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天空天河 四

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 王妃はそっと、誉王の口を、華奢な手で塞いだ。
 王妃は不安な面持ちだったが、ふと頬が綻び、柔らかな表情になり。
『大丈夫。』
 王妃のそんな心の声が、誉王の体に優しく響いた。

 王妃の響きは、決して『解かしてはならぬ』と堪えていた、誉王の氷を溶かしたのだ。
「あ、、、ぁぁ、、。」
 溶けた氷は、堰を切った様に流れ出した。
 誉王は王妃の前で涙して、王妃の小柄な体を抱き締めた。
 強く強く、だが、大切な者を壊すまいと、優しく抱いた。
 王妃の大振りな簪が、誉王の顔に当たった。

==華が無いなら、装飾品を豪華にしようと、似合わぬ物を、藍瑾に、ただ贈り続けた。
 金蘭の衣装も、金の簪も、次第に大きく重い物ばかりを、贈るようになって、、。
 小柄な藍瑾にとって、身に付ける事は、どれ程苦痛であったか。
 苦痛になる物を贈り、私は藍瑾を、否定し続けていたのだ、、、なのに藍瑾は、、愚かな私を受け入れて、、、。

 藍瑾にはもっと、似合う物がある筈。
 この素直さと優しさが、姿にも溢れる様な、、。
 私ならば、探してやれる。==

 誉王は、強く抱き締める腕を緩め、王妃の顔を見た。
 王妃は涙ぐんでいた。
 誉王は王妃の頭から、一番大きな髪飾りを抜き、そのまま床に放り落とした。
 不思議な顔で、王妃は誉王を見ていた。
「重かっただろう?。この重い衣も脱いでしまえ。
 私も玉座の様な、重いものは、もう狙わぬ。
 私達は、もっと軽やかに生きよう。」
 誉王がそう言って微笑むと、王妃も笑顔で、小さく頷いた。
「、、、すまなかった。」
 誉王がそう言うと、王妃は誉王を、ぎゅっと抱き締め、誉王の胸に凭(もた)れた。

 初めて二人の心が、繋がった瞬間だった。

==ぁぁ、、、これだった、、。
 、、、私がずっと、心に望んでいたもの。==




 王妃付きの侍女は、二つ三つと、灯りを消し、そっと王妃の部屋を出、静かに扉を締めた。








── 八 終 ──



作品名:天空天河 四 作家名:古槍ノ標