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忘れないをポケットに。

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二千十三年に乃木坂46二期生として誕生した北野日奈子が、今宵、このライブで乃木坂46を卒業するのである――。
〈映写室〉の巨大なスクリーンには、フリーズしたいつかの北野日奈子が映し出されている。ビッグサウンドでBGMが流れている。乃木坂46のインストがランダムで流されていた。
 風秋夕(ふあきゆう)はまっすぐに、巨大なスクリーンに映し出されている北野日奈子を見つめていた。
 彼女は気高い笑みを浮かべ、ダンスの途中で切り取られている。
 稲見瓶(いなみびん)は腕時計を確認する。
 時計の針が、このラストステージの幕開けが間もない事を知らせていた。
 比鐘蒼空(ひがねそら)は、イヤホンを両耳からゆっくりと外すと、情的な仕草で眼を瞑った……。
 磯野波平(いそのなみへい)は、腕組みをしてその時を待つ。
 駅前木葉(えきまえこのは)は、静かに泣き始めていた。
 姫野あたるはひたむきに、そのスクリーンの北野日奈子を見つめている。
 天野川雅樂(あまのがわがらく)は、爆発しそうである胸の鼓動に手を当てる。
 来栖栗鼠(くるすりす)の微笑みが、弱くなっていた。彼は巨大なスクリーンを見上げている。
 宮間兎亜(みやまとあ)は、その瞬間を心待ちにしていた。
 御輿咲希(みこしさき)は、少しだけ涙ぐんでいた。
 会場の映像が映し出される――。
 満員の観客席。
 息を呑む乃木坂46ファン同盟のメンバー達。
 幾つもの紫のサーチライトが、会場を染めている。
 影ナレは阪口珠美と、金川紗耶と、林瑠奈の三人であった。会場から拍手が上がる。影ナレの最中に、感極まった林瑠奈は、「日奈子さん大好きです」と泣いていた。金川紗耶は、「一緒に楽しみましょう!」と言葉にした。阪口珠美は、「皆で日奈子さんへの愛を届けましょう!」と言葉にした。
 空間と同系色と化している装飾には、HINAKOKITANO・グラディエーション・コンサートと銘打たれている。
 会場に光が差し、拍手が沸き上がった。
 VTRに歴代の北野日奈子の姿が、オーバーチャーと同時に映し出されていく。
 紫と白のロングドレスを身に纏った北野日奈子が、センターとして『気づいたら片想い』を披露する――。明滅するライト。大迫力のステージが幕を切った。
 『あの日咄嗟に僕は嘘をついた』が、北野日奈子のセンターで歌われる。歌い舞い踊る乃木坂46の凛々しい眼差しが、このステージの価値を確かなものへと確信させていく。
 和田まあやの掛け声で「きいちゃーん、大好きー!」と乃木坂46が叫んだ。北野日奈子のセンターで『ハウス!』が開始される。北野日奈子を真ん中に挟むように、両脇に二人ずつ、歌いながら微笑み合っては、入れ替わっていく。それから、ステージ上を、会場へと手を振りながら、北野日奈子は歌いながら走った。
 北野日奈子の「今日は最後まで一緒に楽しんでいって下さい!」という煽りから、『ロマンスのスタート』が始まった。センターは北野日奈子である。大迫力の可愛すぎる笑顔の咲くステージであった。
 北野日奈子の「ありがとうございます」で、和田まあやの賑やかなMCトークが始まった。北野日奈子は、このライブが始まるまでは、本当に緊張していて、入って来るまでは、本当にこれは現実なのか疑ってしまうぐらい夢のような光景で。でも四曲やって落ち着いたので、ちゃんとやっていこうと思いますと語ってくれた。
 北川悠理は、北野日奈子を好きだと言い、少しでも支えになりたいと語っている途中で、感極まっていた。
 向井葉月は、自分の心に嘘はつかなくていいんだよと、教えてくれたのは北野日奈子さんであったと語ってくれた。写真を二百枚撮ろうと、一緒にご飯行こうと、語っていた。
 山崎怜奈は、このステージに立つ唯一の同期として、「卒業した二期生も見守ってくれていると思うし、気にかけてくれていると思うので、その気持ちもちゃんと持っていって、日奈子にドンと押し付けますので、ちゃんと受け取って」と語ってくれた。
 北野日奈子のVTRが流れる。最後のライブ、ここまでどうなってそうですか? という質問に対して、一曲目や二曲目は泣いてしまっているんじゃないかなと、北野日奈子は語っている。なんせ最後何で、ちゃんと気を引き締めていきたいと語っていた。
 アンダーライブに足を運んで下さった皆さんに、私達は今、こんな色を放っているから、アンダーライブに足を運ばないファンの皆さんにも伝えてほしいと、北野日奈子は語っていた。

「観なきゃ嘘だぜ、アンダーライブ」夕は上品に微笑んだ。
「確かな感動があるね」稲見も笑みを浮かべた。
「きいちゃん、やべえぐれえ美人だなぁ……」磯野は呆然と呟いた。
「か、感動するでござるふうぅ~……」あたるは既に泣いている。
「きいちゃんさんが笑っていると、安心しますね。決して涙だけじゃないわ」駅前はそう独り言を囁くと、ふと泣きそうになった。
「きいちゃんの笑顔って元気もらえますよね~? 雅樂さぁん」来栖は天野川に微笑む。
「ああ。だな」天野川は、巨大なスクリーンを見つめたままで来栖に答えた。
「可愛すぎますわ」咲希は呟いた。
「ほーんと、同じ女として嫌んなるわ」兎亜も呟いた。
「……」比鐘は巨大なスクリーンに映る北野日奈子に見とれていた。

 『ここにいる理由』がブルーのライトの演出の中始まった。センターは北野日奈子である。いつの間にか、衣装がフランス人形のドレスのような上品な容姿に変わっていた。
 『嫉妬の権利』が紅いライティングの中、北野日奈子のセンターで歌われる。しっとりと感動的に歌う乃木坂46。サビはメロディアスでありながらも激しく、ダンスも感情の込められたものであった。
 夕焼けのようなオレンジのライティングに染まりながら、北野日奈子のセンターで歌って踊られる『別れ際、もっと好きになる』。彼女達は華麗に舞い踊る……。
 駅前木葉は、巨大スクリーンにて舞い踊る北野日奈子をその眼に焼き付ける。
 一生を誓いました。あなたを好きでいる事を。
 やぶりません。その約束を最後に、あなたに最初のお別れを言います。
 乃木坂からの卒業、おめでとうございます。きいちゃん……。
 (まだ行かないでよ、きいちゃん)
 笑顔の似合うあなたに、私も、笑顔で。
 (嫌よ、どうして行っちゃうのですか)
 無限な時間はありません。九年間も、与えてくれたのだから。
 (足りない足りない足りない、嫌だ嫌だ)
 あなたも私も、大人になりましたね。
 (時間を止めて下さい、どうか、神様)
 あなたの向かう先には、未来という幸福と、私達の感謝という道筋があります。
 (どうか、踏み外さないで、進んで下さい)
 あなたの道になります。
 灯台にもなります。
 きいちゃんが私達の道を照らしてくれただけ、照らし返しましょう。
 ああ、大好きよ。きいちゃん……。
 どうか、幸せになろう。
 またね。
「ぎいちゃん、ぎいちゃん、…ぎいぢゃーーーーん!」
 駅前木葉は、子供の様に泣きじゃくる。その眼はこの地上に降り立った天使を見つめるように、涙という光に輝いていた。