想い、届く。
ぐっと押し付けられ、彼の唾液で散々時間をかけて拡げた後腔に先端が埋まる。
「……ッ、これは…無理じゃないか?」
「いや、少しずつだが……ちゃんと入っているぞ」
確かに入っているのだろう。
想像を絶する圧迫感と異物感。内臓の内側から迫りくる痛みに、敷き布を強く握り締める。
「くっ…杏寿郎、力を入れすぎだ。息を止めるな」
「……はあっ、ぅ…ぐ、」
そうしたいのは山々だが、身体が伴わない。
額に冷や汗すら浮かばせて暴力的な責め苦に耐え忍んでいると、すっかり萎えきった雄をそっと揉みしだかれた。
猗窩座の苦しそうな低い声が、背後に降ってくる。
「…動かないから、…楽にしろ」
ふー、ふー、と荒い呼気を漏らしながらも、優しくこちらの雄に刺激を与えてくる。
屹立した逸物を思いきり締め付けられているのだからつらいはずなのに、猗窩座は無理にことを進めようとはしない。
「う……ぁ、…んんっ」
「…気持ちいいか」
少しずつ圧迫感にも慣れ、手淫による快感を拾い始める。
熱い吐息とともに小さな声が出てしまう。
次第に硬度を取り戻し、先走りとあわせて扱かれるとぐちゅぐちゅと卑猥な音が室内に染み入っていく。
「も、もう……大丈夫だ、からっ…」
「…わかった。……では、もう少し挿れるぞ」
「いや…全部だ…。ひと息に、きてくれ…」
じわじわと押し広げられるより、いっそすべて受け入れて慣らしたほうが楽な気がする。
激痛を伴うだろうが、それもいっときのものだろう。
猗窩座もこちらの痛みに遠慮して進みあぐねているはず。
数秒の間戸惑っていた相手も、覚悟を汲んでくれたのかわかったと頷いた。
「その潔さ…漢気…。やはりお前は素晴らしい……杏寿郎ッ」
「ぐっ……う、」
ずん、と胎内を突き抜ける重い衝撃。
額を敷き布に擦り付け、奥歯を噛み締めて飛びそうになる意識を繋ぎ止める。
「ああ…、絡みついてくるぞ。堪らない…。」
陶酔した呟きとともに、どくりと楔が拍動した。
「…大丈夫か、杏寿郎」
「……っは、」
…とても大丈夫とはいえない。
尻の痛みもさることながら、この形容しがたい圧迫感のせいで呼吸もままならない状態だ。
労わるように腰をするりと撫でられた。
「…すまん。動かない方がよさそうだな」
申し訳なさそうな声に首を振って応じる。
「このまま、のほうが…苦しい。……っ…う、動いて、くれ」
「……余裕のない声、耳に毒だな。俺は、杏寿郎の声だけで理性が飛びそうだ…」
猗窩座はこちらの背後で深呼吸をすると、ゆっくりと楔を引いて、慎重に押し込んだ。
内壁が引き攣れる感覚に耐え忍ぶが、しばらく抽挿を受け入れていると次第に落ち着いてきた。
身体の緊張が抜けてきたことに気がついているのだろう、猗窩座の腰づかいも少しずつ大きくなっていき、擦られる範囲が広がっていく。
「んっ…く、……っう、」
「杏寿郎……気持ちいいのか?」
吐息に甘さが滲んでいるのが、自分でもわかる。
しかしこれは快感というより…
「っ…、もっと……動いてくれ」
口にしておいて、恥ずかしさに打ちひしがれる。
猗窩座も予想外の要望に虚を突かれたようで、一拍置いてからくつくつと喉を鳴らして笑った。
「…なんだ、物足りなかったか。それは悪いことをした」
「そ、そういうわけではっ…」
「いや何、焦らしてやろうなどと思っていたわけではない。杏寿郎の気持ちのいいことしか、俺はしたくない」
言いながら、抽挿の間隔を狭くして深いところを目指し腰を打ちつけてくる。
胎内の奥のしこりに楔がぶつかり、ぶるりと怖気のようなものが下腹部に走った。
「っ…、ぐ…!」
「…ツラければ、言え」
ぐちゅ、ぐちゅ、と肉壁を掻き回される淫靡な音が後腔から零れ落ちる。