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忘れないをポケットに。

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「そう。んふ」日奈子は頷いた。三期生を見る。「でもやめた方がいい。そういう事やると、馬鹿力キャラが定着しちゃうから。色んなとこでしなきゃいけなくなるよ」
「飛鳥ちゃん揺れてんねー」夕は嬉しそうに言った。「酔ってきたか……」
 齋藤飛鳥は肩を揺らしている。これは彼女が無意識に行う、酔い始めた時の最初のサインであった。
「酔ってませんよ」飛鳥は笑みを浮かべる。「酔ってない酔ってない。まだ酔ってはいない」
「飛鳥ちゃん酔い始めは早いよね」夕は言った。「深酒は、しない、ていうか、酔い始めからの変化がわかりにくいんだよなー……」
「俺達の前では、呑み方に強弱をつけてるんだよ」稲見は微笑んだ。「まだ安心させてあげられてないみたいだ」
「安心していいぜ?」磯野は疑問の顔で飛鳥を見る。
「どのつらが言うの、そういう事」飛鳥は呟いた。
「ふふ」美月は笑う。「はっは、つらって、言いました今?」
「言ったね」稲見が答えた。
「あっはっは」美月はけらけらと笑う。
「お。酒入ってきたな美月ちゃん」夕はにやけた。「与田ちゃん強いよね?」
「強い強い言ってるわりには、いっつも寝てるけどね」美月は楽しそうに祐希を一瞥しながら言った。
「弱くはない、かなあ?」祐希は口元にグラスを持ち上げたままで囁き、小首を傾げた。
 ジェイジーの『デッド・プレジデント・ツー』が流れる。
「ヴァロ、一回だけデスマしたけど、疲れた……」蓮加は呟いた。
「あ?」磯野は蓮加に驚く。「な、何語だよれんたん、今の……」
「ゲームゲーム」蓮加は疲れ切った様子で答える。「寝る事が大事だ……」
「ヴァンダルかファントム、どっち派?」夕はにこやかに蓮加を見る。
「ヴァンダル」蓮加は微笑んだ。「あ、えわかるの?」
「ヴァロラントでしょ?」夕は頷いた。「いや普通にわかるよ。誰使うの?」
「ヴァイパーかセージかな」蓮加は考える。「たまにジェット!」
「たまにジェット!」夕は笑った。「深いねえ~」
「結構、やり込んでる、かも」蓮加も笑った。
「どのモードでプレイしてる?」夕は楽しんで蓮加にきく。
「デスマも、アンレートもやる」蓮加は笑った。「デスマはばんばん倒せるから楽しいよね」
「ねー」夕は頷いた。「わっかる」
「なーなー、俺らも深い話しようぜ~」磯野は蓮加と夕以外の皆に言う。「上げてこうぜもっとよ~」
「あんた筋肉以外うといじゃん」飛鳥は磯野を見つめながら言った。
 山下美月と北野日奈子は爆笑する。与田祐希は稲見瓶との壮絶なるにらめっこを開始していた。

       5

 地下八階の〈BARノギー〉の店内に響くBGMが、ブランディ、メアリー・J・ブライジ、ミッシー・エリオット、ワイクリフ・ジョン、アシャンティの『ウェイク・アップ・エブリバディ』にうつる。
稲見瓶は北野日奈子を見つめて言う。「昔はきいちゃんの部屋で毎週土曜日に、家族で麻雀をしていたんだよね。家族で麻雀というのは、なかなか興味をそそる」
「うちのおかんじゃ麻雀できねえだろうなぁ~」磯野は呟いた。
「あー、うちもあれだよ」日奈子は磯野に言う。「お母さん抜きで、妹とお兄ちゃんとお父さんと私でやってたから」
「部屋に麻雀卓が置いてあったんでしょ?」夕は面白がって日奈子を見つめた。
「んふそう」
「じゃー46時間テレビで麻雀もやってほしかったなあ?」磯野は誰にでもなく言った。
「あれきいちゃんがやった電視台って、何だっけ?」夕は頬杖をついて考える。
「もう一度着てみたい衣装、ベスト5みたいなやつだよね」稲見は日奈子を見て言った。
「うん」日奈子は笑顔で頷いてから、グラスを喉の奥へと傾ける。
「しかし駆け抜けたな、46時間」夕は頬杖をやめて、グラスを掴む。「かずみんとか待機してたらしいよ、いつでも呼ばれていいように」
「きいちゃんの衣装ベスト5を最も近く予想したファンでさ、生写真もらった人いたじゃんか?」磯野は女子達を見つめながら楽しそうにしゃべる。「あーれ、一生宝みてえな思い出に残るんだろうなぁ」
「まさか自分が当たるとは、って、なりますよね、絶対」美月は赤ら顔で呟いた。
「飛鳥ちゃんのタップダンスも凄かったね!」夕は飛鳥を見つめる。「各処で天才の声が上がってたよ。完コピ、普通はあそこまでハイクオリティにはできないよなー」
「あざす」飛鳥は口元にグラスを持ち上げたまま、ぺこり、と会釈をした。
「振り付けを担当したひでぼうさんも、飛鳥ちゃんは天才だと語っていたよ」稲見は感心しながら言った。「天才なんだろうね、凄い人達がそう認めてるんだから」
「天才っぽいもんな、飛鳥っちゃんはよ。おら、演技とかも」磯野はなぜか己が自信満々で言う。「最近で言うとよ、ヘブンバーンズレッドっつうアプリのCMでよ、なんか、こぉ……すげえ尊いものを知った、みたいな感じで、飛鳥っちゃんが涙流してるんだよな? あの演技だって、普通出来ねえよ。だ天才だろ、だから」
「バイトルのCM」夕はにっこりと楽しそうに言う。「野球の。飛鳥ちゃんばっかり見ちゃう。今は、ちょうどバイト代上げて下さいバージョンか」
「五期生は乃木坂に入って、自分達をどう見てるんだろうね」稲見は思考しながら女子達に言う。「俺がもし乃木坂に選ばれたら、どう自分を認識するのか、わからない。考えも及ばないよ……」
「五期生、入ったな!」夕は満面の笑みを浮かべた。「ダーリンがさ、もうすでに可愛すぎて草! て笑ってたよ」
「アクチュアリーな!」磯野は微笑んだ。「乃木坂にまた新鮮な風が吹いたな! またこれが定着したら乃木坂っぽく感じるのかもしれねえけどよ。とにかくミステリアスな乃木坂も美しすぎる、つうか、好きだぜ、俺は!」
「静寂と冷静さの中にも、爆発的な激しさを持つ、ていうかな!」夕は磯野を一瞥してから、上機嫌で女子達を見つめた。「カッコイイよな~、今期の表題は~」
「綺麗だよ」稲見は眼鏡の位置を修正して、言った。「それこそ、本当に女神様達が歌って踊ってる感じがする」
「五期生、可愛くって仕方ないよ」夕は無邪気に笑った。「一部から誹謗中傷出てるのが嘆かわしいな……。まだ未成熟の小さな存在に向かって、何をそんなに騒ぎたいのか。過去なんてしょせん過去でしかないんだし、表舞台に立った時からが乃木坂でしょ? それを一般人だった頃まで掘り下げて、一方的に暴言吐くのは、ほんと、虚しいな」
「大丈夫だと、伝えてあげたいな」稲見は親密に言った。「世界の一部なんていうのはそんなものだと。気にすることは何もないと」
「ここから見せていけばいいさ」夕は女子達を見回す。「乃木坂の魅力をさ。惚れさせちゃえばいいんだから。どんな人達だって。たぶん、それが乃木坂にはできる」
「アクチュアリーで一言あるなら、それはきいちゃんがいない事だ」稲見は日奈子を一瞥しながら言った。「八枚目シングル、気づいたら片想いで初選抜。正規メンバーとしても昇格。でも、きいちゃんはダンスも歌も、他のメンバーの方が上手くて、正直、自信が持てずに納得できてなかったと、いつか語っていたね」
「どうなの?」夕は日奈子を見る。
「うーん……そう、です」日奈子は苦笑した。