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手袋を買いに行ったら家族が増えました

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「派手に祈ってやるから、絶対に助かれよ。炭治郎」
「炭治郎、頑張って。また一緒にお弁当を食べようよ」
「炭治郎くん、わかりますか? みんながあなたを信じてますよ? 戻っていらっしゃい、私たちの末っ子さん」
「てめぇは生意気だし水柱は気に食わねぇが、柱が消えるのはもっと胸糞悪ぃからなァ。おい、玄弥。おめぇも祈れやァ」
「言われなくても祈ってるよ! 俺だって炭治郎は気に入ってんだ。なぁ、炭治郎、治ったら禰豆子たちも一緒にさ、また空飛んでやるから、絶対に治れよ!」
「た、炭治郎、頑張って! 禰豆子ちゃんたちも、頑張って……っ」
 口々に柱や眷属の子たちが声をかけるなか、炭治郎の傷が一つずつ癒えていきます。
 治れ、助かれと、禰豆子も善逸も伊之助も、必死に祈りながら傷を拭いました。そして、とうとう傷は残り一つとなりました。
「どうしようっ、もう布がないよっ!!」
 善逸が泣きながら小袋を逆さに振っても、残しておいた八枚の布は使い切ってしまっていて、どうしようもありません。塞がらない傷からまだ神気は零れ落ちていきます。
「炭治郎……一緒にご飯を食べて、一緒に眠るんだろう? 俺と一緒に、ずっと……」
 言いながら、義勇の手が炭治郎の最後の傷に触れました。
 額に汗を浮かべながら、義勇は疲れ切った体で神気をわずかずつ、手のひらから炭治郎に与えました。魂を変えてしまわないよう、少しずつ、少しずつ。それは無惨との戦いで自分も傷ついていた義勇にとっては、並大抵のことではありませんでした。神気を上手くコントロールできるほど、義勇に残された神気も多くはありません。眉間には深い皺が刻まれ、汗も流れ続けます。
 けれど。
「洋服屋さん……ううん、水柱様。お兄ちゃんをどうか助けてくださいっ!」
「水柱様、炭治郎を助けてっ! 炭治郎は本当にいい奴なんだよぉっ!!」
「なんだって手伝ってやるよっ、だから頼む……炭治郎を助けてくれっ!!」
 一心に祈る禰豆子たちの言葉が、心が、義勇に力を与えました。

「まさに手当てですね……。冨岡さん、もう大丈夫。炭治郎くんは助かりましたよ」

 蟲柱のやさしい声は、少し涙ぐんでいるように聞こえました。その声にハッとして、義勇や禰豆子たちが炭治郎の顔を見ると、血の気を失っていた頬に赤みが差して、息も穏やかになっています。
「炭治郎……っ」
 義勇が強く炭治郎を抱きかかえたのと、よかったぁと口を揃えて言った禰豆子たちが、くったりと倒れこんでしまったのは同時でした。
 疲れ果てた体に瘴気を浴びたうえ、必死に祈り続けていた緊張の糸が切れたのでしょう。慌てた柱たちは、すぐにグゥグゥといびきをかきだした伊之助や善逸に、思わず顔を見合わせ、やがて大きく笑いだしました。
 義勇もまた、小さく泣き笑いながら、炭治郎を抱きかかえたまま、眠る禰豆子たちの頭をそっと撫でました。

 『災い』たちとの戦いは、まばゆい朝日のなかに響く楽しげな笑い声で、本当にすべて終わったのでした。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇