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手袋を買いに行ったら大好きな人ができました 3

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 女の人が手を離し立ち上がり、炭治郎は、ようやく自分が青い光に包まれた不思議な場所にいることに気がつきました。禰豆子たちの姿はどこにも見えません。柱様たちと無惨が戦う激しい音も聞こえません。ただ静かで穏やかな空気に満ちた、青く清浄な光のなかに炭治郎は跪いていました。

「身を捧げるという意味が本当にわかっているのか? 狐の子」
「幻覚を見せて動物を食べる『災い』もいるんだよ? もっと用心しなくちゃ駄目だよ」

 炭治郎に声をかけてきたのは、白い狐の面をつけた宍色の髪をした男の子と、同じく狐面をつけて花柄の羽織を着た女の子でした。男の子が白い羽織の下に着ている着物の柄は、義勇さんのベストの柄と同じものです。水柱様の羽織の半分とも同じでした。
「狐の子……自分の言葉に責任は持てますか?」
 きれいな女の人の言葉に、炭治郎は強くうなずきました。女の人の着物は、義勇さんのベストのもう半分、水柱様の羽織の半分と同じでした。

 もう炭治郎にもわかっていました。この女の人が誰なのか。狐面の二人が誰なのかも。
「はい、先代水柱様、眷属の方々。俺にできることならなんだってします!」
 いったいここがどこなのか、なぜ、ただの狐の子である炭治郎がお隠れになった神様とお逢いできたのか。それはまったくわかりませんでしたが、たった一つ炭治郎にもわかることがあります。炭治郎にも、水柱様のためにできることがあるのです。それだけわかれば、炭治郎には十分でした。
 もしも自分の身を捧げることで水柱様が……義勇さんが無事でいられるのなら、それでかまわないのです。禰豆子たちは泣くでしょうが、禰豆子のことはきっと善逸が守ってくれるでしょうし、伊之助だっています。炭治郎は心配なんてしていません。義勇さんにも叱られるでしょう。どうしてそんなことをしたと、もしかしたら嫌われるかもしれません。
 それでも。もしも義勇さんに嫌われたとしても、義勇さんが無事でいてくれるなら、いつかご伴侶様や神嫁様を迎え入れ幸せに暮らしてくれるなら、炭治郎はそれだけでよかったのです。
 敬愛する水柱様。大好きな洋服屋さん。ただの狐の子である炭治郎に、真名を教えてくれた義勇さん。大好きで大好きで、誰より大好きなその人から、悲しくて寂しい匂いが消える日がいつか訪れるには、無事に生きていてくれることがなにより大事なのですから。

 じっと見つめる炭治郎に、先代水柱様は静かに微笑みました。

「では、あなたに柱たちを援ける力を授けましょう。私の大切な弟を、どうか手伝ってあげてくださいね。天狐の血を引く、日輪の力を宿した子供よ……」

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇