想い、届く。
「…杏寿郎は、そういうことを誰にでも言うのか?」
遠慮を払拭させるように笑いかけて断言するが、猗窩座は胡乱げな眼差しで見つめてくる。
その意図するところを察して、咄嗟に手元に視線を逃した。
「いや……先刻はうまく伝えられなかったが…、」
お猪口を弄りながら、ちらりと相手を見遣る。
気恥ずかしさのあまり、身体が熱くなっていく。
「……俺は、君が好きだ」
「……」
彼の目が大きく見開かれていく。
これまでの態度を考えれば、信じてもらえなくて当然だろう。
自分で蒔いた種だ。けじめをつけなくては。
「もう嘘は吐けない。君の真っ直ぐな心、俺を映す瞳……君という存在に、惹かれている」
「ど、どうした杏寿郎……、お前らしくもない…」
「生来より隠し事は不得手でな…。これが本音だ」
信じてもらえるまで言葉を重ねようと思っていたところで、猗窩座の腕に閉じ込められた。
「…後になって、酒のせいで覚えていないなどと言うなよ…?」
衝動を抑えつけるように、低く唸りながら息を吐く相手の背を軽くさする。
「そんな卑怯なことを言うものか。……しかし、そうだな。」
煉獄はそっと身体を僅かに離し、彼の額と己の額をこつんとぶつけて、照れ隠しにはにかんだ。
「…少し……酔った、かな」
「ーー、」
直後、性急に口付けられた。
ひとしきり口の中を暴かれたのち、猗窩座は切羽詰まった表情でこちらに迫る。
「なななななんだ今のは!…か、可愛すぎるだろうが!!」
「ははは、可愛くはないだろう」
口の周りの唾液を手の甲で拭い苦笑するが、ものすごい形相で更に迫られる。
「いいや、今のはダメだ。血管がぶち破れる…!」
「どういう状態なんだ、それは…」
「……はあぁぁ…、」
悩ましげに大きく嘆息して強く抱き締めてくる相手に身を任せていると、するりと脇から腰の線を思わせぶりに撫でられた。
「…杏寿郎、抱きたい」
「なに!?」
「ダメか…?」
至近距離で視線を絡ませながら甘い声で強請られ、煉獄は慌てて訊ねる。
「待て待て、俺が君を抱くのではなくっ…?」
「ーーな、…え?」
猗窩座の目が点になる。
いやどう考えてもこの可愛らしい顔立ちの青年が、こんなガタイのいい男を抱くという図はおかしいだろう。
しかし猗窩座はその端正な顔を、理解不能とばかりに歪ませておもむろにこちらの股間を掴んできた。
「こ、こらっ」
「杏寿郎…、お前、鬼相手に勃つのか?」
「それはっ、やってみないと……も、揉むな!」
「成程確かにやってみないことにはわからんな、道理だ。お前に男色趣味でもあれば別だが、ここは譲れん。俺のほうはお前に入りたくて限界寸前だ」
その言葉に煉獄が恐る恐る彼の下腹部を見遣ると、着衣を押し上げる逸物が紛れもなく存在を誇張していた。
まだ何もしていないにも関わらずだ。衝撃の光景に瞠目する。
こちらの反応に、猗窩座がにやりと勝ち誇ったように笑った。
「…決まりだな。腹を括れ」
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くちゅくちゅと、耳を塞ぎたくなるような水音が己の下肢から聞こえてくる。
「…いつまで、そこを弄るんだ…」
かれこれ半刻ほど経つのではないだろうか。
煉獄は申し訳程度に敷いた布団に顔をうずめて、衣服を脱ぎ捨てうつ伏せで膝を立て、尻を突き出すような形で羞恥に耐えていた。
対する猗窩座はこちらの背中に覆いかぶさるようにして背中や首筋を舐めつつ、片方の手でひたすら後腔をまさぐっている。
一度抜かれて達した雄は、異物感により既に萎えている。
「……随分解れてきたぞ。できればここも舐めたいところだが」
「駄目に決まっているだろう…!」
「ふむ…。美味そうなのにな。」
冗談とも本気ともつかないことをぼやく相手に冷や冷やするが、残念そうに溜め息を吐かれ胸を撫で下ろした。
が、それも束の間。
「では、挿れるぞ。力を抜け」
「っ……う、うむ…」
やはりそうなるのか。
ごくりと生唾を飲み下し、息を吐いて力を抜くように努める。
猗窩座が上体を起こすと、尻にぴたりと異様に熱い塊が触れた。