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忘れないをポケットに。

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「うーん。そう、思うけど」絢音はしぶく頷いた。
「この際だから、新しく決めればいいんじゃないですか?」瑠奈は皆に確認を求めるように提案した。「納得いくように、てか……。うんそう、納得できるように」
「じゃあ、多数決?」璃果は皆の顔を見回して言った。「え私らも手ぇ上げていいの?」
「マジか~」来栖は笑う。
「いいよ。じゃあ、挙手制で、ここにいる女神様たちも含めた、全員参加の多数決行こうか」夕は落ち着いたふうに言った。「じゃあ司会者、きいちゃん。お願いします」
「私ぃ?」日奈子は眼を見開いて驚いてから、すぐに微笑んだ。「えー、じゃあ。……夕君がいいと思う人~」
 磯野波平以外の、その場の全員が手を上げていた……。
「はい、じゃあ決まりで」日奈子は可笑しそうに笑う。「てか決まってんじゃんこんなの」
「チャンスはありましたよ、磯野さん」来栖は磯野に言った。「おしかったですね」
「が、がびーん……」磯野はまぬけづらでフリーズしている。
「アホか、てめえ」天野川は呆れている。
「イナッチもいい線行くと思ったけどねえ」日奈子はにこやかに言う。「夕君なんだねえ、やっぱり。イナッチが手ぇ上げちゃってんもんねえ」
「夕しかいないよ。適任だ」稲見は頷いた。
「お腹すいた……」祐希はメニュー表を広げながら、呟いた。「馬刺し、この前の美味しかったんだよな~……ど~れだったっけな~……」
「みんな、何か頼も」夕はにっこりと微笑んだ。
 各々が好んだメニューを注文した。受けたのは電脳執事のイーサンである。ちょうど先程注文した品も、只今届いたところであった。
 風秋夕が、電脳執事のイーサンに最高のBGMをと、乃木坂46の『アクチュアリー』をエントランスフロアに流すように指示した。
 比鐘蒼空は、目立たない仕草で、両耳からイヤホンを外した。
「この曲、深すぎて……」夕は笑みを浮かべる。「色んな人が、色んな比喩(ひゆ)を持つんだろうなー……」
「飛鳥ちゃんと美月ちゃんのよう、あの、なんてえの、あの踊ってる時の艶やかな顔!」磯野は太ももを叩いて笑った。「あ~れやられちゃうと、こっちゃあもう、ズッキュンでしょうがあ! があ~っはっは」
「ダンスと歌詞が気になって、どっちに眼をやっていいかわかんなくなるんですよ~」来栖は苦笑した。「何回も巻き戻しして、何回も観ちゃうんですけどね~」
「ダンスはあれ、難しいんだろうな?」磯野は適当に皆を見つめる。「普通じゃねえだろ?」
「てめえの普通って何だよ」天野川は吐いて捨てた。
「好きになってみた、神じゃないですかー?」兎亜は乃木坂46のメンバーを見つめていく。「あーの可愛らしい楽曲と歌詞にのって乃木坂が踊ったら、ステージじゃヤバすぎる事になるわよきっと~!」
「俺も今期で一番好みだね」稲見は低い声で囁いた。
「めっちゃいいでござる~!」あたるは何度も頷いてみせる。「歌詞がヤバいでござる~! それに、曲も名曲でござる!」
「可愛いですよね。わたくしも好きですわ」咲希は凛々しく微笑んだ。「恋をしたくなるもの……」
「呼んだかい?」磯野はハンサムに横目で咲希を見つめる。
「呼んだ覚えはありませんわ」
「価値あるもの!」来栖は人差し指を立てて微笑んだ。「神曲ですよねー! 僕なんか鳥肌立っちゃいましたよ~」
「何度もリピってる」レイは笑顔で言った。「いい曲ですよね~」
「今期で一番好きだな」夕は無邪気に笑った。「この曲のメロディも歌詞も、また歴史に名を食い込ませるだろうなーっていう名曲感、ヤバいよね」
「曲も歌詞も神ってる!」兎亜は半眼を全開にして興奮した。「秋元先生さすがだわ~、ファン心理くすぐられるわ~」
「まだ非公開の曲なんかも、楽しみにしてて下さいね」絢音は上品に微笑んだ。
「絢音氏が笑ったわ~」兎亜は大袈裟に驚いてみせる。「こんな、間近でよ!」
「笑いますよ~」絢音は更に微笑む。
「ざきさんも笑ってらっしゃるわ」咲希は驚いた様子で、口元を隠した。「というか、乃木坂が笑っていますわ……」
「何、乃木坂が笑うのが貴重なの?」怜奈は小首を傾げて微笑んだ。
「うわあ、い~まのれーなち、か~わいいー」来栖は喜ぶ。
「で、てめえは何で鼻の下伸ばしてんだ」天野川はきつい眼で磯野を一瞥した。
「ほっとけよ~ん、ふう~」磯野はとろけそうな笑みを浮かべている。
「でも、今は乃木坂にかつてない事が起こってると思うんです」来栖は急に、真剣な面持ちで言った。「どうフォローしていこうか、検討してます」
「かつてない? そう?」夕は眉を上げて、来栖を見つめた。「俺の父親とイナッチの父親の創設した会社って、初期はデート・クラブの会社だぜ?」
「え?」稲見は驚く。「それは、本当に?」
風秋夕は頷く。「だから、ファースト・コンタクト、ていう名前なんだよ。出会い、な。まだデート・クラブが法的に規制されてないどうどうとした合法の時、うちらの父親達は利益やステータスの向上を考えて、今できる事を創造したんだよ。それが、形を変えていき、やがては今の企業に至るわけだけど。つまり、肝心なのは表舞台に立ってからなんだ。過去を悔やむ時間は経験値として焼き付けとけばいい。振り返る必要はない」
「夕さんは、今の乃木坂は、ピンチじゃないと?」来栖は真剣な眼で夕を見つめる。
「全然」夕は肩を上下して、微笑んだ。「歴史的に考えても、破壊の後には必ず再生がある。そこが重要なんだ。傷を負う事は決して単なるダメージだけじゃないんだぜ?」
「生物の体組織でも同じ事が言えるね」稲見は眼鏡の位置を片手で直しながら言う。「風邪をひけば、抗体ができ、耐性ができる。これは歴史的に見ても、現実社会にも同じことが言える」
「フォローじゃなくて、受け入れるキャパだ、リッスン」夕は来栖にウィンクした。
「受け入れるキャパシティかあ~」来栖は子供の様に喜ぶ。「うわ~、こおんな話ができるなんて、僕ここに入れて本当に光栄に思うよ~」
「だとしたら、わたくし、乃木坂を想う気持ちに一変の欠片さえありませんわ」咲希は言った。」
「あたいだって微塵もないわ」兎亜は言う。「知名度のなかった一般人達が、乃木坂というエリートに育てられていくのが萌えるんですもの」
「ありがとう~」日奈子は微笑んだ。
「ざざんざざぶんが好きなんですか?」あやめは思っていた事を来栖にきいた。
「うん!」来栖は微笑む。「あやめちゃん達の大恋愛に、興味あるな」
「大恋愛?」あやめは気づく。「あーあ、歌詞かぁ……」
 電脳執事のイーサンのしゃがれた老人の声で、注文したフードとドリンクが〈レストラン・エレベーター〉に届いた事が知らされた。
 風秋夕と稲見瓶が、キャスタの付いた移動式のキャビネットに載せて、それらをソファのテーブルへと運んだ。
 エントランスに流れる楽曲が、乃木坂46の『ロマンスのスタート』に変わる。
「きいちゃんの思い出、いっぱいあるでござる!」あたるはプリンを食べながら日奈子をぐ、と見つめた。「きいちゃん、可愛いでござるよ~……」
「お前、泣くなよ」磯野は座視で囁いた。
「きいちゃんの最近の一番の可愛い、あるよ」夕は楽しむように微笑んだ。
「何かな?」稲見は興味心をそそられる。