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忘れないをポケットに。

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稲見瓶は言葉を続ける。「十五枚目シングル裸足でサマーで選抜復帰、その時にはもう、かつての自信の無かったというきいちゃんの面影は微塵もなかった」
「十六枚目のサヨナラの意味と、十七枚目のインフルエンサーと選抜で、本当にテンション上がった」夕はそう言って、にっこりと酒を呑む。
「十八枚目の逃げ水では、アンダーでひめたんと初のWセンターを務めたね」稲見は微笑み、ノドグロの刺身を食べた。「そして……、十九枚目のいつかできるから今日できる、で選抜復帰。東京ドームの初ライブの十一月に、ひめたんの卒業を見送って、活動を休止。四か月後の二千十八年の三月に、活動を復帰。休止中の時の苦労は、のちに乃木坂世界旅の今野さんほっといてで、語ってくれたね」
「みなみちゃんとは活動を休止してた時も連絡を取り合ってたんだよね?」夕は日奈子に微笑んだ。「仲良しだ」
「うーん、けっこう、連絡取ってたメンバーも、多いかな」日奈子は思い出しながらそう言い、マグロの刺身を口に入れる。「みなみちゃんもそう。連絡くれて」
風秋夕は思い出す。「活動を再開させたきいちゃんを、46時間テレビでみなみちゃんが迎え入れたあのシーンも、印象深いな……」
 八人の会話は多種多様である。幾つかのグループに分かれ、入り混じりながら、会話は成立していた。
 店内に木霊するBGMがメイスの『ウェルカム・バック』に変わる。
稲見瓶は言う。「二十二枚目のシングル、帰り道は遠回りしたくなるで、アンダー初の単独センターに抜擢された」
「それこそが日常だ!」夕は嬉しそうに言った。
「この楽曲との出逢いは本当に伝説だ」稲見は深く頷いた。
「そうね~。うん、運命だと思ってる」日奈子は稲見と夕に頷いた。「最初は、かなり、てか、プレッシャーしかなかったんだけど……。この出会いは、ほんとぉ、凄い、ありがたい」
「二十三枚目、シング・アウトでは、選抜に復帰、しかも福神にも抜擢。これは嬉しかった」稲見はそう言って、サーモンの刺身を箸で掴む。「二十二枚目のアンダー、日常での反響が大きく影響したのかな……」
「二十四枚目のさ、夜明けまで強がらなくていいでも選抜に選ばれて……」夕は嬉しそうにしゃべる。「年末のレコ大ではさ、福神のポジションでパフォーマンスしたんだよ」
「二十五枚目のシングル、幸せの保護色でも、選抜に抜擢されたね」稲見はにこやかに日奈子に言った。
山下美月は会話に乱入する。「そうそう、そうですよ。白石さんの卒業シングルのMVで、椅子取りゲームみたいなシーンがあって……」
風秋夕は歌う。「保護色の~、ようなもーの~、気づいていないだけ~。のとこだな」
「そう。そこのところで、自分の担当の椅子をこう、持って、裏にはけてく、ていうシーンで……。隣にいらっしゃった北野さんが、なんか、急に本番に、私の椅子のところにバ~って来て……。ちょうどそれが使われてて、MVに。ばっちり映ってる」
「七パターン撮ってて、偶然それが使われてるから。良くないよ」日奈子は苦笑いを浮かべる。「間違いってあるじゃん? 誰でもさ」
「あれじゃね。れんたんもさ、そ~、空の色~、風が運ぶ香り~、のとこで、スカート持っちゃいけないのに、れんたんだけスカート持ってチャカチャカ、一、二回踊ってるの映ってるよな」夕はこちらを見た蓮加に微笑んだ。「憶えてる?」
「憶えてる、てか、うん……」蓮加は眠たそうな眼つきでにやけた。「残ってるからね、映像として」
「まいやんから貰った下着は、もうはいたのかな?」稲見は日奈子に言った。
「はいてない」日奈子は眼を見開いて言った。「真っ白で、お尻すっけすけのやつで……。ただのシースルーとかの生地じゃなくて…、網? みたいになってるやつなの。まだはいてない……」
「はいた姿が僕は見たいな、はは……変態かな。うんでも見たいんだはっはは。ぜひ、その時は連絡をくれたまえ。その時は無表情で興奮するから、覚悟してね」磯野は唐突に会話に乱入した。「があ~っはっは、てかあ?」
「言ってない」稲見は磯野を一瞥もせずに言った。
「はいたら、久保ちゃんに写真送ってみて」夕は楽しそうに言う。「リアクション知りてえ」
「久保ちゃんとも仲良しだよね」稲見は日奈子に言う。日奈子は声に出して頷いていた。「二十二枚目シングルで仲を深めたらしいね……。北野、久保、で、名前順でね、乃木坂工事中でも隣り合わせになる事が多くて、打ち解けやすかったという定説がある」
「それは本当」日奈子は言った。「名前順とか、けっこう大事なきっかけになるかも。それこそ、あっしゅんともそうだったし」
「確かに、久保ちゃんが加入するまで、北野、斎藤、で、隣り合わせだった事で、飛鳥ちゃんと親交を深めたという定説もある」稲見は日奈子と飛鳥を一瞥して言った。
「それも本当」日奈子はにやけて言った。
「あー?」飛鳥は会話に反応を示した。「なんて言った?」
「きいちゃんと飛鳥ちゃんが仲良くなった頃の話」夕はにこやかに言う。「親子丼コンビ、ていうコンビ名もあったね!」
「あった。んひ!」日奈子は笑う。
「あー。ありましたなぁ」飛鳥は呟いた。
「あの頃、凄く大変だった……。ポリン姫の、プリンシパル?」日奈子は男子達の表情を見回しながら語る。「毎日が選抜発表みたいな毎日を送ってる時…、第二幕に、全然選ばれなくて……。毎日続くそういうものに、なんか凄く焦りとか、選ばれない事にそういうものもあったんだけど……、なんかそれを上手に、焦ってるとか、悲しいとか辛いとか表現できなくて……、なんか平気なふりしてへらへらしてて……」
 自然と、その場の全員が、真剣な面持ちで、今は北野日奈子の言葉を聞いていた。
「でも奥底にある、隠してた気持ち? に」日奈子は誇らしそうに笑みを浮かべて、飛鳥の事を一瞥した。「あっしゅんが気付いてくれて……。もうほんとに、あっしゅんには、うん…助けられた。先輩みんなにも、助けられた。けど、特にやっぱり、あっしゅんに助けられた……」
「消えない絆になったね」稲見は微笑んで、飛鳥と日奈子を交互に見つめた。
「ずっと寄りそってくれて……」日奈子は、誇らしげに続ける。「人に、弱いところも、見せていいんだよ、て。教えてくれたのも、あっしゅんだった……」
「おー、飛鳥ちゃんふけーなー」磯野は飛鳥を見つめる。
「ふん」飛鳥は鼻を鳴らした。
「のぎ天でさ、それをきいちゃんが語った時、きいちゃんの横で飛鳥ちゃんは泣いてたんだよ」夕は感慨深く言った。
「ノギビンゴの、のぎルームで、きいちゃんから飛鳥ちゃんへの手紙が届いた時も、飛鳥ちゃんは泣いていた」稲見は日奈子に言った。
「えー、思い出しちゃう……」日奈子は、より微笑んで、涙ぐんだ。
「ちなみにな」磯野は空気を変える。「その時きいちゃんに贈ったキス顔がな、テレビで公開する初めての飛鳥っちゃんのキス顔だ」
「へー……」祐希は感心した。