ひばたん
「誕生日おめでとう、恭弥さん」
綱吉の姿を確認する前に、ばさりと目の前に白いものが広がる。軽く叩きつけられるように渡された白い花束を雲雀は思わず受け取る。続けて告げられた言葉に珍しく驚いたように目を見開く。ように時計を確認する。
「ありがとう…」
甘く香る百合の花を優しく抱きかかえ、雲雀は他の相手には決して見せることの無い笑みを浮かべる。大切に花束を持ったままで綱吉に抱きつこうとすると腕を突き出され距離を取られ不満げな表情を浮かべる。。
「何?」
「百合って花粉がつくとなかなか落ちないんですよね」
「持ってきたの君じゃない」
自分で持ってきておきながらと、拒否された理由にむすっと頬を膨らませた雲雀は拗ねたように呟く。その理不尽さを怒っても無駄だと理解してすぐに手を引き部屋へと招くように玄関から退く。
「なんで百合なの?」
「恭弥さんのイメージ?花屋で見てこれだって思ったんですよ。花言葉も教えて貰ったんですけど、この笹百合ってのが希少。で、こっちの赤い姫百合は強いから美しいだそうですよ」
「ふうん…。綱吉が言うのならそうなんだろうね」
自分のイメージだと言われてもよくわからないが、褒められているのだと思うと嬉しくて雲雀の口元には笑みが浮かぶ。綱吉が距離を取り花粉を付かないようにしているのを残念に思うが、久しぶりに会えた喜びでたいして気にもならず、すぐに花を花瓶へと生ける。
「本当にすごい花粉」
「そりゃ花粉は取らないでくださいって頼みましたから」
「ひどいね……」
わざと花粉を残して持ってきたという綱吉の言葉に、ため息とともに肩を落としすと手を洗いにその場から離れる。