甘求者
咄嗟に左近が腰を引こうとするよりも早く、肉厚な舌が屹立した欲に絡みつく。
「柳生さんっ…こんな、とこで……んっ、」
女ならともかく男にそんな場所を舐められるなんて、本来なら卒倒しかねない大事件だ。
それもこんな真っ昼間の飲み屋でなんて冗談でも笑えない。
なのに、気持ち悪いと思うどころか確実に快感を拾い息を乱している自分は一体なんなのか。
己の足の間に顔を埋める男の黒髪が肩を滑ってさらりと垂れる様をぼんやりと眺めながら考えるが、鈍った頭では答えなんて出せそうになくて。
裏筋を強く押し上げるように擦られ、ぞくぞくと這い上がる快感にとぷりとまた透明な液体が鈴口から滲み出る。
するとすぐに厚めな唇がそれを覆い、もっと出せとばかりに吸い付いてきて、危うく出そうになる声を懸命に堪えた。
「は……ぁ、」
「なんだろうね……男を惹きつける色気みたいなものかなァ」
口を離し、唾液にまみれた砲身を手でぐじゅぐじゅと扱きながら、宗矩は獰猛な眼差しでこちらを見上げてくる。
有り得ない状況と快楽にじんわりと涙を浮かべた目で睨みつけると、それまでこちらの肉棒を啌えていた口元を艶めかしくきゅ、と持ち上げて微笑した。
「…島殿のそういう部分、全部モノにしたいねェ」
「うぁっ…!」
腹に響く低い声でそう言って、宗矩はぱくぱくと苦しげに呼吸していた先端の割れ目にぐりっと親指の先をねじ込んできた。
強い刺激に腰が跳ね、反射的に両の手を引こうとするも指の付け根が変な方向に引っ張られて悲鳴を上げるばかり。
割れ目を暴いて進もうとする宗矩の傲慢な手から逃げることもできず、急激に高まる射精感をどうにかしようと奥歯をきつく噛み締めるが、快感に正直な下肢の痙攣は止まってくれない。
「や……ぎゅう、さん…ッ」
「感じながら呼んでくれるのかい? せっかくなら宗矩さんって言ってくれるともっと嬉しいなァ」
「く……んんっ」
「そうそう、そのいい声で頼むよォ」
窘める意を込めて呼んだだけなのにわけの判らない要求までされてしまったが、情けないことにうまく切り返す余裕などもう残っていなくて。
余計なことは考えず声を抑えることだけに努めていると、宗矩はぴたりと手を止めた。
それまで散々いじられ、鈴口が潰されるんじゃないかというほど抉られていたところで訪れた放置の時間に、だらだらと先走りを零していた自身が刺激を求めて甘く疼きだす。
「呼んでくれたらイかせてあげるんだけど…?」
「……手ぇ離してくれたら、自分でやりますよ」
上がった息を整えながら恨めしげに言ってやると、宗矩は愉しそうに肩を揺らして張り詰めた双球を揉み込んできた。
「ッ……や、めっ」
再びせり上がってくる射精感。
熱い吐息を細く逃がすが、喉が震えてまともな呼吸ができない。
「それも見てみたいけど……次回のお楽しみにしとこうかなァ」
まかり間違っても次回なんて有り得ない。
胸中で毒づくものの、口から出るのは甘ったるく弱々しい息遣いだけ。
「思い通りにならないのって、おじさん燃えるんだよねェ…」
「ぅ、……くっ、」
双球も巻き込むように砲身全体を抜きあげると、とうに濡れそぼった自身を追い込む速度を上げて間断ない刺激を与えてくる男の手。
いつ達してもおかしくない状態の左近の自身を容赦なく導き、理性を奪う。
「……もうっ、離し…ッ」
「このまま、どうぞ」
こちらの制止など当然取り合ってもらえるはずもなく。
赤黒く膨張し限界まで耐えていたそれは、根元から先端までをきつく擦りあげられるとどくりと脈打ち、大きな手の中に白濁をぶちまけた。