年年歳歳番外編詰め
天狗の面の力を借りようなどと考えたことが間違いだったようだなと、鱗滝は小さく自嘲の笑みをもらした。わしも老いたものだと、少し寂しい心持ちにもなる。
だが、失敗とはその後の糧とするべきものだ。孫同然のかわいい愛弟子のためならば、己の涙もろさなど克服してみせよう!
拳を握り空をにらんだ鱗滝はまだ知らない。
それからしばらく、義勇から「もしかして痴呆の前兆」という危惧と不安の色がにじむ目で見られることを。
鱗滝左近次の趣味は木彫りである。最近はもっぱら人形を彫っている。孫たちや愛弟子に似せた人形は、孫たちにも好評で、鱗滝家の茶の間に飾られている。
天狗の面は、鱗滝の自室の押し入れの奥にしまい込まれ、いまだ日の目を見る機会はない。