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いのちみじかし 前編

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 金に光る虎の瞳。赤みが強い煉獄の目との共通点は黄金のきらめきだけだが、なぜだか妙に腑に落ちた。
 義勇の脳裏に、檻のなかから義勇を見つめてきた虎の姿が、鮮やかに浮かび上がる。人に囚われてなお、密林の王者としての風格を感じさせた虎の瞳は、屈しはせぬと燃えるようであった。
 煉獄も、義勇の目には王者然と映る。決して服従を良しとせぬ、孤高の王だ。
 屈託なく気安い煉獄の周りには、常に人が集まるのに、どうして孤高などという文言が浮かんだのだろう。疑問の答えはすぐに思い至った。
 お館様の言のとおりならば、煉獄はきっと、鬼殺隊にとって明けの明星だ。暁に燦然と輝き、夜明けを告げる星である。
 炎のような朝焼けのなか、あまたの星明かりが消え失せても輝きを放ちつづける明け星は、まさに煉獄を思わせた。鬼が跋扈する夜を終わらせる力強き星。柱なのだ。改めて思い、義勇はわずかに息を震わせた。

 自分とはまるで違う。きっと錆兎ならば、煉獄の隣りにいても見劣りなどしなかっただろう。けれど、柱どころか隊士を名乗る資格すらない自分では……。

 義勇はつながれた手を見つめた。視線が無意識に揺らぐ。不釣り合いだ。そんな言葉が頭をめぐる。
 わかりきったことなのに、どうしてこんなにも胸が痛いんだろう。煉獄にかぎらず、柱たちはみな、自分なぞとは違う。自覚しているから、邪魔にならぬよう努めてきた。なのに、煉獄にだけは、なぜ。
 隊士すべてが純直で高潔だなどと、義勇とて思ってはいない。高額な俸給が目当てであったり、大義名分を掲げて刀を振るうためだったりと、下賤な理由で鬼殺隊に入った者たちがいることぐらい、承知している。柱合会議でもたびたび隊士の質が落ちていると議題に上るのだ。義勇がどれだけ柱であることを否認しようと、力の差は歴然としており、水柱を継げる者はいまだ現れない。
 義勇自身の意向はともあれ、義勇が水柱であることに変わりはなく、立場上は煉獄と同格だ。それでも、似つかわしくないとの卑下は、義勇の胸から消えそうになかった。
 まぶしすぎて目がくらむ太陽。強く輝く孤高の星。そんな煉獄の手には、自分よりずっと似合いの手があるはずだ。なのに振り払えない。離さないでほしいと願う心は、いずこからくるのだろう。
「次は操り人形だなっ。そういった見世物を見るのも初めてだ。子供のようにはしゃいでしまったらまた教えてくれ!」
 振り返り笑う煉獄はまぶしくて、離したくない、その願いだけが義勇の心臓を強く打ち鳴らしていた。
作品名:いのちみじかし 前編 作家名:オバ/OBA