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ポケットいっぱいの可愛い。

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「はいでござる!」あたるは勢いをそのままに手を上げた。
「はい」稲見も小さく片手を上げた。
「じゃあ淹れてくるね」夏男は立ち上がる。
「ありがとうございます」稲見はお礼を言って、煙草に火をつけた。「そういえば、リリィ・アースにバナナマンさんが来たみたいだよ」
「えっ!」夏男は全力で稲見を振り返った。「バナナマンって、あのバナナマンさん?」
「はい」稲見は頷いた。「ふぅ~……。食事に、短い時間寄ってくれたみたいです」
「バナナマンって言ったら、俺の生涯で一っ番笑ったお笑い番組の人達だよう!」
「へぇ、バナナマンさんとは、凄い来客でござるなぁ……。して、夏男殿、生涯で一番笑った番組とは?」あたるは興味深そうに夏男を見た。
「ゴッドタンだよう!」夏男は興奮して言った。「ちょうど佐久間さんがプロデューサーやってた頃からの番組の大ファンなんだよぅ!」
「佐久間さんは、今は出る側の人になりましたね」稲見は夏男に言った。
「そうだね!」
「ゴッドタン……。キス我慢選手権の、でござるか?」あたるは夏男にきく。
「あそうそう!」夏男は嬉しそうに頷いた。「懐かしい! あのねぇ、バナナマンさんとか、おぎやはぎさんとか、東京03さんとか、劇団ひとりさんとかが出てる番組だよ」
「キス我慢選手権、とは?」稲見はあたるを見つめる。「名前は確かに知ってるけどね。内容はどんな感じなの?」
「あらゆるシチュエーションで、キスを我慢するのでござるよ。内容はシンプルでござる。魅力的な美女たちが、ドラマのワンシーンの中にいるような即興劇の中で、常に誘惑してくるでござる。そのキスの誘惑をひたすら我慢するというだけの企画なのでござるが、これまたこれが面白いのなんの!」
「我慢する事が?」稲見は不思議そうにあたるに言った。「例えば、それが乃木坂のみなみちゃんだったとしたら、出演したいけどね。いや、逆に我慢するのは難しいのかな……」
「常人なら、秒殺でござろうな」あたるは眼を瞑っていった。眼を開く。「でも、それが小生なら、逆に恐れ多くてできないでござるよ……」
「ああ、そのパターンもあるね」稲見は考える。「でも、きっと夕や波平なら、そのチャンスを逃さないと思うな」
「あの二人はチャラいんだか情が深いんだか、謎でござるよ」
「知ってた?」稲見は言う。「夕は生涯何度もみなみちゃんを夕食や吞みに誘っているんだけど、とうとうね、一度も誘いを受けてもらえなかったらしい」
「あの夕殿が、でござるか」あたるは驚いた。
「一対一では、そういう機会は無いらしいよ」
「みなみちゃんは美形につられない人でござろうか……」
「乃木坂だってみんな美形だ。それこそ美形の塊のような人達だからね、夕の外見は通用しない可能性がある」
「波平殿だって、イナッチ殿だって世間ではカッコイイのど真ん中の人でござるよ?」あたるは言う。「乃木坂には、どう見えているのでござろうか……」
「自分達を、好きな人、と思ってくれてるんじゃないかな」
「それだけでござるか? じゃあ」あたるは心を一新して、稲見に言う。「イナッチ殿は、乃木坂を、みなみちゃんを、どう思っているでござるか?」
「好きだけど、手の届かない人」稲見は微笑んだ。「でも、ずっと好きでいる人、かな」
「小生は、最近になって、ようやく、推しを俺の嫁、と呼べる気持ちがわかってきたでござる」あたるは薄く微笑みを浮かべた。「はじめは、恐れ多く、そんな表現は小生にはとうていできなんだ。けど……、最近、もうかれこれ十年でござるからな。嫁と呼びたい気持ちも出てきたでござるよ」
「呼べばいい」
「いや簡単に言うでござるけどな!」あたるは面食らう。「心の準備があるのでござるよ、何事にも!」
「そう」
「はい、出来たよ~」
 夏男は、湯気ののぼるコーヒーを二人の前へと運んだ。シュガーとミルクも一つずつ添えて置いた。壁掛け時計の時刻は午前十一時を少し過ぎていた。
「いつかのみなみちゃんのブログのコメントに、夕が、みなみちゃんは、可愛いの代名詞だ、と書いたらしいんだけど、それを聞いた時、ぴったりの表現だと思ったよ」稲見はそう言ってから、温かいコーヒーを一口すすった。「代名詞、という言葉の意味を、改めて調べてみてほしい。みなみちゃんが可愛いの代名詞、という表現は、ぴったりだよ」
 姫野あたるはテーブルに置いていた携帯電話を手に取って、早速調べてみる。
「代表的…、典型的なもの、そのものをよく表している例。名の代わりに、人、事物、場所などを指示するのに使う語…、転じた俗用で、代表的、典型的なもの、そのものをよく表している例……と書いてあるでござる。例えば、エジソンは発明家の代名詞だ」
「そう、みなみちゃんは可愛いの代名詞だ」稲見はにこやかに言った。「見事に表してる」
「可愛いの天才、の方があざとさと天然な感じが出てるでござる」
「プロと比較しちゃいけないよ。あくまでライセンスの無い状態での話だ」稲見はそれから、思い出したかのように言う。「そう、夕は後、みなみちゃんは可愛いのチャンピオンだともよく言ってたね」
「可愛いのチャンピオン……」あたるは微笑む。「そっちの方が好きでござる!」
「五期生は、可愛いかな」稲見は思い耽りながら囁いた。「一期や二期、三期、四期との出会いは一目惚れの連続だった……」
「五期も可愛いでござるぞ~! なんたって乃木坂、でござるからな!」あたるは満面の笑みで言った。「世界的に清楚な美女軍団でござる!」
「応援するのみだ」稲見は言った。
「で、ござるな」あたるは深く頷いて、コーヒーをすすった。
「星野みなみさんは卒業しちゃうんだよねえ?」夏男は言った。二人が夏男に注目する。「その星野みなみさんのポストを、埋めちゃうぐらい可愛い人が五期で来てくれるといいね」
「ふふん、夏男殿」あたるは笑顔で言う。「実は、もういるんでござるよ。可愛すぎる人達はいるんでござる。綺麗な人も可愛い人も、乃木坂には沢山いるんでござるよ」
「そうですね」稲見も、こちらを振り返った夏男に頷いた。「みなみちゃんは、確かに正真正銘、可愛いの権化です。でも、それはキャラというか、印象というか、イメージの役割が大きいんです。実際に比べようがない可愛い人達は乃木坂の全員がそうです」
「へぇ~」夏男は驚いてから、コーヒーをすすった。「最強だねえ、乃木坂って……」
「だけど、やっぱり最強で言ったら、みなみちゃんが可愛いの最強じゃないかな」稲見は思いながら発言する。「声も、可愛いし。何て言うか、しゃべり方も、可愛い……。性格も、可愛いと思うし、弱さも強さも、可愛いと表現できてしまうような人です。容姿は、言うまでもなく最強に可愛いですし」
「逆に、可愛いの一言じゃ表現できぬ人もいるでござるよ」あたるは笑顔で言う。「齋藤飛鳥ちゃんのような」
「ああ、知ってるー。飛鳥ちゃんね」夏男は大きく頷いた。
「そんな中、可愛いの一言が強烈に印象づくのが、星野みなみちゃんです」稲見は夏男に言った。
「乃木坂、深いねぇ……」夏男は渋い顔でコーヒーを飲んだ。
「突然でござるが、夏男殿は、その……どうしてそういう顔をしているのでござるか?」
「ダーリン」稲見はあたるを見つめる。