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手袋を買いに行ったら大好きな人ができました 3

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 炭治郎たちの驚きを察したのか、お館様は楽しそうに笑いました。
「名前には大事な意味と力がある。名によって存在は確かなものとなり、場合によっては相手を縛る戒めともなるものなんだよ。そして、柱というのは、自分が見込んだ者にならば力を貸そうとするものだ。君たちに名前を教えたのなら、それは君たちに見込みがあると認めたということさ。まぁ、多少は柱同士のお付き合いというのもあったかもしれないけれどね」
「お付き合いですか?」
「よくわかんねぇけど、柱も俺様の力を認めたってことだなっ」
「伊之助ってどうしてそんなにお気楽なんだよ……。っていうか、お館様の前なんだぞっ。お行儀よくしろよっ」
「でもお名前を教えてもらえていてよかったね。お遣いができるもの」
 たしかにそうだと納得しあった炭治郎たちに向かって、お館様は笑いながらうなずくと、ゆっくり手を上げました。その手にはいつの間にか藤の花が一枝握られています。
 お館様はその藤の花で、炭治郎たちの頭を撫でるように腕を振りました。ひらりと藤の花が振られるたび、炭治郎たちの体のなかに、澄んで気持ちのいい空気が流れ込んでいくようです。朝からえっせえっせと雪のなかを歩いてお腹もペコペコだったはずなのに、ぐんぐんと力がみなぎってくるではありませんか。
「さぁ、私のかわいい子供たち。この藤の花を持ってお行き。無限城には日が差さない。時の流れも曖昧になる。だから、この藤の花をよく見ておいで。この藤の花がすべて枯れ落ちたとき、年が替わる夜がくる。その前に無限城を崩さなければ、キメツの森は『災い』の大群に襲われるだろう。そうなっては、柱の結界もいつまでもつかわからない。いいかい? 夜になる前に無限城に柱を呼び込み、無限城を打ち崩すんだ。そうすれば『災い』たちも森を襲うどころではなくなるからね。君たちの勇気と知恵と絆で艱難辛苦を乗り越えて、柱たちの手助けをしてやっておくれ」
 神妙にうなずいた炭治郎に藤の花を手わたしたお館様が手を打つと、お子様方がやってきて、炭治郎たち一人ひとりに不思議な文様が描かれたお札をくれました。
「珠世さんと愈史郎さんから、助けてもらったお礼だそうだよ。きっと君たちの役に立つだろうから、身に着けていくといい」
「お館様は珠世さんたちをご存じなんですか!?」
 ビックリして炭治郎が聞くと、お館様は小さく笑って言いました。
「彼女たちの存在は昔から知っていたけれど、顔をあわせたのは初めてだよ。逢えたのは君たちのおかげだね。珠世さんたちはね、君たちにお礼がしたいと社に来てくれたんだよ。きっと無限城に行くのは君たちになるだろうと言ってね。神である私の元を訪れるのは恐ろしかっただろうに、よほど君たちが気に入ったとみえる」
「あの、珠世さんと愈史郎さんはどうなるんですか? 柱様たちは『災い』を全部退治しようとしてるんですよね?」
 お館様はお目溢しくださったかもしれませんが、どんなにやさしくとも珠世さんたちは『災い』なのです。柱様たちに見つかったらきっと斬り祓われてしまうでしょう。
 危険を承知でお社を訪れ、力を貸そうとしてくれた珠世さんたちが斬り祓われてしまうかもしれないと思うと、炭治郎は心配でたまりません。禰豆子たちも不安そうです。
 そんな炭治郎たちを安心させるように、お館様は大丈夫だよと言ってくれました。
「彼女たちは奥の座敷で天からの沙汰を待っているよ。珠世さんは無惨によって『災い』にされてしまったけれど、もともとはハマナスの花の精だったんだ。無惨は戯れに精霊や動物を『災い』に変えてしまうこともあるんだよ。そのせいで家族や友達同士で争って食べあう悲劇が、何度起きたことか……。珠世さんも犠牲者の一人だ。でもね、彼女の魂は穢れをまとってしまったけれど、君たちが務めを果たし無惨が討ち取られれば、今の境遇から抜け出せる。無惨討伐の手助けをした功によって、魂を浄化するために天に昇ることが許されるんだ。これ以上無惨の犠牲者が増えぬよう、そして珠世さんたちが救われるためにも、頑張っておくれ」
 それを聞いて炭治郎はますます張り切りました。伊之助も鼻息を荒くしていますし、禰豆子と善逸も顔を見合わせてうなずき合っています。善逸はまだちょっとビクビクとしていて、しっぽが足に巻き付いてしまっていましたけれど、それでも行くのをやめるとは言いだしませんでした。
 お子様たちが座敷の襖に手をかけると、お館様は静かにそちらを指差しました。それに合わせてお子様たちが音もなく襖を開いていきます。
 開かれた襖の先には、暗闇が広がっていました。

「さぁ、お行き。炭治郎。禰豆子。善逸。伊之助。私のかわいい子供たちよ。柱の加護が君たちとともにありますように」

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇