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【APH】無題ドキュメントⅦ

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「…そうね。有難う」
ハンガリーは前を歩く子どもを見つめ、二階へと続く階段を見上げた。自分とは全てが違う、逞しく、生きることと強くなることそれだけのために略奪し、奪ったもの全てをその身の糧としていった背中を思う。




 マリア、あなたは今度は絶対に離さない手を見つけたの?













 招いた書斎のランプを灯し、プロイセンは背後を見やる。雑多な室内を見回し、オーストリアはプロイセンを見やった。
「凄い本の量ですね」
「お前のとこ程じゃねぇけどな。ま、そこにでも座れ」
唯一、物の置かれていないソファを顎で指し、プロイセンは机に凭れる。それを見やり、オーストリアは口を開いた。
「ルートヴィッヒのことですが、私が面倒をみます」
「…いいぜ。その代わり、条件がある」
「条件?」
「偶数月はお前のところ。奇数月は俺のところに返して貰う」
「…嫌だと言ったら?」
「嫌だと言うんなら連邦を抜ける。…そうなると困るのは、誰、だろうな?」
赤い目を細めたプロイセンをオーストリアは見つめる。頷くしかない。
「…解りました」
頷いたオーストリアを見やり、プロイセンは視線を逸らすと背後の大きな窓の外を見やる。既に夜の帳が落ち、群青に空は染まり始めていた。
「…プロイセン」
「何だよ?」
視線を返す。ランプの明かりにオーストリアの影が揺れる。
「…どうして、あの子は再び、あらわれたのでしょうか?」
殺して欲しいと口にした神聖ローマ。この世界から、消えてしまうことを望んでいた。
「…遣り残したことでもあったんだろ」
「…そうですね。…そうかもしれません」
呟き、それきり黙りこんでしまったオーストリアをプロイセンは見やる。そして、思う。

…オーストリアではなく、どうして、俺を選んだ?

あの子どもは強くなりたいと言った。そして、強くなる為にはオーストリアの元では駄目なのだと。

 プロイセンと言う国は人造国家だ。人が寄り集まり、それが国家と言う形になった。自分は領土も民も持たずに、この世界に放り出された異端者だ。その異端者は領土を略奪することで、国となった。だが、本当に自分は国という存在だったのか…?

 今でも、プロイセンには自分が何者であるのか解らない。ただ、国でいようと足掻いてきただけではなかったか。

 人によって造り上げられた、模造の国。
作品名:【APH】無題ドキュメントⅦ 作家名:冬故