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残念ながら重症です、お幸せに

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 この男本気で恋がわかってないのかとか。それが熱烈な恋心じゃなければいったいなんだというんだとか。この男の情操教育は十三で止まっているのかとか。日ごろの無口どこに置いてきたとか。澄ました顔してどれだけ嫉妬深いんだとか。炭治郎が泊まる日は必ず一緒に寝ているのかとか。帰るもなにも炭治郎はお前の家に住んでるわけじゃないだろうだとか。
 いろいろと。本当にいろいろと言いたいことはあるのだけれど。

「恋じゃないなんておっしゃりながら、なに炭治郎くんの貞操奪ってるんですかっ!! 言語道断ですよ!!」
「炭治郎が布団の上で三つ指ついて、少し震えながらお慕いしてますお情けを下さいと言うんだぞ!? あんなに可愛らしく、かつ覚悟を決めた目で言われて、袖にするような無体な真似ができるかっ!!」
「そこを我慢するのが日本男児というものでしょう!! 武士は食わねど高楊枝ですよ!」
「据え膳食わぬは男の恥だろう!! しかも炭治郎は、俺に抱いてもらえないならいっそ誰の肌も知らずに死にたいとまで言うんだぞ!! あのいじらしさに応えないなどそれこそ男が廃る!!」

 はぁはぁと肩で息をしながら睨み合う。もういっそお互い刀の柄に手を掛けないのが不思議なくらいに。鬼殺隊士たちに尊敬される柱二人が真剣な目で睨み合うその原因が、よもや炭治郎の貞操とは。さすがのお館様でもこんな結果は想像もしていないだろう。

「……もういいです。わかりました。改めて問診の結果ですが、冨岡さん、あなたはやっぱり深刻な病を患ってます」
 はぁ、と疲れた溜息を吐いて怒りを抑え込んだしのぶに言われ、義勇も怒りを忘れたのか、困惑した様子で眉尻を下げた。
「治療方法ですが、私には治療はできません。ですが対処法はあります。いいですか、冨岡さん。先ほどおっしゃった炭治郎くんへの気持ちを、全部炭治郎くんにも言ってあげてください。その上で、炭治郎くんにも冨岡さんのことがどんなふうに好きなのか、冨岡さんがほかの人と二人でいると炭治郎くんはどんな気持ちになるのか、それらをしっかりと聞きだすように! いいですね!」
「胡蝶、いい加減なことを言うな。話をするだけで良くなる病など聞いたことがないぞ。第一、病ならばうつる可能性はないのか? 炭治郎が同じ病に罹りでもしたら……本当に治療方法はないのか?」

 まったく。なんて情けない顔をしてるんでしょうね。炭治郎くんは凄いです。あの冨岡さんにこんな顔をさせることができるんですから。

「ありません。だって昔から言うでしょう?」

 お医者様でも草津の湯でも、惚れた病は治りゃせぬ、って。