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手袋を買いに行ったら大好きな人ができました2

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 禰豆子が地面に落ちる前に抱きかかえて守れば、大怪我はしないですむかもしれない。悩む時間はありません。炭治郎たちが足場から飛び下りようとしたそのとき、大きくて真黒な鳥が一羽、ビュンっと飛んでくるのが見えました。
 鳥は、禰豆子のマントをくちばしに銜えると、ゆっくり谷間へと舞い降りていきます。ホッとして、炭治郎たちは急いで崖を下りていきました。

「禰豆子ぉっ!!」
「禰豆子ちゃぁぁあぁあぁぁんんっっ!!」
「子分その三っ、大丈夫かっ!!」

 谷間に足がついたと同時に、三人は禰豆子の元へと一目散に駆けていきました。
 禰豆子はカタカタと震えています。炭治郎たちは禰豆子をぎゅっと抱きしめて、よかった、よかったと、泣きながら喜びました。
「ごめんね、お兄ちゃん。善逸さんと伊之助さんも。心配かけちゃった……」
 ぽろりと涙を落とした禰豆子に、善逸が大きな声で言いました。
「禰豆子ちゃんが悪いんじゃないよ! 伊之助がいきなり大きな声出したからだぞ!!」
「なんだとぉ!! お前だって、子分その三が落ちそうになったら助けるとか言っといて、なんにもできなかっただろうがっ!!」
 泣きながら伊之助を睨んだ善逸に、伊之助も大きな声で怒鳴り返します。険悪な二人に、炭治郎と禰豆子は涙を拭くと、二人の喧嘩を止めようと慌ててあいだに入りました。
「禰豆子は無事だったんだ、それでいいじゃないか! 喧嘩をするのはやめないか!」
「お願い、喧嘩しないで。私が悪かったの! 二人が喧嘩することじゃないでしょ」
 一所懸命に炭治郎と禰豆子が言っても、二人ともむぅっと顔をしかめていて、不満が消えたわけではないようです。それでも睨み合うのはやめてくれたので、ひとまず喧嘩はおしまいでしょう。ホッと胸を撫で下ろした炭治郎の耳に、聞き慣れない声が聞こえてきました。

「騒がしい奴らだな。そもそもこんな夕暮れに、崖を下りるのが悪いんじゃねぇか」

 ビックリしてみんなが顔を向けると、いつの間にか鳥は消えていて、代わりに大柄な少年が腕組みして立っていました。
 炭治郎たちを睨む少年の顔には大きな傷がありました。逆立てた髪や黒い服も相まって、見た目はちょっと怖い感じのする少年です。
「え? 誰?」
 思わず呟いた善逸に、少年はチッと舌打ちすると、さっさと踵を返して立ち去ろうとしました。
「ま、待って! ねぇ、君! もしかして君は風柱様の眷属なのかな」
 慌てて呼び止めた炭治郎を、少年は不機嫌そうな顔で振り返り見ました。
「だったらなんだよ」
「やっぱり! それじゃ、禰豆子を助けてくれた鳥は君なんだな! ありがとう! おかげで禰豆子は大怪我をしなくてすんだよ、本当にありがとう!」
 少年に走り寄って礼を言う炭治郎を見て、善逸や伊之助、禰豆子も急いで駆け寄ってきました。
「助けてくれてありがとうございました!」
 禰豆子と一緒に善逸も少年に頭を下げます。伊之助は頭こそ下げませんでしたが、助かったぜお前も俺の子分にしてやってもいいぞと、伊之助なりにお礼を言いました。
 炭治郎たちが本当に嬉しそうに感謝するのを見て、少年は少し照れたようです。
「べつに、そんなにお礼なんか言わなくてもいい。柱の眷属なんだからこれぐらい当然だ。それよりも、もう夜になるぞ。お前らはお参りに来たんじゃないだろ、なんの用で来たんだ?」
 照れくさいのかぶっきらぼうに言う少年に、炭治郎は慌てて言いました。
「風柱様にお逢いできるかな。俺たちは洋服屋さんのお手伝いで、風柱様から鳥の羽根を貰っていかなくちゃいけないんだ」
 少年は炭治郎をまじまじと見つめ、やがて、まぁいいだろうとうなずきました。
「ついてきな」
 さっさと歩きだす少年の後を慌てて追いかけて、炭治郎たちはよかったねと笑い合いました。

「でもさぁ、なんでお参りじゃないってわかったんだろう。っていうか、こんなところでお参りに来る人なんていんの? お参りのたびにあの崖を下りるなんて、危なくてしかたないだろ?」

 善逸に言われて、炭治郎と禰豆子も首をひねりました。
 たしかにそのとおりです。柱様のお住まいであるお社には、『災い』から守ってもらった動物たちが、感謝を告げにお参りにやってくるものです。これからもお守りくださいとお祈りだってするのです。崖下の谷間に、みんなどうやってお参りに来るのでしょうか。思い返してみれば、ほかの柱様達のお住まいだって、たやすく行ける場所ばかりではありません。
 不思議に思っていると、炭治郎たちの会話が聞こえたのでしょう、少年が振り返ることなく言いました。
「お参りやお祈りに来る奴には、感謝や祈りの度合いによって道が現れるんだ。深い感謝や祈りほど、緩やかな道を進める。どっちでもない奴は、お前らみたいにあの崖を自力で下りなきゃここには辿り着けねぇんだ」
「へぇ! お参り用の道があるのか」
「ズルいっ! そんな道があるなら、そこを通らせてくれたっていいだろっ!」
 少年は振り向くと、わめく善逸をムッとした顔で見やり、不機嫌な声で言いました。
「神だったら誰彼かまわず願いを聞いてくれるなんて思うなよ? 楽して願いを叶えてもらおうなんて、虫がよすぎるんだよ。苦労して勇気を振り絞って辿り着いた奴じゃなきゃ、神は願いを聞き届けたりしねぇ」
 少年の言葉に、炭治郎たちは顔を見合わせました。それではきっと、今回の試験はこの崖なのでしょう。対価にするお弁当も持ってきてはいましたが、どうやら今日もお遣いは無事に果たせそうです。

「おい、そいつらァなんだ。俺の住まいになんの用だァ?」

 しばらく歩いていくと、どこからか声が聞こえて、少年が立ち止まりました。
「兄貴、こいつらお遣いで来たらしいぜ」
 少年が言うと、炭治郎たちの目の前でビュウッと旋風が巻き起こり、銀の髪をした傷だらけの男の人が現れました。眷属の少年は兄貴と呼んでいましたが、きっとこの人が風柱様でしょう。
「初めまして、風柱様。俺は狐の炭治郎、こっちは妹の禰豆子で、友達の善逸と伊之助です! 今日は洋服屋さんのお手伝いで、風柱様のお住まいにいる鳥の羽根をいただきに来ました!」
 炭治郎はいつものように元気よく言いました。すると風柱様は炭治郎の胸元を見て目をすがめると、フンと鼻を鳴らしました。じろじろと炭治郎を眺めまわす目はいぶかしげです。
「……洋服屋だァ?」
「はい! 森の外れにある洋服屋さんです! とってもきれいで、とぉってもやさしい人です!」
 自慢げに言った炭治郎に、風柱様はなぜだか不機嫌そうに舌打ちしました。
「欲しいもんがあんなら、てめぇで取りに来りゃあいいじゃねぇか。それをこんなガキどもに来させる奴の、どこがやさしいってんだァ?」
 馬鹿にしたように言って、風柱様はフイッとそっぽを向いてしまいました。その様子には、炭治郎も思わずカチンときます。
 だって洋服屋さんにはお店があるのです、自分で来られなくてもしかたないではありませんか。