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手袋を買いに行ったら大好きな人ができました 3

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「善逸、伊之助、よく見たらあの針、現れてから飛ぶまでにほんのちょっとだけど間があるみたいだ。それにホラ、今度の部屋には襖が正面の一つしかない。針はまっすぐにしか飛べないみたいだし、いっぺんに何本もは現れてないよ。針が飛んでくる前に避けながら進めば、襖に辿り着けるんじゃないかな!」
「けど、針がどこに出てくるかわかんねぇぞ? 出たのを確かめてからじゃ間に合わねぇ」
 伊之助が唸りながら言うと、禰豆子がそうだ! と善逸を振り返り見て言いました。
「善逸さんなら音でわかるんじゃないかしら。だって善逸さんはすごく耳がいいもの。ねぇ、善逸さん、針が現れるときになにか音がしていない?」
 禰豆子に言われてしまえば、善逸が断れるわけがありません。ビクビクと入り口に近づいて耳を澄ませた善逸は、うーん、と頭をひねりました。
「たしかにちょっとだけ音がしてるっぽいけど……小さすぎて飛んでる針の音に紛れちゃうなぁ。これじゃ聞き分ける前に刺されるのがオチだよ。無理だってぇ」
 思い切り眉尻を下げて言う善逸に、けれど禰豆子はにっこりと笑います。
「こういうときこそ、洋服屋さんの呪文の出番じゃない!」
「うん、試してみる価値はあるよ! ホラ、善逸!」
「うぅぅ、あーもぅっ。一二三四五六七八九十の十種の御寶!」
 やけくそのように叫んだ善逸の声に応えて、善逸の耳当てで銀の鈴がきらきらと光り、リィィーンと澄んだ音を響かせました。
「うわっ、さっきより音がはっきりわかる!」
「針が現れる音は? わかるか? 善逸」
「んーと……あ、わかる! なにこれすごい!」
 聞き耳を立てながら言う善逸に、炭治郎はよしっとうなずくと、走り出せるようにかまえました。
「善逸、針が出た方向を教えてくれ。行くぞ!」
 言うなりパッと部屋に飛び込んだ炭治郎の背中に「右斜め上っ!」と善逸が声をかけます。サッと炭治郎が避けると、飛んできた針が床に突き刺さりました。
 今度は左、次は正面と、善逸が必死に声を張り上げ針の現れる場所を教えてくれるのに従って、炭治郎も右へ左へと飛び跳ねては、寸でのところで針を避けつつ走って行きます。
 あともう少しで襖を開けられるぞ。炭治郎が思った瞬間、善逸の悲鳴のような声が響きました。

「上と後ろぉぉっ!!」

 横に飛んで避けたら襖を開けられない。炭治郎がそう考えたのと、床を蹴って襖に向かって飛び込むように体当たりしたのは、ほとんど同時でした。襖が吹き飛んで、炭治郎は次の部屋に転がり入ります。
 針は炭治郎のしっぽを掠めて、炭治郎に刺さることなく消えたようでした。少ししっぽの毛は千切れてしまいましたが、針が体に刺さっていたら大怪我をしていたでしょう。しっぽの毛だけで済んでよかったと、炭治郎は大きく息を吐きだしました。
「やったぜ、権八郎!」
「お兄ちゃんっ、大丈夫!?」
 振り返って伊之助たちを見れば、飛び交っていた針が消えています。
「針が飛んでこなくなった……? もしかして次に部屋に進むと罠が消えるのかな」
 禰豆子たちも同じことを考えたのでしょう。恐る恐る部屋を覗き込んで、聞き耳を立てた善逸が大丈夫なんにも音はしないよと言った途端、一目散に炭治郎の元に駆けてきました。
「炭治郎ぉぉっ、良かったよぉぉぉぉ! 最後の針、絶対に刺さると思って怖かったぁぁぁっ!! 最後だけいきなり二本同時に出るとか反則だぁぁぁぁ!」
 泣きながら抱きつく善逸の背中をポンポンと叩いて宥めてやりながら、炭治郎は、部屋のなかを見回しました。今度はまた小さい部屋ですが、先ほどと同じく襖は一つだけです。
「善逸のおかげで助かったよ! さぁ、先に進もうか!」
「あ、待ってお兄ちゃん。怪我したところを先に治してもらったほうがいいんじゃない? もし毒でも塗ってあったら大変だもの」
 禰豆子が言うと、善逸が慌てて首にぶら下げていた小袋を開きました。
「嘘っ! ヤバいよ、炭治郎っ。洋服屋さんがくれた布、もうあんまり残ってないぜ!?」
「えっ!? 本当に!?」
 ビックリしてみんなで覗き込むと、たしかに最初はいっぱいあった布も、今はもう十枚もなさそうでした。恋柱様や岩柱様のところでかなり使ってしまっていたことを、炭治郎たちはすっかり忘れていたのです。
「しかたない、万が一に備えて、小さい怪我にはこの布は使わないでおこう」
「そうだね。でもお兄ちゃん、その怪我だけは治したほうがいいと思うの。それこそ万が一ってことがあるでしょう?」
「そうだよ、毒針だったら大変なことになっちゃうぜ?」
 禰豆子と善逸が言い募るので、炭治郎も素直に、禰豆子に頬の怪我を治してもらいました。残りの布を数えてみると、八枚しかありません。
 これからは十分怪我に気を付けようと気を引き締めあって、炭治郎たちは次の襖を開けました。

 次の部屋が待っていると思っていた炭治郎たちは、目の前に広がった景色に茫然としてしまいました。

「……なんだ、これ……本当に迷路だ」

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇