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いのちみじかし 前編

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 姉や錆兎、鱗滝に手をつながれたときだって、義勇は安堵と多幸感に包まれた。けれども煉獄の手はどこか違う。今まで義勇の手をこうして引いてくれた人たちは、年齢の差はあれどもみな義勇が甘えられる人ばかりだ。煉獄は、違う。仮初でしかない義勇とは異なり本物の柱だとはいえ、立場上は上下などない。ましてや、入隊したのも柱を任じられたのも、義勇のほうが先だ。歳だって煉獄は下だし、甘えるなどとんでもない話ではないか。
 そうだ、年下なのだ。思いながら、義勇はひるがえる煉獄の羽織の白さに目を細めた。

 初めて柱合会議に現れた煉獄は、まだ甲だった。
 俺が炎柱になれば問題ないと堂々のたまった煉獄に、自分がなにを思ったのか、義勇は覚えていない。けれども正式に炎柱としてふたたび煉獄が現れたその日、絶えずの藤咲く庭に舞い込み、己の肩口に落ちた桜の花びらは、不思議とはっきり覚えている。
 であればあれは、四月だったのだろう。歳を問われ十八だと宇髄に答える声を聞くともなく聞き、二十歳になって間もない義勇は、あいつは俺よりも歳を重ねるのだろうなと思ったものだ。
 桜の季節に炎柱の羽織をまとった煉獄は、お館様の言を借りれば鬼殺隊の運命を変える一人だ。自分なぞとは格が違う。だというのに、煉獄は義勇に対して常に笑いかけてくれた。

 あれから、一年が経った。煉獄はもちろんのこと、義勇も今なお生きている。
 先に立ち歩いていく煉獄の背は、爽やかな五月の日差しを弾いて真白い。煉獄はいつでも、義勇の目にはどうしようもなくまぶしかった。
作品名:いのちみじかし 前編 作家名:オバ/OBA