声をかければ全身を跳ねさせ、驚いた様子で士郎が振り向く。
「あ、お、っ、こ、ここで、その……」
「人語をしゃべってくれないか。私は動物と意思疎通はできない」
 呆れながら歩み寄れば、士郎は胸元のシャツを握りしめていた。
「……………………あ、悪い。その、やっぱり、遠坂に別の部屋、借りてくる」
 足早に傍をすり抜けようとした士郎の腕を掴む。
(なぜ、そうなる?)
 苛立ちながら、士郎をそのままベッドの方へと引っ張っていく。
「ちょ、おい、放せよ! 俺、別に部屋を借りるから! 無理だったら、リビングでいいからっ!」
「なぜだ!」
 ベッドへ投げ捨てた士郎は、困惑した顔でこちらを見上げてきた。
「だ、だって、」
「同衾しなければ、魔力が補給できないのだろうが!」
「でも、なんとか——」
「そのうちに動けなくなる。以前のように、掃除をしただけで半日寝て過ごすようになりたいのか」
 何か言い返そうとした士郎は、ぐ、と唇を噛みしめて言葉を呑んだ。
「反論があるのなら聞くが?」
「…………ない」
「ならば、おとなしくそこで寝ろ」
「…………」
 反論はしないが、いまだ納得してはいない表情で、あらぬ方を睨む士郎に、
「寝ろ」
 と、短く吐き出すと、諦めた様子でベッドの端へ寄っていき、アーチャーの入るスペースを空けて横になる。
 こちらに背を向けているので表情はわからない。だが、どう贔屓目に考えても、好きな者の傍にいるような顔をしているとは思えない。
(私を好きだと言うのなら、同衾するのは、うれしいことではないのか?)
 なぜ、士郎は己に背を向けるのか、という疑問と苛立ちが湧く。
(私を好きなのだろう? ならば、こちらを向いて、もっと傍に来ても……)
 そろり、と手を伸ばす。士郎が来ないのならば、こちらに引き寄せればいい。
 肩に手が触れれば、びくり、と震えた士郎が身を固くしたことがわかった。が、構わずに、そのまま抱き込む。
「ぁ……の……」
 微かな声が聞こえたが、かまわず抱きしめた。腕の中の熱い身体は、仮初めの心臓が壊れそうなほど速く、大きく胸を打っている。
「士郎」
 呟けば、ちょうどその耳に唇が触れ、びく、と腕の中で士郎が跳ねた。
「あ、あの、アーチャー、やっぱ、離れ——」
「士郎……」
 振り向いた琥珀色の瞳が濡れている。泣かせただろうか、と考えてみたが、思い当たる節はない。ならば、どうして士郎は目を潤ませているのか。
 士郎が子供のように怪我や痛みで泣くはずがない。これはきっと、己が原因だ、ということをアーチャーは理解していた。
 顎を取り、半開きの唇に甘く噛みつき、士郎を身体ごと反転させる。少しの抵抗はあったものの、すぐにアーチャーのキスを素直に受け取りはじめた。
 拒まれるものと思っていたが、士郎は差し込んだ舌を、ちゅ、ちゅ、と吸い、アーチャーの魔力を甘露のように感じているのか、熱い吐息をこぼして、悩ましげに震えている。
 細い腰をさらに引き寄せれば、アーチャーの腿に士郎の少し硬くなったモノが感じられた。その熱さはアーチャー自身も覚えのあるものだ。
(感じているのか……)
作品名:BUDDY 13 作家名:さやけ